「今日も、いい?」
ベッドに座る僕の隣に並び、すっと身体を寄せてくる真夏。
その手が僕の肩と膝に触れ、小さな柔らかい指の感触が伝わってくる。
腕に、彼女のその豊かな胸がむにゅっと押し付けられる感触。
「いや…それは、でも」
幼馴染の真夏とこんな関係になったのは中学に入ってから数ヶ月ぐらいだったろうか。
こんな関係、といっても単なる恋人同士というわけではない。
それはもっと不思議で、歪なものだ。
「明日から合宿で、それで選抜が決まるの…。私に頑張ってほしくないの?」
「そ。そりゃ…。頑張って欲しいけど」
「だったら、ね?」
「…う、わかったよ」
彼女の上目遣いのおねだりに弱い僕は、彼女の願いを聞き入れてしまう。
真夏は僕の肩にくっと力を入れる。
その誘導に従うように僕は腰掛けていたベッドに、背を倒す。
真夏はそんな僕に跨るように、上乗りになると僕のシャツのボタンを外し始めた。
されるがままの僕の態度を気にすることなく、真夏は自分の上着も、そしてブラジャーも脱ぎ捨て、ベッドの隅に置いた。
お互いの上半身だけ裸になった状態。
しばらく見つめ合った後、真夏がすっと僕に抱きつくように、身体を倒してきた。
むにゅっとした感触が、直接伝わってくる。
真夏のおっぱいと僕の胸の距離が0になる。
こりっとしたやや固い2つの感触と、その周りを柔らかく包み込むように形を変える乳房の感触。
興奮するな、というのは無理な話だ。
僕の息子は天を向いてそそり立つ。
太ももに触れるその物体に、真夏は気がついているだろう。
だが、そこから真夏は動くことなく、その姿勢を維持する。
僕と真夏が接している部分の感覚が、段々と曖昧になっていく。
2人を隔てる境界が、まるでお風呂に入ったときの皮膚のようにふやけていく。
傍からみたら不思議な光景だっただろう。
粘土と粘土は重なり合うと一体化するように、僕と真夏の触れ合っている部分が溶けてまざりあっていく。
…どれくらいそうしていただろうか。
すっと真夏が僕から身を離す。
真夏についていた乳房は、彼女の元へ…戻らなかった。
その大きな乳房は、粘着テープがついているかのように僕のほうに残ったのだ。
彼女の胸には僅かな膨らみとその2つの突起を残しているだけだった。
反対に僕の胸にはその取り残された大きな2つの脂肪の塊が、最初から僕のものだったかのようにぶら下がっていた。
その先端には男の時の僕の乳首があるけれど、シルエットだけ見たらそれは女性にしか見えないだろう。
「ありがと…」
顔を少し赤くして真夏がお礼を言う。
小学校、中学校と陸上に打ち込んでいた彼女にとって、人一倍に成長しだしたその乳房は邪魔以外の何者でもなかった。
あの日も、同じように彼女のスランプ…というか身体の悩みを聞いていたのだ。
少しだけ、いい雰囲気になって、先程と同じように身体を重ね合わせ慰めあう…ところで気がついたのだ。
彼女の胸が、僕の方へ移動していることに。
真夏は最初慌てた様子を見せたのだが、自分の胸がかつてのように軽く邪魔がないその体型になれたことに気が付き、喜んだ。
一方の僕は急に肩が重くなり、重心は乱れ、その傍若無人に振る舞う乳房があることに気がおかしくなりそうだったが…。
…まあその後もいろんなことがあって今の形…真夏が僕にことあるごとにその胸を押し付けてくるようになったのだ。
僕はベッドから身を起こすと、タンスから彼女からもらったスポーツブラを身につける。
最初は真夏のブラジャーを渡されたのだが、男性の胸囲に女性の乳房のためにフィットするわけもなく、彼女が運動中に使っていた伸縮性の高いそれを身につけている。
いくぶんか肩にかかる重力が軽減され、揺れ動く胸の慣性も押さえつけられることで体幹が安定する…が、未だに慣れることはない。
「…で合宿ってどれくらい?」
「1週間…かな、明日から」
「い、一週間…」
不思議なことにこの現象に対して誰も疑問を持つことはない。
彼女の胸が日によって大きくサイズを変えることも、急に学生服が大きく盛り上がった僕の巨乳姿を見ても、だ。
その状態が日常通りにみんなが感じるという不思議な現象だった。
とはいえ僕自身がその胸を身につけて生活するということには変わりがない。
運動はまともにできないし、歩くだけでもその存在を意識しないことはできない。
人とすれ違うときも気をつけなければその大きな胸を相手に押し付けてしまう。
「その…す、好きにしていいから」
顔を真っ赤にしていう真夏。
乳首は僕のままなのだが、乳房に通る神経、そしてそこから感じる快感は僕にはなかったものだ。
真夏が僕のスポーツブラの上からその塊を鷲掴むように触る。
それだけでピリピリとした感触が僕の全身を包んでしまう。
2人はそのまま再びベッドに倒れ込む。着たばかりのスポーツブラも汚れないように脱がなければいけない。
………
……
…
「じゃあ、よろしくね」
翌朝。
そう言いながら彼女は大きなスポーツバッグをかけて、学校に向かっていった。
そのままバスに乗って山奥の合宿所に1週間缶詰だ。
「行っちゃったよ、君のご主人様」
僕は返事があるはずもない、嫌でも視界に入ってしまう乳房に声をかけた。
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