Author : danna (だんな) / danna_story
状態変化、TSF、獣化の片隅にひっそり生きてます。
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2018/11/17

リリアのぼうけん

大戦で文明が崩壊しつつある世界。
生き残った人々は小さな集落を作り生き延びていた。

「リリア頼んだぞ」

洞窟の奥深く。
村の長からボロボロになったカバンをうやうやしく手渡される。
リリアは丁重にカバンを受け取る。
中には貴重な食料や水が入っている。

村中の人達が総出で出発を祝っている。

崩壊した世界でもまだ、他に生き残っている集落があるかもしれない。
そんな集落を探し、食料を分けてもらったり、情報を交換したり。
重要で、そして危険な役目だ。

この村は汚染物質が及びにくい洞窟の奥深くにある。
とはいってもところどころで崩落しており、太陽と無縁、というわけではない。
だが食料の入手は非常に限られており、村全体が栄養失調に悩まされているのだ。

この役目に任命されることは非常に名誉であると村では教えられている。
だが、実際はあるかどうかも怪しい集落、食料を見つけるのは非常に困難なのだ。
村長は村の状況を見つつ、優秀な頭のいい、そして体力のある若者を探索に出すのだ。

…未だに戻ってきた人はいないけど。
リリアは聡い子で、これが口減らしであることは分かっている。
だが、残された書物から得た知識で、自分こそは皆の未来を変えるのだ、と考えている。

送り出されたリリアは…普段は近寄ってはいけないと厳命されている方向へあるき出す。
門番をしているアルおじさんに頑張ってこい、と言われる。
アルおじさんは優しいけど、職務にはすごい厳しい。
普段はみんなと遊んでくれるやさしいおじさんだが、ある日に子供達みんなでこっそり出口を見に行こうとしたら物凄い顔で追ってきて怒られた記憶がある。

リリアは長い長い洞窟の坂をどんどん昇っていくと、広間に出る。
ドーム型に広がっている広場に残り暖炉のあとや、壁を見て、昔はここが集落だったんだろうなとリリアは感じた。
何かがあって私達は奥へ奥へと逃げるように拠点を移していったのだと。
外へ続く道を探すリリアだがどこを探しても道が見当たらない。
広場の隅に向けて火を掲げると、人影のようなもの壁面に映し出される。

「…?!…だ…だれ」

返事はない。松明の揺れる火でゆらゆらと揺れる人影。
火が燃える音と空洞音だけが聞こえ、人の気配や息遣いなどは感じられない。
いや、どうやら人影は1つだけではない。近づけば近づくほど、何人も何人も影が作り出されてゆく。
…だが全く微動だにしない影。リリアは呼吸を整えその影の元へたどり着いた。

「石…?」

人を形どった石。石像だった。
そんな石像が何体も、何体も並んで佇んでいる。
どの石像もリリアと同じような背格好をしていた。
石像の顔を見ようと松明を顔の近くに照らす。

「マ…マルコ…?え、こっちはサティア姉さん…?」

どういうことだろう。
この石像は…なぜ数年前にリリアと同じように出ていった2人とそっくりなのか。
よくよく見れば他の石像の顔にも見覚えがある。
そんな石像達は全裸で、悲しみの顔を携えて立っていたのだった。

「ど…どういうこと。…まって、落ち着いて…」

不穏な考えが浮かぶ。
いや、まさか。そんな。
リリアは焦る気持ちを抑えつつ、長から貰ったカバンを開ける。

「な、なにこれ…」

水や食料など入っていなかった。
古びた衣装や石、枯れ木。それを水や食料に見えるように束ねて、突っ込んであるだけであった。

「ウソ…ウソ…」

リリアは来た道を引き返そうとする。
振り向いた先には銃を構えた人間が1人。

「アルおじさん…」
「すまんな」

タン、と乾いた短い音が広場に響く。
そしてお腹に感じる衝撃。
お腹には針がついた弾丸が刺さっており、そこから少量の血が流れていく。
物理的な威力がほとんどない代わりに弾丸に込められた薬剤が体に入ってゆく。

パキパキ。

何かが乾いて割れるような音が体の中から聞こえる。
お腹を中心にどんどん熱が奪われ感覚が失われていくのがわかる。

「…な…ん…で」
「昔はちゃんと旅立っていたんだ。…だがある時、捕虜にされ、この村の場所を話してしまった子供がいてな。そのせいで村は襲われ半壊、生き残った人々は出口を封じ、さらに奥へ奥へ逃げることになった」

この広場は…そういうことか。

「だが村で作り出せる食料には限界がある。口減らしは必要だ。殺す、となると村の統制が保てない」
「…だからこんな」

すでに石化は脚に及び、もう私は1歩も歩くことができない。
あと数分もすれば私は頭まで石と化すだろう。

「将来、村が反映し物に困らない未来が来たら…戻してやる。そのための石化弾だ…。それまで眠りについてくれ…すまん」
「…そんな未来、来るわけがないでしょ…。そっちのほうが酷、だよ」

