翌日。
目が覚めたコウはいの一番に鏡の前に立つ。
「も、戻ってる…?」
不自然なほどに大きくなっていたヒップはその痕跡すらのこさずきれいに戻っているようだった。
パジャマの上から見えるとシルエットにおかしなところはない。
手で腰からお尻のあたりを手で擦るが、ゴツゴツとした筋肉質な感触で、昨日のような脂肪に包まれたようなものではなかった。
「よ、よかった…」
原因はわからずとも元通りになったことにして安堵するコウ。
しかし再度鏡を見たときにまたわずかに違和感を感じとったのだった。
それが何かわからず、コウは周囲を見回す。
部屋に違和感。
いや、部屋はいつも通りだし、鏡もいつもの鏡だ。
「背が…伸びてる?」
違和感の正体に一歩近づくコウ。
慌ててパジャマを脱ぎ捨てる。
部屋の冷えた空気が素肌を撫でる。
「あっ…」
違和感の原因はこれだ。
コウの足から太腿までが、すっかりと変わってしまっていたのである。
部活で鍛えた足についていたはずの筋肉は削ぎ落とされるように消失しており、かわりに柔らかな感触を持つ脂肪へと置き換わっていた。
ごつごつと角ばっていて、ところどころ傷があり、日にあたって浅黒く焼けていたはずの足が。
まるで純粋培養で育った白いスラリとした足に変わっていたのだ。
太腿を眺めてみればそこには無造作に生えていた毛一本すらなく、足先の爪もきれいなピンク色で、汚れなど一切ないように見える。
「いやいや、これは…」
ゴクリ、とコウは唾を飲む。
それはどこからどう見ても艶めかしい女性の脚だったのだ。
スラリと伸びた脚は、サッカーをしていたコウの短足気味な足と比較するまでもなく長い。
つまりはこれが原因で周囲に違和感があったのだ。
身長が十数センチ伸びたがための、視界の変化である。
パン、と太腿を叩いてみる。
ぷるん、と脚に乗っている脂肪が波打つ。
その感覚はやはり昨日までのものと全く違う。
「くそ、こんどは脚かよ。なんだっていうんだ」
どうして良いかわからず、部屋の中をぐるぐると歩くコウ。
そして先程は気が付かなかったが、足の長さや筋肉の付き方が変わったせいかものすごく歩きづらい。昨日のおしりといい勝負の変化である。
だが悩んでいても何も解決はしない。
コウは仕方がなく学生服を着る…が。
「んげぇ…」
足の長さが極端に変わったせいで、ズボンの短いのだ。足首どころかその上まで見えてしまっている。
まるでサイズがあっていない。
そして太ももの肉付きも筋肉質で締まっていた昨日と違って一回りほど太くなっている。
そのために股下まわりの生地がパツンパツンだ。
…昨日はお尻だったので上着の裾でぎりぎり隠せていたのだが、これは流石に目立つのではなかろうか。
「…でも学校、行くしかないよなあ」
生真面目な正確なのか、それとも非日常的現象に対して混乱しているのか、コウ自身もわからないまま
登校をするのであった。
ーーー
コウはたくさんの視線を感じている。
今日は体育はないものの課外授業で全員がジャージに着替えるひつようがあった。
学生ズボン同様、ジャージの丈も足らなずに足首は広く見えており、さらにそのジャージから浮き出るおいしそうな太もものラインは、男子生徒からの視線を集めるには十分だった。
「おい、コウ…お前…」
「な、なに?」
「い、いや…なんでもない…」
男子も女子もみんな、コウを見ては微妙な顔をしつつも、その視線はジロジロとコウの太ももへ注がれるのだった。
これ好き。
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