Author : danna (だんな) / danna_story
状態変化、TSF、獣化の片隅にひっそり生きてます。
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2018/07/17

世界一狭い檻 (上)


数ヶ月前、私は事故にあった。
大学からの帰り道、後ろから車がズドン。
ブレーキ痕がなかったこと、逃走した車が盗難車だったことから、狙ったものだと言われたが、私には殺されかける程の恨みを買うような心当たりはなかった。
私の体は全身を強く打ち、集中治療を余儀なくされている。
でも今の時代、万が一の事態に備えて意識不明患者から意識を取り出しすことが可能になっている。
取り出した意識を、医療用アンドロイドへ移植するのだ。
こうすることで仕事や学業に穴を開けることなく治療に集中できるというわけだ。
私もその例にもれず、アンドロイドへ移植されたのだった。



とはいえ、お金のない私にあてがわれるのは汎用量産機で、体型はありきたりなものである。
顔は簡易3Dスキャンで作成した自分の顔仮面がセットしてある。
ただし、表情を豊かにするための表情筋を多く使用するものは価格も高く、納期も長いため、今は無表情な私の顔が張り付いただけとなっている。
また、声は録音されたものがあれば、元の身体の再現が可能となっている。
難点があるとすればこのボディの口内に設置されているスピーカーがあまり性能がよくないということだろうか。

事故にあって数日後には大学に復帰できたのだが、友達は皆最初は驚きの顔になった。とはいえアンドロイド自体はもう珍しくもないので数日もする内に慣れてしまったようだ。この能面みたいな顔から発せられる私の声はちょっと気持ちが悪い、とは言われたけども。

1ヶ月に一度、アンドロイドのメンテナンスと本当の自分の体の治療状況を確認するために通院する。

「戻せない…?」

医者の言葉を繰り返す。

「いえ、正確には戻すのに時間がかかりそうだということです」

いくら意識を移し替えることができるようになっても、他人の身体にはそう簡単に移植はできない。個人個人に意識の形というものがあって、一致しない限りは移植は不可能なのだ。指紋認証のようなものである。
アンドロイドの場合は意識の形をシミュレートすることでだれでも移植可能となっているが、生身の人間はそうはいかない。

そして医者が言うには、身体の骨や神経は元通りになったのだが、その意識を収める器に変容が見られるようで、今の私の意識の形と一致しなくなっているようだ。

「事故にはよくあることなので、珍しいわけではないです。ある程度時間はかかりますが徐々に元の形へと戻るのが一般的な症例です」

ただ、それには更に数カ月かかるだろう、ということだった。
いっそのこと数年、という長い期間がかかるのであれば保険を利用した高性能アンドロイドを検討するのだが、数か月となるともったいない気がした。
そもそも、身体が無事だったために、その事故の保険金もある程度抑えられてしまい最新鋭アンドロイドを買うだけの費用には若干…いやかなり届かない。
私は継続して病院のアンドロイドを借り受けることに決めた。

とはいえ、この身体は最新鋭アンドロイドに比べればかなり不便である。
製造されてかなり立つのか、関節の動きが軋むことがある。
背後から呼ばれて振り返ろうとしたときに、内部で首の機構が外れて為に頭部が落下しそうになり、大騒ぎになったこともある。

また、バッテリーの劣化も進んでおり、長時間の稼働が難しい。
胸部に搭載されたバッテリーの残量情報は視覚情報として目の前にインジケーターとして表示されるほか、"空腹感"として使用者へ通知される。
感覚としては大体4時間に1回ぐらいの頻度で充電を要求される。
フル充電時間は1時間、稼働に4時間、の繰り返しである。
また充電中は稼働に制限され五感は停止されてしまう。
その間私も思考しかできなくなるため、さすがに辛いので意識もスリープさせる。
最新型であれば充電中でも問題なく動けるシリーズは発売されているらしい。
(そもそも1日動いても充電が切れるようなことがないらしいのだが)

