2019/08/29

水着な1日(後編)

夏休み直前の日差しはまっすぐ突き刺さり、容赦なく温度を上昇させていく。
教室に冷房が入るようになったとはいえ、その設定温度と生徒の人数のせいで涼しいという感覚からは程遠い。

さらに…。

(ぐ…む…ぬぬぬ…)

アコは密閉された空間で暑さに苦しんでいた。
冷房から発せられる冷気は制服に阻まれて一切入ってこない。
そのうえ自分の身体にピッタリと張り付いたまま身動きできないのだ。アコの身体は伸縮性の高い水着となっており、持ち主の身体の凹凸を少しも逃さず覆っている。

そして水着は基本速乾性を持っていた。水を吸いやすく、そして乾きやすい生地で構成されているのだ。
水着の裏地に接した皮膚から溢れ出るように出てくる汗は、その裏地を通って表面を濡らして、外部へ発散していく。
自分の汗が身体を通過していく感覚にアコは悶絶する。

(暑いし…!蒸し蒸しするし…!くさいし!)

口や鼻、目の組織がないというのに、鼻はひん曲がりそうで、口や目はその空気で痺れてしまいそうだ。
人間の身体から出た汗は最初は無臭にちかいが、しばらくすると空気中の菌が入り込み繁殖して臭いを出すようになる。
周りからは全く気が付かれないような、ほんのかすかな量ではあったが、密着しているアコにとっては拷問に等しい臭いとなった。

(だいたい…私の真似をしているこいつは…一体誰なの)

私に成り代わって、授業を受けているのだ。
その振る舞いは私にそっくりで、クラスメイトは誰も気が付かない。いや、誰もまさかこんなことになっているなんて思いもしないだろうが。
身動きできず悶々としているとようやくチャイムが聞こえた。

(…やっと1限目が終わったの…?)

一息つくまもなく、”私"は友人たちと一緒にワイワイと話しながら移動を始める。そう、2限は水泳なのだ。

「え、なにアコ。水着着てきてん」
「ウケる。小学生かよー」
「えっへっへ」

(気がついてよー。私はここだよー)

喋ろうとしても口の感覚は一切ない。
仕方なく心で強く念じるが、それは徒労に終わる。
シュルシュルと衣擦れの音とともに、視界が広がった。
やはりというかそこは見慣れた更衣室だった。

(うー。暗闇だからアレだったけど…)

視界がはっきり見えるのに動けないというのは、やはり不安にさせる。手足の感覚すら失われ、感じられるのは水着が触れている部分…自分の身体の輪郭のみ。
1ミリも動かせない繊維の身体は、"私"の柔軟体操に合わせてギュギュっと伸縮する。

準備体操がおわり、順番に皆が列をなして25mのプールを片道で泳ぎ始める。

ドボン、と水に入る音とともに、身体中に水が染み込み重くなる感覚。
身体が数倍以上に重くなった気がする。

そして25mを泳ぎ終わってプールから上がるときに、染み込んでいた水が、重力に従って身体中をつたって太ももの付け根から出ていく感覚に悶そうになる。

(あ、あひっ…ちょ。ちょっともうちょっと…ゆっくりあがって…)

そんなお願いも"私"には届くことはなく、全力で泳がれ、全力でプールサイドに上がるのことを繰り返された。

(や…やっと…終わった…)

全身が何度も何度も洗われるような拷問もようやく終わり、"私"たちは再び更衣室へ向かっていく。
私はそのときまで失念していたのだ。
そう、水泳が終われば自分が脱がされてしまうことを。

ぐいっと肩紐を引っ張られ、肩から外される。
脇の部分を捕まれそのまま力任せ下に引っ張られる。
スポン、という感じで私は"私"の身体から引き剥がされた。
身体の中に入っていた"芯"を失った私の身体はくしゃくしゃになって小さく小さくなってしまう。

(えっ、ちょっと…まっ…)

目まぐるしく変わる風景、私が最後に見たのは使ってたバスタオルの生地だった。

(ぐにゅ…)

水切りもほどほどのままに、私はタオルと一緒に水泳バッグの中へ突っ込まれる。
塩素の匂いが時間が立つにつれ、水が腐っていくような匂いで充満していく。

(う…軽く水洗いしたほうがいいって…このことなのね)

先日の母親の小言を思い出してしまう。
その後、私はそのままとうとう気を失ってしまったのだった。

---

(はっ…?)

