Author : danna (だんな) / danna_story
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中年♂と新入社員♀が入れ替わった後のお話

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2020/01/27

魔道具 - えっちな下着 (魔道具 - アップリケの続編)

前作


「魔道士サラ様…ああ、いい響きね」

くるくると部屋の中を回る。
身につけているマントもその流れに乗るようにたなびく。

(もう…調子に乗ってると痛い目見るわよ。まだまだひよっこなのに)

胸のあたりからテレパシーが飛んでくる。
可愛らしいアップリケとして縫い付けられているのはかつての学友、メルだ。
彼女は得体のしれない魔物の攻撃により、人の姿を失い変化してしまったのだ。
着用者にその才能と技術力を付与する魔道具として。

そのおかげで私は学園を主席で卒業し、若くして魔道士の称号を与えられた。

メルはサラの魔力増幅の魔道具として扱われる最初はその処遇に不満を漏らしていたものの、自分では身動き一つできない上に、元に戻る方法も算段が着かないとあって今の身に甘んじている。

「さて…と。魔道士様への依頼は~」

井戸の修復、干ばつにあった畑の救済。
どれもこれも平和で、退屈なものばかりだ。

「おや、これって」

1枚の何も書かれていない、真っ白な紙。
場所も時間も、依頼ごとも何も書いていない。
だが…。

(この紙…ロイヤルペーパーね)
「やっぱり?」

王国が使用する高級紙だ。
つまりはこれはロイヤルオーダーとなる。

「ふっふっふ。とうとう国にも認められちゃうとは」

サラが魔力を紙へ込める。
これぐらいであればメルの力を借りるまでもない。
すうっと魔力に反応したインクが浮かび上がる。

「失踪事件?」
(国が依頼してくる失踪事件だなんて、よほどの重要人物でもいなくなったのかしら)
「でも、なんで私なんだろう」
(…たしかに)

学校を首席で卒業したとは言え、まだまだ駆け出しのひよっこ、そして実績もほとんどないのだ。
不安になるが、ロイヤルオーダーを断るという選択肢はない。

サラは承諾の魔力を込める。
しゅぱっと閃光のように輝いた紙は、跡形もなく消え去った。

「ま、考えても仕方ない。メルがいれば大抵のことはなんとかなるでしょ」
(まったく…いつまでも頼ってないで、早くもとに戻してよね)

ーーー

王の間。
かちこちに緊張したサラの前にいるのは、フレデリック王とその王妃。
その両名の顔は暗く沈んでいた。

「…えええええ!」

依頼内容の詳細を聞いたサラは大声を出しそうになるが、ギリギリのところで声を抑えた。

「…リ、リラ姫が…いなくなったんですか?」
「左様。事を荒立てると国の経済や外交にも影響が出る故、おおっぴらにすることができぬ」

リラ姫。フレデリック王の一人娘。
いわゆる唯一の跡取り、王位継承者だ。

(大魔道士とかが動けばそれだけで、あらぬ噂を立てられちゃうものね。よかったわねサラ、ひよっこ駆け出しのおかげで仕事ができて)

サラはメルの嫌味のような念話を無視する。

「故に、お主の依頼することにしたのじゃ」
「…なるほど。リラ姫はいつ頃失踪されたのですか?」
「失踪とは言ったが、誘拐かもしれぬ…のだが」
「ふむふむ」
「あまりにも痕跡が乏しいのでな。いなくなったのは1週間前。その日の夕食の後、自室に戻ってから朝、侍女が起こしに行くまでの間。娘の姿は確認できておらん」
「変わった様子は…?」
「なかった。さらに言えば自室の窓には鍵がかけられていたし、部屋から出た様子もなかったのだ…表を警護していた兵士も数名いたが、目撃していない…」
「それは奇妙ですね」
「うむ。敵国の部隊などによる誘拐の線もあたったのだが、部屋が乱れた様子もなく、魔力発動の痕跡もない。表向きは避暑地へ旅行、という形にしているが…隠し続けるにも限界がある。…できるだけ早くの解決を望む」

(これは意外と難題かもね。サラ)
(そうねえ。とりあえずは部屋を見せてもらおうかしら)