昼と夕方に、食堂で無表情で、コンセントから充電する光景は一種のホラーとして学友たちに伝わっているらしい。


(まあ、数か月…だけだもんね。あーあ。今年は海とかお預けかあ)


「あの、自分の身体の様子って見ることができますか」

私は医者に尋ねる。

「あー…。うーん」

医者が渋い顔をする。

「あの、なにか?」
「いえ、集中治療ポッドに投入されていて直接見ることはできないですね」
「え、自分の身体なのにですか」
「はい…。なんせ無菌室な上にセキュリティを確保しないといけないので」

いたずらとかされると困るでしょ?と医者。
映像であれば可能ですよ、という付け足しにより、私はポッド内カメラ経由で自分の身体を確認することができた。

卵型のガラスの中には液体が満たされており、そのなかに私が浮いている。
なんだか全身お風呂に入っているようで気持ちよさそうに見える。
事故当初にみた、擦り傷や打ち身で青くなっていた箇所はすでに何事もなかったかのような健康的な肌に修復されているようだ。
ひとまず間接的とはいえ、確認した私は安心して病院を出た。

インジケーターを見ると残り1時間、と表示されている。
しまったな、待ち時間の間病院で充電させてもらえばよかった、と思いつつどうやって帰るか考える。道端での動作停止はいろいろトラブルになるので避けたい。
気が付いたらまた病院に運び戻されていた、というのまだマシなほうで、ひどいときには攫われた上にパーツ分解され売り飛ばされる、なんてのも噂レベルで聞くことがある。
実際は解体防止センサーとGPSセンサーによる自動通報等でアンドロイドの誘拐はほぼ不可能ではあるのだが、用心するに限る。

一時的とはいえアンドロイドとなり、女性という性から解放されても注意すべきことは変わらない。エレベーターで2人きりにならない、怪しげな物は食べない、飲まない、夜道を1人で歩かない。

私は手を挙げて、道を走るタクシーを呼び止めた。

―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・

異変が起きたのはそれから1か月後のことだった。
東京へ旅行へ行っている美羽(みう)からショートメッセージが届いたことから始まった。

"美佐、いま東京にいる?"

なんとも不思議なメッセージである。
私がいま長時間の旅行が難しいことは美羽も知っている。
そもそもこの旅行は私が事故に会わなければ一緒に行っていたはずなのである。

"今、家だけど…"

メッセージアプリを立ち上げ返信をする。
アンドロイドになって便利になったのは端末を持たなくても内蔵されたアプリケーションですべて対応可能なことだ。
携帯端末で使えるようなアプリも問題なく搭載することができる。
容量はそこまで多くないが、ボイスモジュールや表情モジュール、関節制御モジュール等の必須アプリケーションなどが入っている領域の空き部分には自分で好きなアプリケーションを入れることができる。
音楽再生アプリケーションは地味に便利である。
(自分の喉から音楽が再生されてしまうのが難点ではあるが)

”うーん、そっか。今美佐にそっくりな人を見かけちゃって"
"そっくり?"
"うん"
"そっくりって言っても、今の美佐じゃなくて、元の美佐にそっくりだったの"
"元のって…私まだアンドロイドのままだよ?"
"だよねー。びっくりしちゃった"

まったく。
見間違いとはいえちょっとドキリとしてしまう。
しかし次に送られてきたメッセージに私は恐怖を感じた。

"写真、遠くから撮ったから送るね"

というメッセージと共に添付された写真には、望遠で取った為にぼやけてはいるが女性と男性が手をつないでいるのが映っている。

1人は白髪でメガネをかけて、恰幅のよい初老の男性。
もう一方は…。
世の中に自分と似た人は3人はいるというが、自分でもここまで似ているのは…と思う。
1か月ほど前に見た、水中で浮かんでいる自分の姿を思い浮かべる。
数か月で伸び放題に伸びた髪はこんな風ではなかろうか。

"うーん、似てるけど…私はここにいるし…身体は病院だし…"
"だよね、ごめんね。変なこと言って"
"ううん、大丈夫"