気がついてガバっと身体を起こす私。

「手…がある?」

目の前で手をニギニギする。
パチパチと瞬きをしてみる。立ち上がって片足をあげてみる。
間違いなく自分の身体だった。

「夢…だったの?」

それにしてはリアルな感覚だった。
あの授業中の空気、泳ぎの感覚、そして匂い。
すべてが現実だったように感じる。

「…ま、そんなことないか」

ふと、なにやら視線を感じて壁の方に目をやる。
そこには母親がやっておいてくれたのだろう、水着の陰干しがされていた。

「…ま、まあ。塩素まみれでほっとくと生地悪くなっちゃうもんね」

明日からちゃんと水洗いして、家に戻ったらすぐに洗濯置き場に置いておこう。
そんな気持ちになったアコなのであった。

………
……


「あー。学校なんて20年ぶりだったから楽しかったわぁ」

アコが寝ていた階下で、楽しそうにつぶやいたのは母親。
自分の娘の魂を水着に閉じ込めて、代わりに自分がアコの身体へ入っていたのだ。アコのことは十何年も見ているし、友人関係も把握している母親はボロを出すことなく1日アコを演じきったのだった。

「10代の若い身体はいいわねえ。体力無限って感じで…。またなにかあったらお仕置きしちゃおうかしら、うふふ」

2019/08/28

あなたもこれで美しく?


動画を見ているときに挟まれた広告に表示されたそんな陳腐な文言。
スキップしようとした私は、ついタップする位置がずれてその広告を開いてしまった。

画面があれよあれよという間に2-3回切り替わり、通知バーにダウンロードアイコンが表示された。

「えっ…インストールされちゃったの?」

その掟破りな動作が気になった私はそのアプリを立ち上げてみることにした。

「美しくしたい箇所をタップしてください」

起動して表示されたのはそんなフレーズと…なんと私。
3D化した私がその画面の中でくるくるとゆっくり回転をしていた。
まるでゲームのチュートリアルみたいな表示だ。

少し気味が悪いながらも、興味が湧いた私は試しに顔をタップして見る。
ぐぐっとアップになった私の顔。
女性らしさは感じられるが、平ぼったい特徴のない顔だ。

「一重なのがねえ」

目をタップしてみる。
そこには大量の項目が表示されたのだ。

「うわっ…すご」

その表示された項目から、気になっている項目をタップして変更していく。
二重。目の大きさを大きく、左右の目の距離を調整、まつ毛の増量…
目が変わるだけでも大分見た目がすっきりするものだ。

「…うわぁ…いいなあ。これ、美容整形のアプリなのかな?」

こんなふうになれます!○○整形外科まで!みたいな。
そんなことをぼんやり思いながら右下に表示された確定ボタンを何気なく押す。

すると画面中央になにやら大きなアラートウィンドウが表示される。
どうせセーブデータを作成するとか上書きするとかそんなものだろう、と思った私は特に読まずにOKボタンをタップしたのだった。

「ひっ」

その瞬間、目がじわっと熱くなるのを感じた。
ぐぐぐ、と皮膚が引っ張られるような感覚と、瞼がむず痒さを感じながら重たくなっていう。

「な…なんだったの…」

慌てて化粧鏡を覗き込む私。
そこには…、先程調整した通りの目になった私がいたのだった。

「えっ…嘘っ…」

パチパチ、と鏡の間でまばたきをしてみる。
その二重で大きくてつぶらになった瞳、素で長い睫毛が動く。

「こ…このアプリ…もしかして」

スマホを慌てて見る。
その魔法みたいなアプリはまだそこにあった。

---

1時間後。
私はまるで別人になっていた。
身長は180cm、スラっと伸びた脚は日本人離れしており、お尻はツン、と突き出している。
キュっとくびれたウェスト、そして男性なら絶対目が言ってしまう胸には、手術をしたような人工的なものではない、天然のふくよかな胸がそこにはある。

艷やかな長い髪、そしてハーフ芸能人顔負けの"私"という面影は一切ない絶世の美女だった。
テレビや雑誌に出ていてもおかしくない、いやむしろ出ていないとおかしいレベルだ。
これで化粧を一切していないのだからその美貌たるや…だ。

「あー。しまった…」

身長も体型も別人になってしまったために外に着ていける服が存在しない。

「とりあえず通販で…っと」

最低限の服を通販でお急ぎ購入する。
明日届いたら、それを着て街に出ていけば好きな服を揃えられるだろう。
私は数時間の間、その鏡の前で自分の変身を楽しむのだった。

Brrrr.

スマホが震える。
なんだろうと思って開いてみるとアプリケーションからの通知だった。

変更度MAXの状態で変化ポイントが既定に到達しました。 
強制消化モードに入ります。
累積ポイント 720 / 720

もしかして有料だった…?
そして更に表示されるメッセージ。

スマホを安全な場所に置いてください。

…一体どういうことだろう。
私はスマホをテーブルの上に置く。

ドクン

身体の中でなにか、うねるような感覚。
その感覚は、体の中心からじわりと広がっていく。

「な、なに…?あ、あぐぁっ!?」

口が急にパカ、とあいたかと思うとぐぐぐ、とその口が左右に伸びていく。
目がグリグリと動き出したかと思うと、視野が狭くなり、視力が大きく下がって視界がぼやけていく。