調査したい旨を伝えると、もちろん、と言った感じで、兵士が姫様の部屋に案内してくれた。
広い部屋に大きなベッドと、高そうな机や本棚が並んでいる。

「御用が終わりましたらお声がけください!」

兵士はそういうと、扉の外へ出ていった。

(たしかに魔力の痕跡とか…ないわね。)
「本当にこの部屋にいたのかしら…例えばトイレとか」
(うーん。でもそれなら兵士が目撃しているはずよ)
「あ、そうか…」

まあ見てわかるようなところはすでに調査済みである、とみて良いだろう。

「仕方ない。魔力を使いますか」
(ま、しょうがないわね。おてやわからに)
「はーい…痕跡よ、浮かび上がれ!」

アップリケがぽうっと光り輝く。
(んっ…んんっ!)
メルの艶めかしい声が脳内に届く。
魔道具となったメルは、魔力を大きく増幅させることができる。
サラの標準的な魔力ですら、一線級の魔力に早変わりだ。
そのかわり、メルにはとてつもない快感が襲うのだが…。

ふわっと手から出現した光る粉が、うろちょろと部屋の中を飛び回る。
しばらくすると、その光は大きなクローゼットの中へ入っていくのだった。

「…?あの中に痕跡があるってことかしら。どういうことだと思う?」
(ふぅ…はぁ…)
「もう、メル。いつまで感じてるの」

サラはひとりごちながら、クローゼットの前に立つ。
何十着と入りそうなクローゼット。

「………?」

ガチャリ、と扉を開けてみるがそこには姫様の衣服が何着か、かけられているだけだった。

「あれ、思ったより少ないのね。ドレスみたいなのがあると思ったのに」
(ああいうのは手入れが大変だから、別の場所で侍女が管理してるんじゃない?)
「ふーん。…お、すごいの発見っ」
(………?たしかに、すごいねそれ)

サラもメルも、姫様の顔は知っている。
学園の入学式の際に来賓として挨拶をしていたからだ。
おとなしそうで、だけど聡明で、優しい聖母のようなあたたかさを持っていた。

「こんな…派手な下着つけるとは、ひとは見た目によらないものね」
(こらっ…)

ふんだんにもられたフリルの黒の下着。
どうみても扇状的であの姫様がつけるようなものには見えなかった。

「でもこれだけ、みたい。他の下着は普通」
(もう、いつまで下着覗いてるのよ…。兵士さんに見られたら言い訳できないわよ)

ガチャ。

(!)
「んひっ!?」

その下着を、自分の衣服のポケットへ突っ込んで隠す。
慌てて振り返れば、そこには王妃が部屋に入ってきていた。

「どうでしょうか。なにか…見つかりましたでしょうか」
「いいえ…痕跡魔法ではこのあたりが反応したのですが…。どうでしょう。なくなっているお洋服とか、ありますか?」

王妃はじっと、そのクローゼットを眺めるが…。
ふるふる…と首を振る。

「残念ながら…わかりません。当日着ていた衣服だけはなくなっているようです」
「なるほど」
「…そしてすいません。これから私達は議会のほうへ出向かねばなりませんので、今日のところは」
「わかりました。今日は引き上げさせていただきます」

ーーー

(…何持って帰ってきてるのよ)
「あの状況じゃクローゼットに戻せないでしょ…」

結局その黒い下着を持って帰ってきてしまったのだ。
テーブルの上に置かれたエッチな下着を眺めてため息をつく。

「はぁ、まあ明日こっそり返せばいいでしょ」
(まったくもう)

「でもよく見ると結構かわいいかも、この下着」
(そう?私はあまり趣味じゃないわ)

「布の質も最高級ですべすべだし…」
(……サラ?)

「ちょっと…ぐらいなら」
(サラ?)

サラの様子がおかしい。
メルはなにか嫌な予感がして、サラへ念話を送り続けるが…。

(ああっ)

サラはマントを脱ぎ捨てて床に放り投げてしまう。
アップリケでしかないメルは、身につけている人間としか念話も届かなくなってしまう。

「だめ、着たい。早く着たい…!」

サラはどんどん着ていた衣服を脱いでいき、あっというまに裸になる。

(サラ、だめ!その下着は…!)

