Author : danna (だんな) / danna_story
状態変化、TSF、獣化の片隅にひっそり生きてます。
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2018/07/20

人形遣いの少女

私には昔から不思議な力があった。
気が付いたのは、中学のころに起きたある事件がきっかけだった。

その不思議な力というのは人から見ればなんだ、そんな役に立たないものか、と思うかもしれない。
でも、今の私にはこれが必要不可欠となっている。

路上で私は、複数の人形と小銭が入る金属の箱を置く。
意識を集中すると、まるで糸が…いや、なにかそういった機構が組み込まれているのではないか、と思われるほどの精巧さで、たくさんの人形が踊りだす。

木枯らしの吹く中、足早に移動していた買い物客たちが、珍しいものを見るかのようにひとりが足を止め、またひとりが注目し、そうやって人が集まりだす。
今日は子供連れの母親が多いようだ、子供たちは寒さを忘れて目を輝かせて人形が踊り続けるのを見る。

「機械かなにかなのですか?」

小銭がひとしきり溜まったのでそろそろお開きにしようかな、となったところで会社帰りの女性が声をかけてくる。私は座ったまま、返事をしない代わりに、人形の首を横にフルフル、と振った。
これは最後までそういうパフォーマンスだから、というわけではないのだが女性はその動きになにか納得したのか、500円玉を1つ、箱に入れた。

私の不思議な力とは、「人形の操作」である。
人型をしている必要はあるが、そうであれば命無き人形に魂を宿らせるが如く自由自在に動かすことができる。
私はその能力を生かしてこうやって大道芸をして街から街へ旅をしているのだった。

「その腰にぶら下がっているお人形さんも動くんですか?」
女性が再び問いかけてくる。
私は肩をすくめると、右手でお人形さんの手をつかみ、ブンブン、と手を振った。
なんだ動かないのか、という残念という気持ちを感じつつも、私のなげやりな動作に面白さを感じたような、微妙な顔をして去っていった。
申し訳ない、このお人形さんは動かすことができないのだ。


寒いためか早々に人通りも少なくなってしまい、私も宿に退散することにする。
ネットで予約した素泊まりの安い宿に、コンビニで買った夕食を持ち込む。
こういった場末の宿は、セキュリティに不安はあるものの、私のような流浪の人でも気軽に泊ることが出来るので助かっている。

「お姉さん」

宿の廊下で呼び止められて振り向く。
なにか、という感じで首をかしげる。
ああ、この人は確か宿の経営者の人だ。

「最近このあたりで不思議な強盗が起きているんだ、あんたではないと思うが怪しまれないように外に出ないほうがいいよ」

強盗?
前にこの辺りに来たときはそんなことはなかったのに、このあたりも大分物騒になったものだ。
私はコクリ、とうなづき軽く礼をする。
とはいえ、不思議な強盗、とはいったい。

「そこに記事があるから興味があれば読むといい」

私はロビーに置いてあった新聞を手に取り、部屋に戻る。
なるほど、これは確かに不思議な強盗だ。
被害者はいまのところ5人。いずれも財布やカードの類が持ちされられている。
不思議なのは。全員が抵抗もせずに所持品を奪われていることだった。

(催眠術じゃあるまいし…)

被害者が言うには、目の前の人が手をかざした瞬間に目の前が真っ暗になった、ということらしい。それと同時に匂いや音も感じられなくなり最後には平衡感覚を失い、床に倒れたのだということだ。
懐を漁られたりしているのだが、その感覚もなかったということだ。

男が立ち去って数分で五感は徐々に戻った、ということだ。
警察も最初は半信半疑だったものの、立て続けに同じ証言をする被害者が現れたとなれば、なんらかの薬品の利用の線からも捜査をしているということだった。

(怖いなあ、早めにこの街から出てったほうがいいかな)

私はそう考え、明日の見世物が終わればその足で出ていくことに決めた。

―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・


とはいえ、こんな旅をしていれば怪しいものには惹かれてしまうのか。
その夜遅く、見世物を終えて駅へ向かっているときに出会ってしまった。

怪しげな風体の…男だろうか。
暗くてよくわからないが、どうやら人通りの少ない道の電信柱の裏で獲物が来るのを待っていたらしい。

「…金を出せ」

私は男の荷物を確認する。
手には何も持っておらず、薬の瓶やそれをしみこませた布を隠せそうなカバンを持っているようにも見えない。
…ということはアレだ。

(この人も、能力の持ち主)