ギュルルル。
すごい勢いでその大きな乳房から何かが抜け出していく。
大きく、形のよかった乳房はしぼんでいき、だるんとたるんだ皮とすこし脂肪が詰まった情けない形となっていく。
ジュっという熱とともに手の指が大きく膨張し、指の太さが3倍ほどに、長さが半分ほどに変化した。
何が起きているかわからない、混乱しながら姿見を見ればそこにはくびれたウェストはなく、風船のように膨れ上がり、その脂肪が積み重なって段を形成した醜い三段腹が形成されていた。

ブツブツブツ…
身体のいたるところで何かが植え付けられ、そして成長していく。
あっというまに身体中から縮れた毛が生え始め、そのシミ一つなかった皮膚は、ボロボロでまだらになった汚い雑巾のようになった。

(ま…まさか。これって)

お尻は更に大きくなっていく。
だがそれは全体的に脂肪が乗っており、綺麗に突き出ていたヒップはその脂肪の山に埋もれていってしまう。
首周りにも、スライムのようにぶよぶよとした脂肪がまとわりつく。

「ぜぇ…ぜぇ…」

ただただ立っているだけなのに息が切れる。
身体中が蒸すように暑い。

180cmあったはずの私は、圧縮機でプレスされたかのように潰されて140cmほどまで縮んでいた。…体型だけはお相撲さん…いやそれ以上に脂肪がまとわりついており、その体型のシルエットは漫画でよく見るとぐろを巻いたウンコのようだ。
顔も脂肪で埋もれているし、目は小さく、鼻は潰れ、口は化け物のように裂けている。

Brrrr.

「変化が完了しました。 残り時間 719 / 720」

その残り時間は1分で1ずつ減少していく。
スマホに表示されていた時計を確認すると、私がこのアプリを弄り始めてから半日が経過していた。

(まさか…変身した時間と同じ時間だけ…こんな格好にされるってこと?)

姿見に写っているのは身体中がぶよぶよとなった醜い人間だった。
細い鏡にはその全身が映しきれないほど、横に大きく肥えてしまっている。

(うっそ…。え。まさか12時間もこのまま…?)

太く短くなった指で、スマホをたどたどしく操作してみるが、
キャンセルボタンが表示されていないアプリをみて愕然とする。

立っていることに疲れてしまった私は地面にべったりと座り込んで考える。
全身の脂肪がダルン、と地面にまで垂れ下がる。まるで道に落ちた溶けかけのアイスクリームのようだ。
そのみっともなさの代わりに、身体中にのしかかっていた脂肪の重量はすこし軽減された。

(…でも…そうよね。これを我慢すればあんな美女になれるんだよね…)

おそらく美女になっている時間とおなじ時間だけ人前に出られない身体にされるということなのだ。そしてその時間は12時間まで。
この数字が戻ればまた美女にもなれるの…よね。

腕も脚も数倍にまで膨れ上がって、まるで大きな肉襦袢を着せられたような動きしかできない。
そしてこの状態ではもう立ち上がれないことに気がつく。

脚の筋力だけでこの身体を持ち上げることができず、そして手が短くない過ぎてテーブルやベッドに届かないのだ。

「あっ」

大量ににじみ出てきていた手の汗でスマホが滑り落ちる。
床に転がったスマホを拾おうとするが…。

「ふんっ…ふんっ…」

だめだ。身体がピクリとも動かせない。
それなのに、動こうとした結果身体から発せられた熱量が、さらに蒸し暑くしていき、あっという間に体力を削られていく。

ああ。だめ。
意識が朦朧として…。

---

「えー。相澤さんもう帰っちゃうの?」
「もうちょっと飲んでいこうよ。次の店も予約してあるのにー」
「ごめんね!用事があるんだー」

そういって店を足早に出る。
店の中からは嘆きの声と、あの子は身持ちが硬い、みたいなセリフが聞こえる。

(そういうわけじゃないんだけどね)

私だって残れるものなら残りたい。
チヤホヤされるし、みんな優しくしてくれるし。
"私"という面影を残しつつ美女となることで私は素敵な人生を過ごすことができている。

アパートに戻った私はスマホを取り出す。

700 / 720

残り20分。
今日は午前中は女友達でブティックを周り、夕方から合コンだったのだ。
そのため、二次会など行く予定はなく、時間はギリギリだった。
これ以上あの場に残っていたら、私は二度と表を歩けないような姿を皆に見せつけることになってしまう。

裸になった私は手動で消化モードに切り替える。
あっという間に私は醜女に変化した。

「…ふーん、そういうことだったんだ」

私は慌ててその視界を扉へ向けるとそこには先程の飲み会で一緒だった友人が1人立っていた。

「急にきれいになったし、でもすぐに帰るから彼氏でもいるのかなーとおもって尾けてみれば…まさかこんなことだったなんてね」

しまった、施錠を忘れていたのか。
酔っていたのか浮かれていたのか、つけられていることにすら気が付かなかった私。
慌てて彼女に近寄ろうとするが、この身体は微動だにできない。

