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2020/03/02

人間と人形の魔法少女が事件を解決する話(中)


私は外灯の根本に隠れるように様子を伺う。
工場の敷地はかなり広く、目当ての建物まではかなり距離があった。
車は1台も止まっていない駐車場と芝生が1面に広がっており、隠れるような場所はない。

これはこまったぞ、と思案する。
だがこれも打ち合わせ済み。おそらくこのあたりに。

(あった)

排水用の側溝を見つけた。
最後に清掃されたのがいつなのかわからないぐらい、中にゴミが詰まっていたが。

格子の隙間に身体を上手く滑りこませる。
突っかかったものの、さすがネズミの身体。多少身体より小さい隙間ならば無理やり通ることができるようだ。

多少緩やかな坂になっているほうへ伝っていけばおそらく建物の近くまで行けるはずだ。
さすがにここを通れば侵入前に見つかってしまうということはないだろう。
前足後ろ足を上手く使って素早く側溝の中を駆け抜ける。

側溝まで誘導されていた雨樋までたどり着いた。
上空を見れば屋根へ伸びている。
雨樋の周辺を見てみれば、屋根にたどり着く手前のところに排気口のような小さな入り口が見える。

(あそこから入れそうね)

そういえばこの工場は一体何を作っている工場だったのだろうか。
廃工場となったのはごく最近なのか、建物自体はそこまで汚れておらず、ガラスが割れたり壁が朽ちていたりしている様子はない。
ところどころに換気注意、という金属の看板が貼られている。

最初に見つけた排気口はどうやっても格子を外すことができなかったが、屋根の上をぐるぐる周り、下を見下ろして…ようやく錆びて取れかけの格子を見つけた。
前歯でひっかけて引っ張ると、簡単に外れた。

(よーし)

ようやく工場の中へ侵入する。
なんの変哲もない工場だが、魔法少女の勘が言っている。ここにはなにかあると。

工場の通路にはものが一切置かれていなかった。
そのためにこの小さなネズミの身体を隠す場所がない。
しかたなく恐る恐る通路を覗き込み、誰もいないことを確認して次の角まで駆け抜ける、ということを繰り返す。

とうとう、「研究室」のネームプレートがかかった部屋にたどり着く。
(まあ人質を隠すなら建物の最奥よね…)

少し空いているドアに身を滑り込ませる。
あたりを見回すと大きな机や椅子がいくつか並んで設置されている。
机の上によじ登ってみるとそこには…。

(これは…。写真?…)

顔が写った写真が十枚ほど並べてある。
そのいくつかは、行方不明として新聞に載っていた少年少女たちであった。

(やっぱり、ここに…?)

ギィッ…。
背後のドアが大きく開く音。
慌てて机から飛び降り、机の下の隙間に身を潜めた。

(…あぶなっ…。気配をぎりぎりまで感じなかったわ…魔法が使えないと不便ね)

コツコツと床を響かせる音。
机と床の隙間から見えた彼女の靴は高いヒールをだった。
どうやら入ってきた人物は女性のようだ。
机に前には止まらず、彼女は研究室のさらに奥にある実験室と書かれた部屋へ入っていった。

(…普通に考えたらあそこにいる…のよね)

実験室の扉の前へ、ゆっくりと近づく。
だが、扉は閉められてしまっており、中を伺うことはできない。

(上に覗き窓が設けられている…登ればみえるかしら)

今の私ならなにもない垂直な壁でも登ることができる。
軽々とその身体を覗き窓まで運び、ガラスを覗き込む。

(……!)

いた。誘拐された少年少女たちが。
彼らは得体のしれない触手のようなものに四肢を絡め取られ、自由を奪われているようだ。目や鼻にも触手がまとわりついている。

(あれは…多分意識を朦朧とされているわね)

そしておそらく彼らの生気の類を吸い取る植物だ。
あの植物が吸収した栄養を、先程の彼女が回収している可能性が高い。

(あれ…彼女がいない…?)

部屋の中を見回せる範囲に彼女の姿は見えない。
どこかへいったのだろうか。
もうすこし覗き込もうとした瞬間、全身を強い痛みが走る。

(な、何っ!?)

しまった、気がつくのが遅れた。
いつの間にか私の背後にその女性が立っていたのだ。
思いっきり鷲掴みにされ、グググと握り込まれる。

「あらあら。誰かが侵入してると思ったらにネズミさんがいるなんて」

(くっ…離しなさいよっ)

「うふふ。チューチューうるさいわねえさっきから」

意を決してその歯で彼女の手に噛み付く。
だが、その手に私の歯が食い込むことはなかった。
そして触れた瞬間に理解する。

(…この人っ…怪人じゃない!?)

