「うひゃー。さすが睦月さんの身体!」
自分の部屋に置いた大きな鏡の前で色々なポーズを取ってみる。
目の前の睦月さんは僕と同じポーズを恥ずかしげもなく取ってくれる。
…まあ、当たり前か。
睦月さんの身体を僕が操っているのだから。
僕の真っ白な、不健康な色の肌と違い、陸上部で健康的に焼けた肌からは活動的な少女の生命力を感じることができる。
そしてその鍛え上げられた身体はナヨナヨした僕の身体とは違い、身体の部位の1つ1つから力が溢れてくる。
セーラー服とシャツの下をめくりあげてみれば、お腹の真ん中に深い線が走り、その前後にうっすらと腹筋が見え隠れする。とはいえそこまで筋骨隆々としているわけではなく、女性らしい柔らかい肉付きだ。
ちらりと見えるブラジャーに赤面する。
「すごい、この健康的な身体が、今日から僕が自由にできるんだ」
-
30分ほど前。
怪しげな通販サイトで買った小さなスイッチ。
そのスイッチを下校中1人だった睦月さんのうなじにペタリと貼り付けた。。
途端に睦月さんの身体は着の身着のままシュルシュルと縮んでいき、彼女ソックリな小さなフィギュアに変わったのだった。
辺りで見ている人がいないか確認し、彼女を拾い上げる。
虚空を見つめる睦月さんは本当にフィギュアに変わってしまったのだ。
「意識はどうなるって書いてあったっけ…まあいいか」
あろうとなかろうと、意思の疎通ができないのであれば僕には関係ない。
僕は睦月さんを鞄にしまうと、足早に帰路についたのだった。
帰宅後、説明書に書いてあるとおりに彼女の鼻を人差し指で押し込む。
カチ、という音と共に視点が切り替わり、目の前に巨大な僕が現れる。
これで僕の意識はいま、睦月さんの中に入ったのだ。
その後、あっという間に僕の身体は先程睦月さんに起きた現象のように服毎シュルシュルと縮んでゆき、逆に小さな人形の睦月さんの身体がムクムクと膨らんでいく。
その過程で、人工的な肌が、元の人間と全く変わらない感じに変化する。
「あー。あー。あー」
僕の部屋に響く可愛らしい睦月さんの声。
すごい、本当に身体が入れ替わったのだ。
床に落ちているフィギュアを拾い上げる。
自分で言うのも悲しくなるが、店に並んでいたら潰れるまで売れ残っていそうな、貧相で平凡な男のフィギュアだ。
「ま、いいか」
僕のフィギュアを机の上に転がしておく。
今日のために慌てて大きな鏡を部屋に設置したのだ。
ドキドキと高鳴る心臓の音を聞きながら、 1歩1歩鏡に近づいていく。
既に視界の隅にはセーラー服のセーラーカラーや、ひらひらと揺れるスカートが見える。
そして大きく結ばれたスカーフ、その下から押し上げている柔らかい2つの物体。
頬には長い髪の毛が揺れて当たる。
…いや、焦るな。
深呼吸。
1,2の…3!
目の前にはクラス1の勉強家で、運動神経抜群な優等生、睦月さんがニコリ、と微笑んでいたのだ。
-
そして冒頭に戻る。
色々なポーズを試していたが、僕は我慢できずにセーラー服とスカートを脱ぎ捨てる。
「ほ、ほほー…」
上下淡い水色に揃えたブラジャーと、ショーツだけの姿になった睦月さん。
陸上部の練習をちらちらと見ていたのでわかるが胸は周りの女子たちより一回りは大きい。 走るのにはちょっと辛そうにしてるときもあったが…。
「まあ、もうその悩みも関係ないよね」
今日からは僕の人形として生きていくのだから。
両手でブラジャーに包まれた胸を下から持ち上げるように触ってみる。
ずしりとした重みのある物体は手から、指の間からこぼれ落ちるのではないかという柔らかさを兼ね備えていた。
「す…すごい」
両手をパッと離せばブルン、と重力に従って落下し、プルプルと衝撃の分散で揺れる。
肩にはずしりと重みがかかる。
こんなことを繰り返していたらクーパー靭帯がゆるくなって胸が垂れてしまうのかもしれない…いや、人形にはそんな事は起きないか。
説明書には永遠に老化せず、摩耗損傷はしないと記載されていたし。
…さて、合わせて持ち帰ってきた彼女のカバン。
その中にはあるものが入っていることを僕は知っている。
「あった。あった」
陸上部のウェアだ。
彼女が着ていた様子を思い出して、見よう見まねで着てみる。
…といっても本当に丈の短い短パンと、ブラトップという今の下着姿と対して変わらない格好ではあるのだが。
カップが着いているのを見て、ブラジャーをひょい、っと外す。
開放された胸が先程より激しくブルン、と揺れるが気にしないようにしてウェアを着込んだ。
「お…おおお…」
陸上ウェア姿になった睦月さんが目の前にいる。
その姿で再び色々なポーズを取ってみる。
睦月さん本人だったら絶対しないようなポーズも、今の僕には容易に取らせることができるのだ。
どんな格好をしようと露出したお腹がちらりどころか全開で見える。
そして今気がついたが、鍛えているだけあって、お尻の盛り上がりも他の女子と比べたらやはり違う。ただ単にお尻が大きい、肉のついただけの女子とは違う。
鍛えられた筋肉がプラスされたそのお尻はツン、と男ではありえない盛り上がりをしている。
両手を後ろに回し、お尻の山をぐ、っと掴んで見る。
ああ、なんてことだ。睦月さんには誇るべき山がもう1組あったのだ。
キュッとしまったお尻を堪能しきった後、どうしたものかと考える。
今日1日で睦月さんの身体を隅々まで堪能することもできなくはない。
だが、それは非常にもったいない気がする。
せっかく女子の…しかもスタイル抜群な身体を手に入れてしまったのだ。
まずは女子のファッションを楽しんでみたい気がする。
…さて、どうしようか。
睦月さんの身体はもう僕の意思なしで動くことはできない。
つまりこのまま放っておけば行方不明となり、家族や警察に捜索されることになるだろう。
まあそうなってしまったら外に出る時はウィッグをつけるなり化粧をするなりで本人には見えない変装をすればよいだけだが…
「まあ、それは時期尚早だな。まだやることがある」
僕は陸上部のウェアを脱ぎ捨て、 制服を着込み、
机の上に転がしてあった僕の身体のフィギュアを、睦月さんのカバンに突っ込む。
「とりあえずは彼女の家にしばらく滞在させてもらおう」
姿が睦月さんであれば、家族も怪しむようなことはないだろう。
…癖や記憶違いから追求されるのも時間の問題かもしれないが。
そうなる前にすべて終わらせよう。
「まずほしいのは彼女の物、服や小物、化粧品…」
1から用意していてはお金がかかってしまう。
徐々に持ち出して僕の部屋に隠していく。
それと並行して睦月さんとして学校生活も楽しませてもらおう。
僕がその間学校を休むことになってしまうが、しょせん一人暮らしだ。少しの間ぐらいならどうとでもなるだろう。
準備が終わったら彼女は失踪ってね。
さて、じゃあ睦月さんの家に帰りますか。
こうして、彼女が長い年月をかけて陸上で鍛え育てた身体は、今後1人の男が家で楽しむだけの物になったのだった。
終
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