「へー、なるほどなるほど。このアプリなのね。っていうかくっさ」

鼻をつまみながら、テーブルに置かれていた私のスマホを奪われる。

「へー。不思議なアプリねえ。でもこんなインチキできれいになって、私達を引き立てにつかってたのね」

「ま、いいわ。このスマホは預かっておくわね」
「え、ちょっとまって…」

そういいながら部屋から出ていく。
肉団子になってしまっている私は、この部屋から出ることはもちろん、立つこいとしかできないのだ。
その後姿を眺めるしかなかった。

---

翌朝。
気がつけば私は元の、普通の身体となって床で横になっていた。
あの身体はもちろん、今のこの平々凡々とした身体も嫌いだった私は、いつもならスマホですぐに変身していたのに。

「…帰してもらわなきゃ…」

立ち上がって着替えを探す。
いま、クローゼットに入っているのは変身した私にピッタリの服ばかりだ。
仕方なく奥のダンボールに仕舞っておいた私の服を取り出す。

「…連絡…あ、スマホが」

そうだった。彼女にスマホをもっていかれてしまったのだった。
どこに住んでいるのかはわかっている。
いるかどうかわからないが直接連絡無しで向かうしかなさそうだ。

ぶにっ。

「えっ…?」

足元で違和感。
恐る恐る見ると、脚がぶにぶにと膨れ上がっていくところだった。

「え…うそっ…なんで…・っ」

昨日のうちに消化モードを済ませていたはず。
そんな考えを否定するかのように、身体がブクブクと膨れ上がっていく。
あっという間に私は昨日の夜と同じような消化モードの体型に変化したのだった。

「うっ…なんで…?」
「おっはよー。あっは。やっぱり変化してる」

そういいながら部屋に入ってきたのは昨日の友人だった。
手には私のスマホが握られている。

「なんで…私…?」
「あっはっは…えっ?ああ、気になるわよね。はい、これ」

スマホの画面を見せられる。

「えっ…」

そこに表示されたのは
変身中という文字と、増えていく変化ポイントだった。

「まさか」
「そうよ。あなたの美女設定を醜女設定に変えてあげたの」
「ちょ…ちょっとそんな」

変身モードも一緒の姿にされたってこと?
そんなことをしたら。

「12時間このまま放置して…そしたら消化モードよ」
「えっ…」
「そしてそのループ」
「…うそよそんな」

「インチキして、私達を見下して楽しかった?そんなの許されるわけ無いでしょ。その報いよ」

私はその後、友人の通報により自身で身動きできなくなるまで太ってしまったという体裁で特殊な施設へ閉じ込められる。
24時間身動きできない身体で、介護をされるという屈辱。
誰も私の言うことを信じてくれない。

スマホはとうとう、私の手元には帰ってこなかった。

-終-

2019/08/23

だんだん、徐々に、着々と。(5)

4話

どれくらいゴムの身体の桜子に触れ続けていただろうか。
はぁはぁ、と彼女の息が荒くなっていく。

本当であればその気持の高ぶりが身体にあらわれてくるのだが、
その胸の先端は最初から立ちっぱなしだし、股間も湿ったりすることはない。
俺はベッドの近くに用意しておいたローションを用意し、彼女の大事な部分にねっとりとつける。
テカテカとした光沢を得た桜子の肌は、ますます人工物であるということを表明してきた。

桜子の顔に手を触れる、彼女が一瞬ピク、と震えたがコクリ、と小さくうなずいた。
俺のはそのそそりたつ股間のモノを、彼女のその人工的な入り口へ挿入した。

桜子の顔がぐっと目をつぶる。
身体は無反応ではあるものの、その顔は発汗し、頬は真っ赤に染まっている。

「んっ…んん…っ」

俺が少し動けばその動きに合わせて桜子からも小さな吐息が漏れる。

(不思議なもんだな。どういう超常現象なんだか)
普段であれば桜子が俺の手を握ってきたり、背中に回して抱きついてきたりとするのだが、今日の彼女はされるがまま、ピクリとも動かない。
イチモツをギュッと締め付ける感覚も一律な人工的な圧迫感のみだ。

(だけど…っ)

そう、その入口は男を喜ばせるだけに作られた形状をした商品なのである。
絶妙な凹凸が、かなり気持ちがいい。

「キヨっ…ヒコ君…もう…わたし」

どうやら彼女の脳には絶頂に近いという信号が送られているようだ。

「よしっ、いくぞっ…」

俺はピストン運動を激しくしていく。
ガクガク、ブルブルとそのゴムの体が揺れる。

「あっ…ああっ…」

そして彼女が絶頂に達する、その直前。

(魔人よ。顔を入れ替えろ!)

「あー - - - ………」

桜子のせつないあえぎ声は、一時停止を押された動画のようにピタリと止まる。その顔を見れば間抜けな顔で口をOの字にして開けたままのいつもの人形がそこにはあった。

ビュ、ビュルル!

