「こら、また服散らかして…コートはちゃんとかけてって言ってるでしょ」
「ごめんごめん」
「うわっ、スカートも脱いだらちゃんと洗濯機に入れてっていってるのに…っていうか下着でうろつかないで」
「えー」
「もう、女の子なんだからちゃんとして」
ピシッと制服を着こなしている少女が、シャツと下着のあられもない姿でソファにゴロゴロと転がっている少女に注意をする。
同じ高校に通っている2人がこうして半ば同棲のように住んでいるのは理由がある。
2人はもともと男女のカップルだったのだが、彼氏のほうがTS病にかかってしまい、女の子に変わってしまったのだ。
男子寮にそのままいるわけにもいかず、女子寮でも受け入れをどうするか悩んでいたところに、彼女がひとり暮らしだからという理由で引き取ったのだった。
学校側が女子寮生からの反発をどう抑えるか頭を悩ませていたところに来た彼女からの提案に、同性であれば問題はないだろうという会議の結果、彼女のところに転がり込むことになったのだった。
「ほら…一応付き合ってる同士なんだし…はしたないよ。家でもちゃんとしてほしいよ」
「別に今は女の子同士だからいいじゃんー。外ではちゃんとしてるでしょ」
「ううーん…」
注意されようとズボラな少女は態度を改めない。
男子寮から引っ越したときにも、部屋の汚さに驚いたのは言うまでもない。
同棲を始めた今も定期的に掃除をしないとどんどん部屋にゴミや物が増えていってしまう。
そんな状況に怒りが溜まり、とうとう沸点を超えたのか。
洗濯物を抱えた少女が声を上げる。
「もう!その癖を直さないなら嫌いになるよ!理沙ちゃん!」
理沙、と呼ばれた少女が(やりすぎたか)という顔をして慌てて起き上がり、ソファの上に正座をする。
「ごめん、ごめん。ちゃんとするから許して。直樹」
はぁ、とため息をつく直樹と呼ばれた少女。
「…なんで僕のほうが女子力高いんだよ…」
「あはは、いいお嫁さんになれるよ」
そう、キッチリとしている少女がTS病にかかった元男の子なのだ。
理沙と呼ばれた彼女は外面はキッチリするものの、根はズボラでめんどくさがりや。1週間も放っておけば部屋は汚部屋と化してしまう。
一方の彼氏は男子寮で培われた掃除、整頓技術で寮生1のきれい好きであった。
引っ越しのとき、男子寮から持ってきた荷物を置く場所がないほど物が積み重なった部屋に気が遠くなったもののなんとか整理整頓をして詰め込んだ苦労は記憶に新しい。
あまりにも…な彼女に幻滅しかけたときもあったが、彼女もやる時はやる子だし困っていた自分を見捨てなかったし…同性になっても別れずにこうして恋人として続けてくれているいる。姿が変わっても前の自分と同じように付き合ってくれる彼女に深い愛情を覚えているのだ。
部屋は…自分がきっちりしてれば良いだけなのだ。と前向きに考えることにしている。
「傍から見たら理沙ちゃんのほうが元男の子みたいだよう…」
「あはは、最近友達にも良く言われるよね」
理沙はそういうと、正座したまま両手を直樹に差し出してくる。
「ん」
「…また?」
「いーじゃん、はやく」
「洗濯したいんだけどなあ」
「どうせこの後また洗濯物増えるから」
「…もう」
制服を着た少女は差し出された両手の間に身体を滑り込ませ、向かい合うように座る。
そのまま顔をゆっくりと顔を近づけキスをしながら、下着姿の少女をソファの上に押し倒した。
0 件のコメント:
コメントを投稿