…とはいえ不安は残る。
視界にカレンダーアプリを立ち上げる。
定期健診は明後日だ。
その日にまた自分を確認させてもらおう。
そう私は考えたのだった。


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・


「あの、自分の身体の様子って見ることができますか」

私は前回と同じように医者に尋ねる。
医者はまた?とおどろいた顔をする。

「何も変わらないと思うよ…いまは身体は筋肉が衰えないように電気で定期運動しているだけで、意識の器の修復による精神的…時間だけが必要な状態で」
「すいません、でも確認したいんです。できれば直接」
「…直接、ですか…」
「ええ」

カメラ越しだと録画したものを見せることもできてしまう。
無理を承知で医者にお願いしてみる。

「しょうがないなあ、ちょっと上の許可を聞いてみるから」
「ありがとうございます」

独断ではできない、ということで医者は席を外した。
ダメだったらごめんね、という前置きをして。
数十分しただろうか。

「病院長がお会いになられるようです」
「…どういことです?」
「事情を聴いて判断したい、と」

事務員に誘導され、事務棟の奥にある院長室へ案内される。
座ったこともないような豪華なソファへ座る。

「お待たせしました」

私が入ってきた扉とは別の、奥の扉から現れた男に私は驚愕する。
白髪で、メガネをかけて、体型はふっくらとしていて…。
そう、先日美羽から受け取った写真に写っていた男とそっくりだったのだ。

「…どうしましたか?」
「…」

驚きで二の句が継げないでいる私を見て院長が顔をしかめる。
無表情なので感情は伝わらないのだが、院長には察するところがあったようだ。

「なるほどなるほど。あなたは何か確認したいことがあるようだ」
「…」

私は沈黙をしたままメッセージアプリを立ち上げ、目の前にある院長の端末へ、例の写真を送り付ける。

「これは?」

院長は表情を変えずに問いかけてくる。

「先日、旅行に行った知り合いから送られてきた写真です…。片方は、あなたですね」
「…ぼやけててわかりにくいな」
「…隣にいるのは、私なのではないですか?」
「世の中には似ている人が何人もいるという。東京ならなおさら人も多いだろう。こんなぼやけた画像ならば似ている人なんてごまんといるだろう」
「…なぜこの写真が東京で撮られたと?」

院長は驚いた顔をする。

「…ビルがたくさん並んでいたからね、東京と思っただけさ」
「ぼやけているのによくわかりますね」

私は確信する。
この病院は私の身体を不正に何かに使っている。

「…私の身体はいまここにあるのですか」
「もちろん。患者の身体は完全なセキュリティで守られている。持ち出しなど不可能だよ」
「確認させていただいても?」
「…それは難しい。カメラ越しであれば可能だ」
「それでは意味がないのは分かるでしょう?」
「規約は規約だ」
「警察を呼びますよ」

私は電話アプリを立ち上げ、緊急通報画面を呼び出す。
あとはボタンを押すだけで警察がここへ駆けつける。

「やれやれ、君の知り合いに写真を撮られてしまうとは。運が悪かったな」
「…白状したわね」
「そうだ。私は訳あって君の身体を使わせてもらっている。それがなにか」
「…犯罪よ」
「犯罪…ねえ。バレなければ、公にならなければ犯罪にはならないよ」
「今からなるわ、通報します」
「…アンインストール、電話モジュール」

ピッっというビープ音と共に私の目の前から電話アプリが消失する。

「えっそんな!?」
「どうしたのかね?驚いているようだが」

院長がニヤリと笑う。

「君の素体はわが病院の備品だね。アドミニストレーターが誰に設定されているか、確認しなかったのかい?」

個人で買ったアンドロイドであれば管理者は自身となるが、レンタル素体には盗難による流用を防ぐために管理者はその所有者が登録されるのが常だ。
目の前の人物がマスターであることを、私は知らなかった。

「そんな…」
「さて、バレてしまったからにはしかたない。君には残念だがここで終わりだよ。このまま気が付かずに過ごしていれば、治療不可能として、補助金で最新鋭アンドロイドになれたかもしれないのにね」
「冗談じゃないわ…!」