俺も限界を迎え、その偽物の中へ白濁した液体を放出する。

「……………」

桜子も絶頂に達したはず…なのだがその様子は一切わからない。
たたただされるがまま、静止したままの人形がそこにはあるだけだ。

「さて…と」

ズボッとモノを引き抜き、その粘着質な液体を軽く拭き取る。
そして桜子の身体をベッドから起こしてみた。
彼女を支えていた俺の手を離した瞬間、桜子は重力に従ってその身体はドサっと倒れた。

彼女が何を思っているか、何を感じているか、何を言っているか。
それは一切わからない。だが、このただの性欲処理人形の中には間違いなく、桜子の意識が存在するのだ。

(とはいえ…このままだと何時もと変わらないからな…。魔人よ。彼女の心が読み取れるようにしてくれ)

一瞬、俺の身体がじわり、と熱くなる。
どうやら能力が付与されたようだ。

「桜子」
(キヨヒコ…くん?わたし、いったい)
「どうした?」
(なんで、わたしこんな…、ううん。違うよね、私はただの人形で…キヨヒコくんが私の気持ちを読み取れるからこうして優しくしてくれていて…?)

どうやらさすがに全身を人形にしてしまうと記憶の操作にも多少影響がでてくるようだ。
自身が人形である、という事実が素直に受け付けられていないようだ。

「そうだよ、桜子。君はただのオナホールがついた人形なんだよ」

とはいえ、さすが魔人の力か。
しばらく話していくうちに、彼女は自身の状況に疑問を持たなくなったようだ。

(そうだよね…?ああ、今日もキヨヒコくんが使ってくれて、うれしい…)

さて。
次の段階だ。
彼女にヤキモチを焼かせてみようか。

俺は、クローゼットの奥に隠してあった人形を取り出す。
今朝の段階では赤いゴムの塊人形だったはずのソレは、もちろん桜子と身体を交換したことでー。

(予想通りだ)

個性がなかった顔は、見かければ誰もが振り向くような美少女で。
肩まで伸びたサラサラと流れる髪の毛、綺麗手入れされた爪、真っ赤だったゴムの肌は、シミひとつないキレイな白い肌へ。
表情こそは無表情で虚空を眺め続けているものの、それは俺の彼女だった桜子の身体そのもので間違いがなかった。

(ごたいめーんってか)

壁にもたれかかるように座らせてみる。
意思のないその少女の身体は、その胸や股間をあられもなくさらけ出している。
そして同じように赤いゴム人形の桜子をその対面に、向き合うように座らせてあげてみた。


2019/08/21

水着な1日(前編)


とある一軒家。
その2階にあるアコの部屋に母親が入ってくる。

「まーたあの子は…」

ベッドの上に投げられるように転がっているのは通学カバンと袋。

「何度言っても洗濯置き場に出さないんだから…」

呆れたように母親が袋を手に取り、紐を緩めて開けるとそこには湿ったバスタオルと水泳帽子、そして水着が入っていた。
当のアコはというと、1階のリビングで横になってテレビを見ている。

「明日は…ほらもうー。体育があるじゃない」

机に貼られた時間割表から体育があることがわかる。
水着は乾きやすいとはいえ、洗うのに洗濯機を使えないため早めに出しておいてくれないと困る。

「濡れてても気にしないよー。どうせ入ったら一緒なんだし」

これは先週指摘したときに、あっけらかんとアコがつぶやいたセリフだが、そのズボラなところが母親の頭痛の種だ。
ひとまずはお小言だ。
あの子も放課後に部活をやっている手前、疲れているだろうからあまり口うるさくはしたくないのだが…。

「アコ。言ってるでしょ。洗い物は2階に持っていかずにすぐに洗濯に出してって」

横になってテレビを見ているアコ。

「これは一旦痛い目見ないとダメかしら…ね?」

母親のボソリとした呟きは、アイドルが出ているテレビ番組に夢中なアコには全く聞こえなかった。

---

(…あ、あれ!?)

ここはどこ?
宿題をして、ベッドに入ったはずの私。
ふっと眠りについて意識を失おうとした瞬間、私の意識がぱっと覚醒したのだ。
あたりを見回しても部屋は真っ暗で、物音一つしていない。

(う…うごけない…な、なんなのこれ…夢?)

金縛りにあったかのように身体がピクリとも動かない。
いや…麻痺している、という感覚よりもそもそも身体が存在していないような…。
感じるのは両肩になにか挟まれて吊られている浮遊感と、そして身体がしっとりと湿っている気持ち悪さ。

(なんなの、一体。変な夢…早く覚めてほしいわ…)

だが、その願いは叶わず。
リコは数時間の間、その体制のまま居続けたのだ。
だんだんと湿った身体から水気が抜けていくのがわかる。
ソレに伴って身体が軽くなっていくような。
最初に比べて体重が半分以下になっている気がする。

部屋に、太陽の明かりが差し込んでくる。
徐々に明るくなっていく部屋。

(ってここ…私の部屋だったの?)

