1日目
身体が重い。
コウがそんな異常に気がついたのはとある朝だった。
太ったのだろうか…いや。
小さな鏡に自分を写すが、その顔の肉付きはいつもどおりで変わっているところはない。
お腹に手をやってみるが、出たり、たるんだりしているような様子は見られない。
頭に疑問符を浮かべながらクローゼットから学生服を取り出す。
時間を見ればまだまだ余裕はあるが、早く出る分にはなんの問題もない。
歩くたびにふらふらと揺れる身体。やはりなにかおかしい。
休んだほうがいいのかも…?そう思いながらパジャマを脱いだとき、コウは何がおかしいのかをはっきりと体感したのだった。
それは、トランクスとパジャマをまとめて脱ごうとしたとき、なぜかつっかかったのだ。
視線を落としてよく見てみれば、トランクスのウェストのゴムはすでに限界近くまで伸びていた。
さらに力いっぱいゴムを引っ張り、なんとか脱ぎきったが…。
「は…?」
そこには、自分に見覚えがないほどの大きなお尻が存在していた。
慌てて姿見の前へ走る。
ブルン、と揺れた尻肉が身体のバランスを崩しそうになるがなんとか踏みとどまる。
「う…なんだこれ…?」
大きく広がった骨盤。
横からみてみれば大きくツン、と上を向くような張ったお尻の肉。
日本人離れしたその肉付き…いや、それ以前にこれは男性のものではない。
股間には変わらず自分のブツがそそりたっていたのだが…。
「え…ええ…?」
恐る恐るモデル顔負けのきれいな形をしたそのお尻に手を伸ばす。
ムニッっという自分では感じたことのない肉の感触とともに、その手を尻肉が包み込む。
ありえないほどの柔らかさだった。
混乱する脳内を落ち着けるため、ベッドに腰掛ける。
むにむに、とベッドと骨盤の間の肉が大きく形を変える。
その慣れない感触に思わず腰を上げそうになる。
「おちつけ…おちつけ…これはいったいなんだ」
高校生男子の臀部がありえない変化をしてしまっている。
足も、腹も、腕も…他はなに1つ変わっていないというのにただ1つだけ、お尻だけが女性ホルモンをたっぷり受けて育ったような、成人女性のようなお尻に変化してしまっていたのだ。
「あ…時間が」
時計を見てみればすでにいつもの時間。
早起きしたはずなのに、もう余裕がなくなってしまった。
コウは慌てて学生服に着替える。
ウェストはそのままなのに、ヒップだけが大きく成長したことによってズボンのシルエットがおかしなことになっているが、コウにはどうすることもできない。
親は出張中だし、相談することもできない。
コウはため息をつくと、仕方なく登校するために家をでた。
フラフラ。
歩くたびに身体が落ち着きなくふらつく。
原因はもちろんこのお尻だ。
たっぷりと肉がついたこのお尻は歩くたびに大きく揺れる。
右足を出しブルン、左足を出すとブルン。
その動きが身体を揺さぶり、重心を安定させない。
「くそ!なんだよこれ」
悪態つくが、それでお尻がもとに戻るわけでもなかった。
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学校。
誰もコウのことに気がついてはいないようだ。
いや、気がついていても黙っているだけかもしれないが。
コウはなるべく休み時間も席を立たず、体育も見学をすることで目立たぬよう過ごした。
しかし人の生理現象は無情にも平等に訪れる。
コウはしかたなく立ち上がり、トイレへ向かった。
小便器の前。キョロキョロと周りを見回す。
幸いにも誰もいないが、それでもためらわれる。
明らかにぷくり、と盛り上がったお尻は立ち小便をしているとどうしても目立つ。
コウはトイレの奥の個室へ逃げるように駆け込んだ。
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