限られた資源しかない集落。
外からの供給がない限り近い内に限界が来る。
来るはずがない未来に希望などもてない。
そんな…状態で…眠り続けるというのか。

アルおじさんは私に近寄り、担ぎ上げる。
マルコやサティア姉さんに並ぶように設置される。

「わたしなら…!ちゃんと外から持って返ってくるから…!お願い…!」
「…すまん。ほんとうにすまん」
「…ひどい…よ…」

私の口が乾いた硬い固まりへと変化する。
首から下が石化していたのだ。
もはや舌は微動だにしない。
すでに肺も心臓も石化しているはずなのに、苦しくないのが不幸中の幸いか。
鼻が石化し、匂いが消失した。
耳が石化し、静寂が訪れる。
目が石化し、視界が闇に覆われた。
そして頭が…髪の毛の先まで石化した。

私の意識は……あれ。

意識は消えなかった。
それだけではない。
石化してしばらくして目が見えるようになった。音が聞こえるようになった。
だが、石化が解けたわけではないようだ。
身体はまったく動かない、まばたき1つできない。

まさか、この状態で…このまま…?
恐らく、後ろにいるマルコやサティア姉さんも、同じように意識があるのだ。
アルおじさんに伝えなきゃ…こんなの地獄より地獄で…。
私が持っていたカバンと銃を背負ったアルおじさんの背中が小さく、遠ざかっていく。
だが、もはやこの世界で動く術を持たない、ただの石像になった私は、彼を呼び止める手段を持たない。石化を解除する人間が現れない限り、私はリリアではなく、単なる石像なのだ。
衣服もそのうち風化して…私は後ろの石像と同じ裸の石像の仲間入りをするのだろう。


ーーー


どれくらいたっただろうか。
意識を失うこともできず、発狂することもできず…私は長い長い年月を変わらぬ景色を眺め続けた。
あれから数体の石像が追加され、先頭にいた私はどんどん他の石像へ埋もれていった。だがある時を境に石像はぱったり、と追加されなくなった。
リリアは大体何が起きたか予想がついた。

ガラガラガラ…
背後のほうで何かが崩れる音がした。
背後から明るい光が差す。

「おい、なんだこりゃあ…」
「ち、やっぱり村はないか…」
「なんすか、この石像…」

どうやらはるか昔にここを襲った集落の人間だろう。
このあたりに村があった、という話だけでここに来たようだ。
何十年ぶりだろうか、忘れていたはずの緊張感が身体に湧き上がる。

「駄目だな…もっと奥にいくか?」
「ああ。念のためにな」

3人の男たちは奥へ進んでいったが、数時間後にため息とともに戻ってきた。

「ありゃひどいな」
「限界になった集落によくあるやつだ。少なくなった食料を奪い合い、最後には殺し合い。めずらしいもんじゃねえ」
「ま、少しは保存食があったのが幸いすね」

「しかし…この石像はなんだろうな」
「職人が趣味で掘ったんじゃないです?」
「こんな世も末な世界で…金にも飯にもならんことをするか?しかし精巧だな…」
「持って帰ります?」
「アホか、重いだけで何の足しにもならねえ…いやまてよ。いけ好かねえ金持ちの中にこーいった像を買ってくれるやつがいたな…。たしか胸やケツがでけえ女の像が好きだったはずだ。探せ」
「しかし数が多いすよ」
「男や貧相な女の像は壊せ、移動させるのも面倒だ」
「りょうかいっす」

目の前で信じられない光景が起きはじめた。
男が大きなハンマーを振り回し始め、石像が吹き飛んだ。
真っ二つにお腹を割られ、頭を潰され、粉々に砕かれていく。

「お、女っすよ」

目の前で私の顔を指差す粗暴な男。

「うーん、ちょっと幼いか?」
「全体的に子供の像が多いっすね。彫師にそういう趣味があったんすかね」
「お、そいつの後ろの像、似てるけどスタイルいいな。それにしよう」

私の身体をぐいっと押しのける。
支えがない私の身体はゆっくりと倒れ、床に倒れた。
幸いなのか不幸なのかどこかが折れるということはなかった。

サティア姉さんの石像が男2人に抱えられ運び出されてゆく。

「残りは…いらねえな」

ふん、とストレス発散とばかりにハンマーを振り回す男。
マルコやそれ以前の石像が轟音と共に砕け散っていく。
男たちが出ていった後、残ったのは床に倒された石像…私だけだった。

視界が何十年ぶりに変わった。
洞窟の天井。

(いっそのこと、壊してくれたほうがよかったな)

壊してくれればもしかしたら、死ねたかもしれない。
運び出されたサティア姉さんはこれからどうなるのだろうか。
お金持ち…本に出てくるような立派な家に飾られるのだろうか。
日のあたるところに出られた姉さんも羨ましい。

私だけが変わらずこの洞窟に放置されている。
村の消失が確定し、もはやこの洞窟に人が来ることはないだろう。

仮に来たとして、砕けた皆の固まりが散らばっているその中で倒れている私の石像に気がついて持ち出してくれる…または壊してくれる、そんな奇跡が起きるだろうか。

私はまた暗闇と静寂の中で洞窟と長い刻を過ごすことになる。

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