Author : danna (だんな) / danna_story
状態変化、TSF、獣化の片隅にひっそり生きてます。
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2019/02/20

どっちがきよひこ?(1)

私は一人っ子だったはずだ。
だが、目の前に今もうひとりの自分が困惑顔で座っている。
その容姿は双子以上にそっくりで、仕草や口調もまるで私と変わらない。
クラスの皆も、教師も困惑顔だ。



クラスメイトの1人は言う。
「菜々さんと、清彦が教壇に立っていたときに…」

そう、HRで日直だった私達は司会進行のため、前に立っていた。

「急に足元からもわっと煙がでて…」

そう、一瞬火事かと思ってパニックになって慌ててしまい。

「煙が収まったかと思ったら…清彦が消えていて」

そう、いまこのクラスに清彦の姿はない。

「菜々さんが2人に増えた状態で床に転倒していたんだ」

そう、パニックになったせいで、2人がもつれ合ってころんだのだが、

起き上がってみれば目の前にいたのは清彦ではなく、自分の顔だったのだ。
どちらかが清彦なのではないか、というクラスメイトが言う。
その考えに至るのも無理もない、清彦が減って、私が増えたのだから。

だが…。

「わ、私は違います。立花菜々です」
「わ、私だって…」

そう、相手も自分が本物だ、と主張したのだ。
でも私は分かっている、目の前にいるほうが偽物であると。
何が起きたらあの一瞬で姿も、制服も、靴や靴下まで私と同じにできたのか、それはわからないが、私には、私の記憶がある。立花菜々としての記憶が。

「じゃあ菜々ちゃんにしかわからない質問をしようか」

私の親友、穂華(ほのか)が手を上げて前に出てくる。
親友から、誰にも聞こえないよう小さな声で出された質問に、顔を赤面しつつも耳元で向こうに同じように小さな声で答える。

(小学校の時に私とした人に言えないことは?…なんて)

言われるまで忘れていた…というより意識しないようにしていた記憶が呼び起こされた。
おふざけで穂華と、放課後の教室で口づけをしたこと。
私は誰にも言っていないし、あの光景を見ていたのは当事者二人だけ。
これを答えられるのは私と穂華だけ。

だが…。

「…えっ」

穂華が驚いた顔をして私と、偽物の私の顔を交互に見る。
偽物の私の顔も少しほのかの赤くなっている。

「…菜々ちゃん、人に喋ったの?」
「「喋るわけ無いじゃん!?」」

2人とも即座に同じ言葉で否定する。
まるで鏡に写ったように同じ行動をした相手を見て気分が悪くなる。
それは向こうも同じようで、怪訝な顔をしてこちらをジロリと見てきた。

「だ、だよねえ…。駄目だ、幼馴染の私でもどっちが菜々ちゃんかわかんないよ。強いて言えばどっちも…菜々ちゃんに見えちゃう」
「「そんな…」」

あれからいくつか追加で質問をしたものの、双方の答えに違いはなく
どちらが本物なのか、という謎は解けずじまいだった。

「清彦が私に上書きされた可能性がある…ってなんなのよそれ」

クラスで頭のいいやつがポツリと呟いた言葉に私は唖然とする。
自身が清彦だということすら上書きされ、自分を私だと思いこんでいるって…。

「どっちかが清彦なのは間違いないんだ。ただ清彦だった記憶を一切失っているから、自分が立花菜々だとしか思えないんだよ」
「え、つまり…私が清彦かもしれないってこと?」
「そうだね。今の段階ではどちらも可能性がある」
「でも私は確かに…」
「その記憶は当てにならないってこと」
「そんな…」

幼稚園や小学校、そして今に至るまで私が私である記憶が間違いなくある、というのに。
それが目の前の私にもあるってこと…?
そして、私が清彦かもしれないってこと…?そんなの、いやだ。

「とはいえ、この不可解な現象はすぐに解決するかも知れないよ」
「え?」
「歪で生じたモノは世界が自然に直そうとするらしい。立花菜々が2人いて、清彦がいないという状態が長らく続くとは思えない」
「そう…なの?」
「漫画の受け売りだけどね」
「…」


---

学校の授業は終わったが、元に戻るような兆候は見られない。
しかたなく親にも説明し、2人で自分の自宅へ戻ることになった。

「…」
「…」

双子が並んで歩るいているせいか、周りの視線がいつもより多い気がする。

「ねぇ」

沈黙を破ったのは向こうだった。

「あなたが、清彦なんじゃないの?」
「な…」
「転ぶ前のこと覚えてる?私はみんなから見て左側にいて、清彦は右側にいた」
「…」
「起き上がったとき、あなたはどちらにいた?」

あの混乱のさなか、あのときどちらを向いていたかなんて覚えていない。

「私は覚えているわ。私はあなたが通路側にいたのを覚えている。つまり私は左側だったわ」
「でもそれは転んだからじゃない?何回かもつれあって回転した覚えがあるわ。その後起き上がったら位置なんてどっちでもありえるわ」
「…嫌なのよ。私が清彦かもしれない、なんて」
「それは私だって」

2人ははぁ、とため息をつく。
そんなため息のタイミングも、仕方も瓜二つで嫌になってしまう。

「私は生まれてから今のいままで立花菜々だったという記憶があるの。…それは、あなただってそうかもしれないけど」
「それは私だってそうよ。反対に清彦の記憶なんて一切ないわ」
「そうね…ああ、いやだなあ…自分の記憶が信用ならないなんて」
「………」

そう、どちらかが清彦であることには間違いはないのだ。
あの勉強はそこそこできるが、ガサツでデリカシーの無い、女子からイマイチ評判の良くない清彦だった、なんて死んでも嫌だ。

「ねぇ。夜どうする?」
「どうする…って?」

そう聞かれて少し考えると、ああ、そういうことかと理解する。

「どちらかが清彦かもしれない、というのは置いておいて、私達はいま紛れもなく立花菜々という女の子なわけで…お風呂とか着替えとかどうするか…ってこと?」
「そう。さすが私。考え方も一緒ね」
「そんなの…どうしようもない」

どちらかが清彦かもしれないが、自分は自分なのだ。
清彦に自分の裸だったり、下着を身につけられるのは…嫌だ。
だが。どうしようもない。
お互い自分が本物であると思っているのだから。

---

夜。
困惑する両親との食事も終え、お風呂も済ませた。
お互い相手にあまり身体をジロジロみないように、と言い合ったが効果はない。
自分の、生まれてからずっと一緒だった身体を見ることに何の抵抗もない。
多分、相手もそうだろう。

部屋に戻るとベッドには入っておらず、クッションの上で膝を抱えていた。
クッションはお友達用と自分用があるのだが、当然のように自分用の物を使っていた。

(…ほんと、自分から見ても私そっくり)

「…寝る?」
「あー…うん」

ベッドは1つ、お互い譲らない、となれば2人で同じベッドを使うしか無い。
相手が清彦だ、と思うとそれだけで気分が悪くなるが、見た目は自分そっくりな女の子。そう、女の子だから問題ない、大丈夫。と言い聞かせるように毛布に潜り込む。

「寝て起きたら…全部解決してないかなあ」
「…そしたら清彦が隣にいるってこと?ソレはやだなあ」
「あはは…それは私も嫌だなあ」

だが、会話はそれで打ち止め。
2人は目をつむり、沈黙する。眠気に身をまかせてネガティブ思考を止める。
朝になれば解決していたら…ほんとうにどれだけよいだろう。

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