なにかをきっかけにして能力に目覚める人は世の中に意外といるのだ。
大半は役にも立たないどうしようもない能力だったり、目覚めた本人も気が付いていないのだが、稀にこういった人に害をなす能力に目覚め、闇に紛れて行う悪人がいる。

人間の五感を一時的に奪う能力。
必然、能力を受けた人間は抵抗も出来ない。

「金!!出さないのなら…!」

男はバッ、と手の平を私に向けて突き出す。
私は男に背を向けて走り出す。

「無駄だよ」

ダメか、意外と射程が長いらしい。
私はガクリとうなだれると、そのまま道路の上にうつぶせに倒れた。


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・


「さてと…いくらもってるかな」

倒れた女が動かなくなったのを確認する。
この能力のいいところは相手の抵抗がないことだ。
必然、争った形跡もないので俺の指紋や血痕、皮膚片から身元がバレることもない。

「…ん?誰かに見られているか?」

視線を感じてキョロキョロとあたりを見回し、他に人がいないのを確認する。

「気のせいか」

俺は倒れた女へ近づいていき、膝をつく。
女性だというのに、着ている物に無頓着なのか大分くたびれている。
さて、財布はどこに入れてるのか。

「ん、あんまり持ってないな、こいつ…しけてやがる」

その瞬間、女の身体がグワっと立ち上がる。
まるで機械のように直線で、一切の無駄なく動いたその女は、膝をついていた座り込んでいた為に、いい位置にあった俺の顔をまわし蹴りで吹き飛ばした。
その力は異常に強く、俺の頭はその衝撃に耐えきれずバキボキ…と低い音を立てて砕け散った。


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・

(ふー、やっぱり五感奪われても問題なかったわね)

蹴りの姿勢のまま動かない女と、口からドス黒い血を流して変な方向に頭を曲げたまま倒れている男。
その女の腰にぶら下がっている、私が動かせない唯一の人形がブラブラと揺れている。
実は、この人形こそが私なのだった。
いや、ややこしいことを言うと、正確にはこの回し蹴りをしたのも"私"なんだけども。

(さすがにちょっと危険だったかな?)

私の身体に向けて、意識を集中して念じる。
回し蹴りを放った体制のまま動かなかった女が意識を取り戻したかのように動き出し、落とした荷物を拾い上げた。

―中学生の私に降りかかった事件。
それは恐らくまた別の能力だったのだろう。
両親不在の私の家に押し入った泥棒は、通報しようとした私の意識を、私の隣にあった人形に閉じ込めたのだった。

その時に目覚めたのがこの能力。
命無き人形であれば例外なく動かせる能力。
その能力で私は"私の身体"を動かすことができるようになったのだ。

並大抵の苦労ではなかった。
学校の友達や両親にばれないよう、リモコンのように私の身体を動かし、生活させたのだ。
最低限の生命維持に必要な自発的な呼吸は意識がなくてもしてくれていたのだが、
空腹となってもわからない、身体になにか異常があっても、痛みがわからない。
トイレもタイミングが難しい。そのためオムツをしたり、毎時間トイレにいったりと苦労の連続であった。
さらに、人形に閉じ込められた私は"命を持っている"人形なので自身の能力で動くことができない。
そのため、うっかりすると双方の身体が無防備に床に転がることになるのが怖かった。

そうこうして、ようやく中学を卒業したのをきっかけに、私は元に戻せる能力者を探すために、大道芸人として身銭を能力で稼ぎつつあっちこっちを旅しているのだ。

(あー、やっぱり力加減難しいな…)

男を蹴っ飛ばした部分が青くアザになっている。
相変わらず力いっぱい動かすと制御が難しく、加減もよくわからない。

(おっと、いつまでもここにはいられないわね)

私は男に向けて意識を集中する。
すでに事切れていた男の身体は私の能力で問題なく動かすことが出来た。
私は男を歩かせ、先ほどまで男が隠れていた電信柱の裏へ連れていく。
そして懐の携帯電話を取り出させ、警察への緊急通報をさせた。
あとは位置情報から警察がこの死体を見つけ、身元から所持品を改めれば強盗事件は解決するだろう。見た目、明らかに殺人
ではあるが、首の骨がものすごい力で砕けてるのを見て女性の仕業とも思わないはず。

人形状態の私の五感は奪えないし、生身の身体は操り状態だから五感を奪ってもどうしようもない。
男にとって能力の相性が悪かった、と言えよう。

さて、さっさと次の街へ行きますか。
できれば次は、良心的な能力者と出会えるといいなあ。

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