2020/05/06

入れ替わって1ヶ月ぐらいたった二人

「ね、ねぇ…」

おどおどした男子生徒が、クラスの中でもひときわかわいい女子生徒に話しかけている。
女子生徒は一瞬どうしようかなと、悩んだ仕草をしたあと、誰にも聞こえないような小声で休み時間に屋上で、と返した。


「…入れ替わってるのがバレるといやだから、学校では話しかけないようにするって言ってたの、美宇さんじゃなかった?」
「そ、それは…そうなんだけど」

美宇、と呼ばれた男子生徒は悲しげな顔をする。

「最近キヨヒコくん、メッセージ返してくれる頻度少ないし…昨日なんて一度も」

はぁ…とため息をつくキヨヒコ。

「君の活動範囲が広いから毎日大変なんだよ。生徒会長をやりつつ習い事もたくさん。君は何もしなくて良くなったからヒマなのかもしれないけど」
「で、でも」
「ふーん、じゃあ入れ替わってるってみんなにバラしちゃおうか。そうすれば僕にも暇ができるよ」
「…う」
「それが嫌ならお互いを演じ続ける必要があるね。…元の体に戻るまで」

何も答えない美宇。
呆れた顔でため息をつくキヨヒコ。

「…今まで同じクラスってだけ以外に接点がないクラスのカースト上位と、最底辺オタクが二人だけ屋上で会ってるってことが誰かに見られたら…。勉強が全くできない身体の脳みそでもそれぐらいはわかるだろう?」
「…」
「そういうことだから、戻るね。今日はこのあと生徒会のメンバーと文化祭の打ち合わせがあるの」

キヨヒコはじゃあね、と笑顔を元自分に向ける。
美宇が一瞬こわばる。
その様子を見て内心ほくそ笑んだキヨヒコはくるり、と美宇に背を向けて去っていく。

美宇は気が付かない。
自分の物だった制服のスカートが日に日に短くなって行っていることに。

(へへ、せっかく手に入れた美少女の身体を返すわけ無いだろう…)

とはいえそろそろ元の自分の身体を持つ美宇の存在が疎ましくなってきたのは確かだ。
美宇の身体を使った快楽で懐柔するか、なにか事件を起こさせ排斥するか…。

ああ、両方でもいいな。
美少女の顔がに見たこともないような醜い笑いが一瞬浮かんだ。





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