魔力でガードされた手。
普段の私と同じような魔力に包まれた身体。
この人…魔法が使える!?

「あらあら。元気なネズミさんね。どこのお嬢さんか知らないけど…」

そして私の正体もほぼバレているようだ。

「高度な変身魔法ね。私のセキュリティに特化した魔法がなかったらわからなかったわよ」

そう言うと彼女は手から小さな細い糸を紡ぎ出す。

「もっともっと細くできるのだけどね」

そう言うと細い糸がスッと消えていく。
だが、集中して見てみればわずかに魔力を感じ取ることができる。目に見えない細さでそこに存在している。

「この糸があたり一面に張り巡らしてあるの。もしこれが切れたら生命体がそこを通った証拠…。一直線にここにくるネズミさんは…流石に野生じゃないわよねえ」

もう片方の手で首根っこの皮をつままれる。
(ぐぇっ…)
こうされてしまうとどれだけ暴れようと手足は空を切るだけだ。

「あらあら。これが変身魔法の魔法陣ね。ふむふむ、姿形を完璧に変えてしまうなんとても高度な魔法ね。そのわりには間抜けな捕まり方だけど…」

プシュー。
その瞬間、お腹に冷たい冷気が掛けられた。
(つめたいっ)

彼女の手にはなにかのスプレーが握られていた。

「うふふ、ここの工場は元々塗料工場だったのよ。その商品がまだ残ってたから使ってあげたわよ」
(なにを…したの…)

彼女が指をパチン、と鳴らすと机の上に白い檻がすぅとあらわれた。
さらに指をパチン。
私の身体に感じる浮遊感。
その瞬間に視界がぎゅん、と切り替わり…私はその檻の内側にワープしていた。

(だ、出しなさいよ!)

だが口から出るのはキーキーと高い声だけ。
目の前の檻は出口がどこにもない。
そして魔力で構成された格子は手の力では広げることもできず歯を立てても削れる様子は見られなかった。

「しばらくはそこで大人しくしているといいわ。私はあの子達から生気を吸ってこなきゃ…」

そういうとフラフラと再び実験室の中へ入っていってしまった。
…まさか、怪人じゃなくて堕ちた魔法少女だったなんて。
正義の心を忘れた魔法少女。
おそらく彼女は見た目の年齢以上に年をとっており、その見た目の若さを維持するために少年たちの生気を延々と奪っているのだ。

(くぅ…先輩にどうにかして連絡を取らないと)

怪人もやっかいだが、敵対した魔法少女はそれ以上に厄介だ。
全力で当たらないと苦戦は免れないのに、この身体では魔法を使うことはできないし、そもそも檻は頑丈で脱出できそうにない。
あたりを見回すと、小動物用の水飲み用のチューブが設置されているのに気がついた。
チューブの先にはペットボトルサイズのタンクがつけられており、水がいっぱい入っている。

(ラッキー…っていうか間抜けね。この水を使って魔法陣を落とせば…)

さすがの魔力の檻も人間に戻ろうとする力の前には壊れるしかないだろう。

(って、あれ!?え?)

手についた水滴をお腹へ当ててゴシゴシとこする。
昨日までの練習ではそうすることで魔法陣が欠けてすぐに元の姿に戻っていたのだが…。
どれだけこすろうとお腹に描かれた魔法陣はそのままだった。

(え?なに?なんで!?)

予想のしない状況に焦る。
よくよく見るとお腹全体がなにか、テカっとしているような。
(あ…!あのスプレー…)

まさか防水スプレーとかそう言うの!?
お腹についた水は弾かれるように落ちていく。

「うふふ、そんな初歩的なミスを私がするわけないでしょ。期待させちゃった?」

してやったり、という顔で戻ってきた彼女の顔は愉快で愉快でしょうがなといった感じだった。

「魔法陣が消えない限り…あなたはずっとネズミさんのままなんでしょう?」
(くっ…)
「その魔法陣はこれからずっととれないように、スプレーし続けてあげるから」

手には撥水・防水と書かれたスプレー缶。

「ずっとずっと、ここで飼ってあげる。安心していいのよ。ご飯だって上げるし、運動だってさせてあげるわ。そのうち、そこらへんからオスの野ネズミを連れてきてあげようかしら」

その言葉に背筋が凍る。

「うふふ。ネズミさんのお婿さんを貰ってたくさんの子供を産むの。楽しそうじゃない?」
(た、助けて…!せんぱああああい)

チュウウウウと高い叫び声が、部屋に響いた。

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