Author : danna (だんな) / danna_story
状態変化、TSF、獣化の片隅にひっそり生きてます。
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2018/08/05

人形遣いの少女 発見

さて、私がもとに戻るための旅をはじめてもう4年目。

元に戻るためには3つ方法があると考えている。
1つ目は人形->人へ意識を移せる能力者を探すこと。
2つ目は私をこんな風にした能力者を探し、能力を解除してもらうこと。
…3つ目はその能力者を殺すこと。

どれも問題点は山積みだ。

1つ目はそもそも能力者の数は多くない。その上みな異能力を持つことを隠したがるので発見が容易ではない。その中で目的の能力を持った人がそもそもいるのか、という問題。4年の旅で能力者にあったのは片手で足りるほどだ。
2はそもそも解除できる能力でない可能性
3は長期間に渡って発揮される異能力は死ぬことで解除される物もあれば、されないものもある問題。
例えばネジを回す能力があったとして、その能力者が死んだら今まで回したネジが勝手に外れる、ということはない。一方で物を凍らせ続ける能力であれば解除される。
その状態が能力で維持されているかどうか、というのが判断の境目だ。
…私のこの状態はどちらなのか、判断はつかないけど。

どの方法も可能性を捨てず、探し続けている。
だが私の持っている情報は犯人の顔のみ。
彼の痕跡を探すために、私は旅を続けているようなものだった。
彼の能力はモノに人の意識を閉じ込める能力。

私の能力は"命なき人形を動かす"能力。
四肢があり、頭がある等、人の形をある程度保っている必要はあるが、そのおかげで自分の身体も"人形"とみなして動かすことができている。
街から街へ渡り歩き、目につく人形に対して能力を発動する。
普通の人形であれば問題なく動く。
だがもし彼の能力の痕跡があれば…。

(…いた)

とうとう見つけた。
商店街の小さな店に飾られている小さな(といっても私の数倍は大きいが)熊の人形。
右手を上げろ、という命令にピクリとも反応しない。

リサイクルショップ、と書かれた店の名前を見る。
店内に入り、"私"の喉、声帯を駆使して会話をする。

「あの。飾られている人形ですけど」
「ああ、はい」

店主だろうか。すこし歳の入った男に尋ねる。

「見せていただいても?」
「ええ、構いませんよ」

ウィンドウから取り出してもらい、受け取る。

(両手をあげて…)

ピクリとも反応しない。
確定だ。
このヌイグルミには"人の意識"が入っている。

「…ちょっと汚れていますね」
「ええ…これは数日前に近所の引っ越しで不要だから、と大量に持ち込んできたものの1つなのですが、結構年季が入ってるもので…」
「…引っ越し?」
「ええ、1か月ぐらい前に強盗のニュースがあったのご存知でしょ?」
「すいません、私はこの辺の者ではないので」
「そうですか。気の毒なことにその強盗と高校生の娘さんが鉢合わせてしまったみたいで。娘さんはその後入院してしまったんですよ」

少し面識があった、という店長はいろいろと情報を教えてくれた。

「それはお気の毒ですね…」
「ショックのせいかお目覚めにならないようで…。長引きそうということでご両親も今の家を引き払い、専門医療ができる病院の近くへ引っ越されたのです」

私はほぼ確信していた。これはあの男の仕業だと。
…この熊のヌイグルミの中にはその少女の意識が閉じ込められているはず。
私は店主に購入する旨を伝える。
事件から1か月、家の中に放置され、声も届かず、最後には両親の手で売り払われてしまった少女の悲しみはどれほどか。
私はヌイグルミを持ったまま宿に戻り、ネットで事件を調べる。

「鏡花…ちゃんね」

だが、すでに1か月前の事件だ。
男はすでにこの付近にはいない可能性があるが探してみる価値はある。

(大丈夫、あなたもいつか絶対元に戻してあげる)

私は鏡花ちゃんが聞いていると信じて、現状を整理するように話す。
自分も同じようにヌイグルミに閉じ込められていること。
特別な能力に目覚めて自分の身体を動かせていること。
そしてその男を追って何年も旅をしてきたこと。

(…私、戻れるんですか?)

はっとしてヌイグルミを見つめなおす。
一瞬、声が脳内に直接聞こえたような。

「鏡花…ちゃん?」

(…そうです、私、鏡花です…!わたし、気が付いたらこんな姿に…)

「落ち着いて。鏡花ちゃんは今、なにかの能力に目覚めたのかもしれない」

私もそうだったように、能力を直接受けると能力が発言しやすくなるのかもしれない。
これは渡りに船だ、男の情報を得られるかもしれない。
だがその前に…。

「鏡花ちゃんの能力、ちゃんと確認しないと」

―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・

(そうなんですか、私の身体は別の病院に…)

「うん、ご両親の引っ越し先も含めて、早めに調べてあげるね」

(ありがとうございます…)

「でも鏡花ちゃんは男の顔を覚えてないのね」

(ええ。さっきもいいましたけど、物音がする、と思ってリビングに入ったところまでは覚えているんですが、気が付いたら…床に倒れていて動けなくて)

私はじっと考える。
鏡花ちゃんのお家からとられたのはあまり多くはない現金のようだ。
つまりその男はまたすぐ…犯行を繰り替えすかもしれない。

「声とかは?」

(少しだけ。あまり特徴のない低い声で…。しけてるな、とかさっさと戻るか、とか…)

戻る…。仮宿だろうか。まだ拠点にしていてくれればいいのだが。
鏡花ちゃんの能力を使えば男を見つけることができるかもしれない。
明日から本格的に調査開始だ。

―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・

鏡花ちゃんの能力はテレパシーだと思っていた。
だが調べていくうちに、ただのテレパシーではなく限定的なものであることがわかった。助けを求める本能が能力を発現させたせいなのだろうか。

まだ確定ではないが、恐らく、彼女の能力は「周囲の"能力者"に向けて一方的に声を届ける」ことができる能力。

私がどれだけ念じても彼女に声は届かない。
そして彼女がどれだけ念じても私以外に声は届かない。
当初、彼女が人形の本体が私であることを認識していなかったことから対象の指定をする能力ではない…と踏んだ。
…正確には他に能力者がいないと確認はできないが。
範囲は彼女を中心に5m程、ちいさな通りであれば余裕で道幅一杯カバーが可能だ。

鏡花ちゃんと出会って10日目。
私たちは商店街の一角、2Fにある喫茶店から通りを見下ろすように陣取る。
人通りは少なく、数十分の1人通るか通らないか。
平日の日中はやはり買い物客もまだまだ多くはない。

そこへ深めのキャップを被った男が歩いてきた。
喫茶店の前を通り過ぎる直前、その男は周りをキョロキョロと見回した。
人間よほどのことがなければ呼びかけらたら、何らかの反応をする。
ヌイグルミを窓際に置き、鏡花ちゃんに人が通るたびに"ちょっといいですか?"
と声を能力で発信していてもらっていたのだ。

鏡花ちゃんの能力は普通は聞こえないのだからみんな平然と喫茶店の前を通り過ぎる。
…能力者を除いて。

とうとう、見つけた。


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