おそらく魔道具の一種だ。
だがメルの呼びかけも虚しく、サラはその黒い下着をすっと、履いてしまった。

「あ…あ……………」

目が虚ろになっていくサラ。
やはり何か、効果を持った魔道具だったのだ。
下着姿のまま身動きせずに立ち続けているサラだったが…。

ピクッ、とその指先が動いた。
虚ろだった目に光が戻る。

(…サラ?大丈夫だったの?)

キョロキョロと周りを見回すサラ。
まるでここがどこかを確認しているかのように。
そして自分から脱いだはずなのに、自分が裸だったことに気が付き、顔を赤らめる。
さらにキョロキョロと見回して床に落ちていたマントを拾い上げ身体を隠すように覆う。

(サラ?正気に戻ったの?)
「…っ。誰!?」

まるでメルの言葉を初めて聞いたかのようにびっくりするサラ。
メルはその様子を見て、一難はまだ去っていないと確信した。

(……あなたは一体、誰?)

落ち着いた声色で、サラへ念話を送る。
「え、ええ…ええと…」

なにか悩みながら、発した名前は…。

「リラ・ヴァイオレットと申します。フレデリック王の一人娘…王女です」







(って…まさかとは思ったけど、本当に姫様だなんて)

「…そういう貴方は…いったいどこにいるのですか?」

キョロキョロとあたりを見回すサラの姿をした王女。
その動きに合わせてマントにつけられたメルも一緒に動く。

(ここよ。ここ。あなたの胸のところ)

「えっ…」

驚いたようにそのデフォルメした人の形をしたアップリケに触る。

「まさか…アップリケが意識を持っているだなんて」
(…私は元人間、メルよ)
「まあ…。世の中不思議なこともあるものですね」
(姫様だって…下着だったじゃない…)

メルは呆れた、といった感じで呟く。
(…確認させてください。姫様、あなたは今履いている黒い下着だった…ですよね?)
「は、はい…」

姫はその日にことを語りだした。
「あの日は新人の侍女でエルル…と名乗る方が部屋に入ってきて…」
(おかしいわね。そんな報告は兵士から受けてないのだけど)
「はい。私もその瞬間まで知りませんでした。おそらく彼女は何処かの国の間者でしょう。彼女は私の目の前で、銀色の輝く見たこともない変な動物を呼び出したのです」
(!?…)

メルは銀色の動物、というのに心当たりがある。
…というよりメルをこの姿にした張本人、魔獣なのだから片時も忘れたことはない。

(まさか、そんな。あれを使役できる人間がいるってこと…?)

あの神々しさをも兼ね備え、メルの魔法も軽々と弾き返した新種の魔獣。
召喚できる魔道士もまた、伝説級であろう。

「その…動物から溢れ出す光を浴びて、気がついたら私は…これになっていたのです」

履いている黒い下着を指差す。

「身動きも取れず、床に転がった私を拾い上げ、クローゼットに押し込んでいった彼女は、そのまま煙のように動物と一緒に消え失せたのです」
(そうだったの…)

あの魔獣はおそらく人間をモノへ変える力を持っている。
普通そんな無茶苦茶な魔法を身に受ければ、身体が砕けるような痛みで死んでもおかしくないはずなのに、こうして2人は意識を保っている。

「助けて欲しい、と念じていたら…サラさんが変な感じになって」
(姫様はたしか…魔法には明るくなかったはず…ですね?)
「え。ええ…。恥ずかしながら武芸や魔法の類には才能がなかったので…」

サラとメルは色々考えた結果、
当人のもつ魔力にそった能力を魔道具に変化させる…と考えた。
魔力に乏しい姫は、「他人に下着を身につけてもらうことで、身体を乗っ取る」という変わった力を持った魔道具になったのだろう。

「そうなんですか…」
(ええ。それで姫様。大変申し訳ないのですが…下着に手を触れてみてもらえるかしら)
「え…?は、はい」
おずおずとその黒い下着に片手を触れる。

(そしていまから言う魔法を唱えてください。…多分いまの姫様はサラの身体を使ってますので魔法が唱えられるはずです)

メルの指示通りに、姫はたどたどしく言葉を紡いでいく。
ポワッっとアップリケが光る。
(んんっ…!)

