2019/08/05

だんだん、徐々に、着々と。(4)

3話

(首から下を入れ替えてくれ)

「承知した」

一瞬、部屋に小さな風が巻き起こった…と思った。
だが部屋の物は微動だにしていない。
おそらくこれが魔人の力の一端なのだろう。

俺の身体にもたれかかるようにしていた桜子の身体が、バランスを失ったかのように俺の背中をすべるように傾き、床に倒れた。

それもそうだ。
今の彼女の身体には筋肉や骨というものは一切存在しないからだ。

「ご、ごめん。起こしてくれる?」

だが桜子はその異常に全く気が付かない。
自分の身体が人形である、ということを至極当然のものとして受け入れている。

俺は彼女を抱き上げる。
体重は、更に軽くなっているだろうか。
制服の下からは鼻につくゴムの匂いが漂ってくる。
制服から覗く手や足は、真っ赤なゴムと成り果てていた。

俺はベッドに桜子を寝かせると、スカートをや制服のホックを外していく。
桜子は顔を赤らめている。
俺にされることを受け入れている様子。
…まあ反抗する方法を彼女は持たないのだけど。
シャツも下着もすべてを払いのけると、そこには顔だけが生身の奇妙な人形が現れたのだった。

(お、おおおっ…)

桜子はじっと裸体を見られているのが恥ずかしいのか、顔と首から身体をよじろうとしているのがわかる。

だが彼女の神経が一切通っていない身体は、桜子をそこに拘束しつづける。

「大丈夫、かわいいよ」

彼女にまたがり、頭部をなでてやる。

「でも、私…こんな身体だし」

魔人の記憶への干渉力というのは凄まじいようだ。
つい数分前まで自由に動いていたにもかかわらず、今の彼女はおそらく「ずっと」この身体だった、という認識に書き換えられている。
この認識を解除するのも一興だが…はてさて。
股間にあるゴムとゴムで挟まれた穴にふれると、彼女がきゅっと目をつむる。触られている感覚はどうやらあるようだ。
…そこにはどうみてもぽっかりと、用途が1つしかない丸い穴があいているだけなのだが。

5話

2 件のコメント:

  1. キターーーーー
    桜子さんの視点は気になりますね

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  2. もし次の変化があれば,それは全身変化でしょうか。 次もとても楽しみです。

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