そう、そこはどうみてもリコの、自分の部屋だった。
ただの不思議なことに視界は壁際、それも上方にあったのだ。


ーーー

母親がリコにかけたのは、憑依の術。
これは人の魂を一時的に別の"モノ"の中に入れる呪いの一種だ。
リコの身体からその意識の塊である魂を抜き出し、洗い終わって干しておいた彼女の"水着"の中へその魂を閉じ込めたのだった。

そしてー。

(え…、わ、わたしが…うごいている?)

ベッドの上でぼんやりしながら起きた人物を見て、全く動けないリコは驚愕する。そこには"自分自身"が眠りから覚めて動こうとしていたからだ。

"リコ"はキョロキョロとあたりを見回す。
そしてリコと目が合った…気がした。
"リコ"がニコリ、と微笑む。その微笑みに薄ら寒い恐怖を感じに動かないはずの身体が震えた…気がした。

母親が次にしたのは"水着"の中に生まれていた魂ーいわゆる付喪神の一種だーを取り出し、かわりに空っぽになっていたリコの身体に入れたのだった。
その付喪神は母親の「少し懲らしめてやって」という命令を理解し、行動することにしたのだった。

(きゃっ)

バチバチ!

リコは脇腹のあたりをぐっと捕まれ、引っ張られた。
身体がぐっと引き伸ばされる感触と共に、肩口あたりの洗濯バサミ2つから引きちぎられた。
痛みは感じなかったものの、"リコ"の行動の前に一切身動きできなかったことに驚愕するリコ。

そのまま"リコ"は水着になったリコをくるくると丸めるように小さくすると、そのまま水泳用の袋に無造作に突っ込んだ。

(むぐっ)

うっすらと塩素の匂いが染み付いたカバンに突っ込まれたリコは鼻を歪める…もちろん鼻などあるはずもないが、その匂いはなぜかちゃんと感じ取ることができた。

「あっ。そうだった。今日は2限から体育だった」

わざとらしいセリフで"リコ"がつぶやくと再び袋から取り出される。

(な、なんなの…?私、どうなっちゃってるの?)

いまだに詳しい状況を把握できていないリコ。
目の前の自分にそっくりな少女が、自分を乱雑に扱っていることだけがかろうじて理解できる。
"リコ"は鏡の前にたつとパジャマを脱ぎだす。

(ちょ…)

リコの焦りとは無関係にあっというまに素っ裸になる"リコ"。
"リコ"は右手に握られていた布のような小さな紺色の塊をバッと広げた。

その行動でリコはすべてを把握するのだった。

(え、わ、私…水着になってる?)

広げられた瞬間、身体中に空気が触れたのがわかる。
そして彼女につままれている肩口の紐と、自分が感じている感覚が一致することも。

そして…。
ぐっぐっと両手で大きく開口部を広げられ…。

(ま、まさかっ…)

"リコ"はその穴へ足を通し始めたのだった。

(む、むぐうう!?)

身体中が、内側から外側へ引っ張られる。
あっというまにリコは"リコ"の身体に密着するように着用されたのだった。

「んふふ、着られる感触はどう?」

(こ、こいつ…。私のことを把握してる…?)

鏡の前でシナを作ってポーズをとる"リコ"に合わせて、水着もその密着具合が変わる。

(って2限…。ってまさか着ていく気?)

そんな小学生じゃあるまいし。
しかしその悪い予想はあたったのか、その上からいつもどおりの制服を身につけていこうとする"リコ"。

あっという間にリコの視界はセーラー服とそのスカートに覆われてしまったのだった。
夏の薄い生地のおかげで何も見えない、ということにはならなかったものの、周囲の様子は全く伺えない。

(なにがいったい私の身に起こったの…)

母親の教育的指導であるとは露にも思わないリコは、成すすべもなく単なる水着としての1日を過ごすことになるのであった。

2019/08/15

PixivFanboxについて

あまりやろうとは思っていなかったのですが、
恒常的な創作意欲を向上させるためにPixivFanboxをやってみようと思います。

ここです。




100円のプランのみとなっています。
これより高額なプランは現状は検討していません。(恐れ多くてできない。するとしても多分内容は同一の値段だけ違うパターン)
向こうのサイトに書いてあることにプラスで補足を入れますと以下のような内容となります。

・ブログにて公開する作品を、こちらで先行公開します。

約1週間前後の先行公開となります。
Fanbox限定公開はありません。

・過去作のリクエスト等をいただければ作品を書く際の参考にいたします。
※確約するものではありませんのでご注意ください。
※通常のリクエストよりは優先度は高いです。

・月の支援作品はPixivFanboxにおいても期間限定による公開を検討しております。  

※期間限定公開のため、過去支援作品の閲覧はできない予定です。おおよそ1ヶ月~2ヶ月の公開となります。
※私事によりその月の作品公開がお休みとなることがあります。
※支援を止めてしまうと作品の閲覧ができなくなります。テキストにコピーする等して各自で保管をお願いいたします。