手から光が溢れ出し、下着へ魔力が流れていく。

『………!』

なにか、小さな声が聞こえてくる。
その声はだんだんと、大きく大きくなっていった。

『こらああああああ!なによこれええ!もどしなさいよ!!!』

下着から聞こえてきたのはサラの叫び声だった。
(はぁ…やっぱりそういうことね)
「えっ…この声は…?もしかしてサラさん…なのですか?」
『あたりまえよ!大魔道士サラ様よ!ちょっと!姫様だかなんだかしらないけど、私の身体を返しなさいよ!っていうか、なんか身体の中が生暖かくて気持ち悪いんだけど、私どうなってるの!???』

「えっと…それは」
(まったく…気が付きなさいよ。あなたは姫様と入れ替わったのよ)
『は?へ?』
(もう…つまり、サラの今の身体は黒い下着よ。ようこそ物の世界へ)
『い、い、いやああああああ』
「ごめんなさい、ごめんなさい!サラさん、悪気があったわけではないんです!」
『え、じゃあこの暖かい感触は?』
(自分のお尻とか、股間とか…ね)
『あうあー…なんてこと……なんか無性に下着を身につけたくなって…気がついたら下着になってるとかなんの冗談よ』
(多分だけど、脱げば戻るわよ)
「え、そうなんですか?」
『脱いで!脱いで!!!』

盛大に叫ぶサラだが、姫は少し困った顔をする。

(いつまでも履き続けるわけにも行かないから…いつかは戻ることにはなるけど)
「その…私は元の姿に戻ることができるのでしょうか」
(…難しいですね)

魔力がほとんどなく、抵抗ゼロの魔道具に向けて解呪を放てばもしかしたらもとに戻ることができるかもしれない。
だがそれは…。

『無理よ。メル。分かってるでしょ』
(………ええ)

2人は分かっていた。
少し前にメル自身へ解呪を試みたことがあったからだった。
サラには学園卒業前、メルを使って出世をたくらんでいた時期があった。
だが、サラは非情に徹することができなかった。
サラに両親がいたのと同様にメルにもその失踪で悲しみ嘆く家族がいたのだ。
サラはその後しばらくして謝罪し、メルを元に戻すことを目標に魔道士として活動することにしたのだった。

「…解呪の力が足りなかったのでしょうか?」
『違うの。あの魔獣は…人の姿を"無理やり"に変化させたいるだけなの…呪いでも、魔法でもなく、ただただ、純粋に物凄い魔力で』
(粘土の塊を力任せに木枠につっこむような感じでね…)
「そんな…」
(だから、今私達が探し求めているのはモノを人へ変化させる魔法。普通に考えたら無駄で意味のない魔法だから…今現在まで存在していない魔法。だから自分たちで創り上げるしかない)
『そうなのよねー。しかも計算上、維持に魔力が莫大に必要』

「そうなの…ですね。私はもう…元に戻れないのですね」
つぅ、と涙を流す。
『ちょ…ちょっと。私の身体で泣かないでよね、顔が腫れちゃうでしょ』
「ご、ごめんなさい。でも…」

『…はぁ。まあいいわ。とりあえず、服を着てくれる?下着1枚にマントだけ、というのはどう見ても痴女だわ』

サラは諦めたように呟く。

『それで、これからどうするか、考えましょう。王への報告はどうするかとか。人知れず侵入して、姫をこんな下着に変えることができる敵がいるのなら、国家の大事になりかねないわ』
(サラにしてはまともなこと言うわね)
『ふ、ふん。姫様も1週間ぶりの自由なんでしょ。しばらく身体を貸してあげるわよ』
(わたしにもその優しさを分けてほしいなあ)
『…アップリケと入れ替わる方法なんてないでしょ』
「す、すいません。ありがとうございます」

深々と頭を下げる姫。

『…自分のお辞儀を見るってのも変な気分ね。…はぁ。これからどうしようかしら』



1 件のコメント:

  1. サラにも良心が残っていたみたいでよかった

    続きが気になりますね

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