私は踵を返し、院長室から出ようと試みる。

「アンインストール、歩行モジュール」

キュウウン、という音と共に脚部に配置されたアクチュエータがすべて停止する。
私は歩き方を忘れてしまった可能に棒立ちでその場に立ちすくす。

「もしやと思って、部屋に呼び寄せてみたがやはり正解だった。このままだったら私の立場が危ういところだった」
「あなたって人は…!」
「アンインストール、パーソナルボイスモジュール」

目の前に無常にもアンインストールゲージが表示され、あっという間に100%に達する。

「ナニヲシタノ…!ッテナニ、コノコエ…」

自身を再現したボイスファイルを削除されてしまい、デフォルトの女性機械音がセットされてしまった。

「君はもう日常には戻れないよ」
「ナニヲイッテ…」
「君がいま、君だと証明できる手段はいくつかある。病院が持っている記録とかね。そのうちきみ自身が持っていたモノの1つが、声だよ。もうないけどね」

量産機アンドロイドと同じ声にされてしまった私は驚愕する。
まさか、こいつは私が私である証拠を消そうとしている…?

「お察しの通りだよ。君の身体がどうしても私には必要でね。私個人としては穏便に譲り受けたかったのだが」
(なにが、穏便に、よ)

元に戻れないとうその宣告をして身体を奪おうとしていたのだ。
許せることではない。

「ただそれも不可能となったいまできるのは君をただの量産機に閉じ込めることだよ」
「ソ…ソンナコトデキルワケガナイワ」
「…できるのだよ。アンインストール、フェイスモジュール」

カチっという音と共に顔についていたロック機構がすべて外れる。
ずるり、と顔の表面がはがれていく。

(ちょ、うそでしょ)

慌てて抑えようとするが手から滑り落ちた仮面はカン、と地面に落下すると衝撃で仮面全体に亀裂が入ってしまった。

外された顔の下はロックのためのフックと、カメラのホールが付いたシンプルなのっぺらぼうである。

「さて、これで見た目も量産機と変わらなくなったな」
「ウ、ウソ…ワタシノカオガ…」

院長は亀裂の入った仮面を拾い上げ、こちらへ向ける。
見せつけるようにしながら、両手に力を入れ、バキっと真っ二つにおり、ゴミ箱へ放り投げた。

「私も忙しくてね。あまり些末なことに時間をかけたくないんで、そろそろ終わらせてもらうよ」
「クッ…」
「インストール、メイドモジュール。プライオリティはメイン意識より上位に設定」

目の前にゲージが表示される。
徐々に数値とゲージが伸びていく。

(上位設定ってまさか…私の意識より優先されるってこと?)

「君は今日から私の専属メイドということにさせてもらおう。なあに、もうすぐ廃棄予定の機体だったんだ。私が譲り受けることになんの不審な点もないだろう」

50%…80%…

身体全体に自分の意識では制御できない部分が増えていく。

「ヤメテ…、ダレニモイワナイカラ…」
「ははは、ノコノコと来てくれて本当にありがとう」

ゲージが100%に達する。

(身体が…勝手に!!)

棒立ちだった私の身体はピシっと背筋を伸ばし、両手を前で上品に組むポーズをとる。
そのままの姿勢で石になってしまったかのように、不動の状態となる。
私がいくら動こうとしても、その意思が身体に伝わることはなかった。

「ご主人様、ご命令をどうぞ♡」

甘ったるい声が喉から発せられる。
どうやら別のボイスモジュールが上書きインストールされたようだ。

「しばらく用はない。そこで待機しておけ」
「承りましたご主人様」

そう答えると、まるで時が止まったかのように停止する。

(動いて、動いて…!)

まるで、身体をピッタリなケースに嵌められてしまったようだ。
1ミリたりとも動かない身体。
私は不用心に1人で来てしまったことを後悔する。
これから私はどうなってしまうのだろうか…。

1 件のコメント:

  1. Dannaさんが書いた人とロボとの入れ替わりが大好きです!つづき期待しています

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