上記のため月支援作品・PixivFanbox それぞれでしか閲覧できない作品というものはございません。
見逃す可能性がある方は、今まで通り月支援作品でご支援いただければと思います。

よろしくお願いいたします。

2019/08/10

【Booth】ある日を境に訪れた、身体だけが徐々に入れ替わっていくお話 : サンプル

あっはっは。
私は思わず笑いそうになるのを必死に堪える。
私は友だちと話しながら視界の隅に映る滑稽な姿のキヨヒコを捉える。

水泳の授業。
2クラス合同、プールの両サイドに男女別に別れて整列する私達。
プールを挟んで向かい側に男子たちが並ぶ。
女子たちはあまり気にしないふりをしながらもそのクラスメイトの体つきを品評しているようだ。

「ね、キヨヒコくんすごくない?」
「ほんとだ、あれこそ細マッチョみたいな…」
「私はちょっとムキムキしすぎていやかなー」

ぷっ。キヨヒコが…ムキムキって(笑)
女子達の視線にまぎれて、私もキヨヒコに視線をやる。
どこか落ち着きがない様子でそわそわしているキヨヒコ。
女子たちがいうような立派な筋肉がついているのは脚と手だけだ。
私の目には男子海パン一丁で、大きな胸を丸出しにしている変態にしか見えない。


支援はこちらから

2019/08/09

ナノマシン ダイエット (2)

「ねえ、トモカのやつ、なんであんなのと付き合ってんだろうね」
「わかんないなあ。聞いても好きだからしょうがないって言うんだよなあ」
「根暗で何考えてるかわからんやつが好きだなんてモノ好きだよなあ…。本人はめっちゃ美人だからなおさらもったいない」


男女2人の仲を、クラスメイトたちが噂する。
放課後、HRが終わるとすぐにトモカは彼氏のほうにかけよっていったかと思うと、その腕に絡みつくように抱きついたのだ。

「ね、早く帰りましょ!」

HRが終わった直後、まだ担任も皆がクラスに残っているにもかかわらず、見せつけるような行動。
男子たちは"なんであんなやつが"、女子たちは"趣味が悪い…"と思っている。

男の腕を、自身の大きな胸を挟むように抱きついたまま、一緒に歩くトモカ。
その顔は本当に幸せそうで、周りが目に入っていない様子。

しばらく大通りを歩いた後、2人は小さな路地へ入っていった。
誰も人通りがいない通り。
男がポツリとつぶやく。

「ナノマシン…、一部解除」


2019/08/06

23歳、入園する(4)


バスがついた先は職場などではやはりなく、めぐみようちえん、とカラフルで大きな、"ひらがな"のオブジェが貼り付けられた建物だった。
すでに先に来ている園児たちが園内を狭しと走り回っている。


背中を押されるようにして門を潜らされる。
慌てて振り向けば自分の腰ほどまでしかない壁と門。
普段の自分ならやすやすと突破できるような高さだが…。

手を握ってみればわかる。
まるで寝起きのような痺れと握力の弱さ。
今、自分の体重を支えて立っているだけで精一杯な足の筋肉。
壁を乗り越えることができそうにもない、と脳が判断した。


…抜け出すのに全力で行けば…ううん、だめ。
門の脇で園児たちを出迎えしている保育士さんがいる。
その視線は登園してくる園児たちに注がれてはいるものの、こちらへの注意を片時も怠っていないことがわかる。
仮に抜け出せたとしても、一瞬で彼女たちに捕獲されてしまうだろう。

園庭を見回す。
子どもたちからしてみれば広々とした遊び場かもしれないが、大人にしてみたら小さな庭である。こんなところにずっと居たくはない…が状況が許さない。

ふと建物の中を見る。
そこには保育士さんにしては若すぎる、二人の少女が歩いていた。
私よりも更に若い…高校の実習生みたいな感じを受けた。

(私、あんな子にもお世話されるの…?ううん、そんなの嫌。やっぱりなんとかしてこの処置を中止させないと)

だが、その二人をよくよく見てみれば様子がおかしい。
まずは服装だ。
学校の制服を着ていないどころか、今の私と同じ…つまり周りの園児たちと同じスモッグに身を包んでいたのだ。
短すぎるスカートから若さに満ちたスラリとした生足が覗く。

その2人は手をつないだまま、仲良く教室の隅に座り込んだ。
1人は比較的落ち着いた感じでスカートの中が見えないよう気をつけて座ったのだが、もう一人はそんなこともお構いなしに床に足を広げ、おもちゃとヌイグルミで遊びはじめたのだった。
表情も笑顔いっぱいで自ら進んで遊んでいるのがわかる。…もう一人は無表情で感情が読み取れないが。

