2019/04/03

慣れない水着

「こ、こう?お姉ちゃん」

とある家、少女の部屋と見られる一室。
中学生ぐらいの少女と、小学生の男の子…弟だろうか。
2人はコソコソとやましいことでもしているのか、声を潜めている。


2人をよくよく見てみれば、姉と見られる少女が学校で着ていく水着を着て弟に見せるようにしていることがわかる。
…だがどうやら「お姉ちゃん」 と声を発したのが姉のほうのようだ。

「そう。そうやって周りから見えないように着がえるの。いい?推薦もらうために成績落としたくないから休んじゃ駄目よ」

小学生の弟がまるで姉に初めての水着の着用の仕方を教えるようにしている。

「う、うん。わかってるよ」

自信なさげに答える姉の顔は困惑と恥ずかしさが混ざった顔つきだ。
多少恥ずかしさが勝っているのか、顔はほのかに赤い。

実はこの2人、少々不思議な体質をもっており、時折身体が入れ替わってしまうのだった。1年ほど前から起きたこの現象はいつ変わるのかいつ戻るのかが不定期で、2人はその為す術のない出来事に振り回されている。

「でもなんか、これ…恥ずかしいよ」

女性の水着など着たことがない弟がもじもじとする。

「何言ってるの。あなたがいつも着ている水着より面積多いから恥ずかしいことないでしょう?私のほうが恥ずかしかったのよ」

どうやら既に姉のほうは弟の学校で水泳の授業を済ませていたようだ。
普段他人に見せることがない胸(といってもそこには平原しか無かったのだが)を人前に晒して
泳ぐという行為はひどく恥ずかしかったようで、ずっと顔を赤くしていたのだ。
顔が赤くなっているのを、クラスの女の子をじっと見ていただろうと違う理由で勘ぐられされ、二重に気まずい思いをしたのだ。

「でも、なんかピッタリとお腹とか覆ってるし…。肩にかかってる紐もちょっと食い込んでいたし…胸もなんか…その」

平均的なサイズより大きな物を持っていた姉の水着姿は、思春期を迎えつつある弟にとって若干刺激が強いようだった。

「…いいから。とにかく何も考えずにこなしてくれればいいから…」
「う、うん」
 「あ、そうだ。泳ぐ前にお尻が見えてないか気をつけてね。あと水から上がったりしたときも」

泳ぎ待ちのときに座った姿勢でいたり、泳ぎ終わったあとにはその姿勢のせいで水着のお尻部分が露出してしまうことがあるのだ。

「え、どう気をつけるの…?」
「こ、こうやって」

姉はジェスチャーでズボンの裾に人差し指をひっかけるようにして見せる。

「お尻と水着の間に指を入れて、水着を引っ張って戻すの」
「こ、こう?」

くっと引っ張る弟。

「あ、あああ引っ張りすぎ。隙間からお尻見えちゃう」
「む、難しいなあ」
「ほんとにつまむ感じで戻すだけでいいから」
「うーん、なんか女の人の水着ってめんどくさいね」
「…男の水着なんて着て水泳に出たらぶっとばすからね」

ーーー

翌日。

「お姉ちゃん…お腹痛い」
「あー。来ちゃったかー。まあ水泳でなくてもよくなったし、いいじゃん?」


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