そんな私の視線に気がついたのか、落ち着いた少女がこちらを見て目と目が合った。
少女はすこし悲しそうな顔をしたあと、すこし考えこちらに手招きをした。

自分の顔を自分の指を指してみると、コクリ、とうなずく。
どうやら私を呼んでいるのに間違いはないようだ。

「おはよう…あなたも?」

彼女から発せられた言葉の数は少ない。

「あなたも?ってことは…」

私の口からも言葉が出てこない。
言葉が、語彙が抑制されてしなっているからだ。
つまりは目の前の彼女もおなじなのだろう。そしてとなりで遊び続ける同年代の少女も。

「コノハって言うの。よろしくね」
「あっ。わたしのなまえは…みほし、です」

慌てて自己紹介をする。
コノハちゃんはその後、たどたどしく今の状況を説明してくれた。
彼女も私と同じように、入園希望の取り下げを忘れていたということらしい。

「じゅぎょーちゅうに黒い人が来て…ここにもうずっと」

年からすれば高校生ぐらいだろうか。
クラスメイトがいる場であなたは今日から幼稚園児です、などと宣言されたのだろうか。

「ずっと?」
「えーと…5さいになった…かな」

私と同じ3歳扱いから始まったと考えればもう2年、ということだろう。
まさか私が知らないところでこんな制度が運用されていたなんて。
コノハちゃんの名札にはねんちょうくみ、と書かれた名札がついていた。
つまりは今年で卒園、ということだ。
…私の名札にはその2つ下のクラスが書かれているのだけども…。


「…その子は?」
「リッカちゃん。ここでいっしょになって、おともだちになったの」

リッカ、と呼ばれた子はこちらをじっと見てくる。
その目には理性、というか大人の知性が感じられない。

「せんせいの言うこと聞かなくて…くすり飲まされたの」

…私にかけられた言葉や語彙の制限以上のなにかがあるということだろうか。

「ここではせんせいのいうこと、ちゃんときいいておいたほうがいいよ」
「ううん…かえりたいよ…」
「…そうしないとリッカちゃんみたいにずっと3歳の行動しかできないままにされちゃうよ。じぶんではなせない、うごけない」

美星が知る由もないのだが、このリッカに施された処遇は、自分が取ろうとした行動がすべてキャンセルされ、自分の中にいる仮想人格の幼児が身体を勝手に動かすのだ。
自分の大人としての意識が残されたまま自分がわがままに振る舞う様子を自分の視界を通して見せつけられる。
これを地獄と言わずになんというのか。

「じゃ、クラス違うから…またあそびじかんに…ね?」

そういうとコノハはリッカの手を引いて去っていった。
そのうしろ姿は仲のいい姉妹のようにも見えた。

2019/08/05

魔法少女 ←→ 人形

「なに、あんた。フザケてんの」

魔法少女ノルンの目の前に立ちはだかるのは、怪人ブフラ。
ノルンとブフラの戦いは3年前から続いている。
戦い自体はノルンの有利な展開で進むのだが、いつもここぞというところで取り逃がしてしまっていた。

だんだん、徐々に、着々と。(4)

3話

(首から下を入れ替えてくれ)

「承知した」

一瞬、部屋に小さな風が巻き起こった…と思った。
だが部屋の物は微動だにしていない。
おそらくこれが魔人の力の一端なのだろう。

俺の身体にもたれかかるようにしていた桜子の身体が、バランスを失ったかのように俺の背中をすべるように傾き、床に倒れた。

それもそうだ。
今の彼女の身体には筋肉や骨というものは一切存在しないからだ。

「ご、ごめん。起こしてくれる?」

だが桜子はその異常に全く気が付かない。
自分の身体が人形である、ということを至極当然のものとして受け入れている。

俺は彼女を抱き上げる。
体重は、更に軽くなっているだろうか。
制服の下からは鼻につくゴムの匂いが漂ってくる。
制服から覗く手や足は、真っ赤なゴムと成り果てていた。

俺はベッドに桜子を寝かせると、スカートをや制服のホックを外していく。
桜子は顔を赤らめている。
俺にされることを受け入れている様子。
…まあ反抗する方法を彼女は持たないのだけど。
シャツも下着もすべてを払いのけると、そこには顔だけが生身の奇妙な人形が現れたのだった。

(お、おおおっ…)

桜子はじっと裸体を見られているのが恥ずかしいのか、顔と首から身体をよじろうとしているのがわかる。

だが彼女の神経が一切通っていない身体は、桜子をそこに拘束しつづける。

「大丈夫、かわいいよ」

彼女にまたがり、頭部をなでてやる。

「でも、私…こんな身体だし」

魔人の記憶への干渉力というのは凄まじいようだ。
つい数分前まで自由に動いていたにもかかわらず、今の彼女はおそらく「ずっと」この身体だった、という認識に書き換えられている。
この認識を解除するのも一興だが…はてさて。
股間にあるゴムとゴムで挟まれた穴にふれると、彼女がきゅっと目をつむる。触られている感覚はどうやらあるようだ。
…そこにはどうみてもぽっかりと、用途が1つしかない丸い穴があいているだけなのだが。

5話

2019/08/04

断れない呪い

クロエは優しい少女だった。
皆から慕われ、彼女は青春を謳歌していた。