Author : danna (だんな) / danna_story
状態変化、TSF、獣化の片隅にひっそり生きてます。
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2018/04/23

付喪神と制服と私

九十九と書いてなんと読むか。
知ってる人も多いだろう。「つくも」と読む。
古語で「つく」は"つつ"、少し足りないという意味。「も」は"百"である。
つまり、百に足りない、という意味だから、九十九が当てられている、という説。
白髪のことを百から一が足りない、ということで九十九髪と書いた物語もあり、また「付喪」神も同様の語源を持っていると言われる。
長い間使われた道具に魂が宿る、と言われるがその期間が約百年ということからツクモ神、らしい。
なぜこんな話をするかと言うと、その「付喪神」が私の前に現れたからだ。

私が朝、目覚めたとき、私はハンガーで吊るされていた。
言っておくが私は卒業を終えたばかりの女子高生(卒業しても4月になるまでは女子高生である、異論は認めない)であり、決してハンガーで吊るされるような形状をしていない、当たり前だが人間である。
ベッドに入り、寝る寸前までの記憶は確かにある。
が、目が覚めてみれば、自分の部屋で吊るされていたのだ。
(え、何起きたの...?)
目に入る家具の位置から自分が昨日の卒業式まで毎日のように着てきた制服がかけられた位置であることを把握する。
視界を下に落とす。
ベッドには『私』が寝ていた。
(え、え?なにこれ!?)
「ふああぁ」
『私』がむくりと起きる。
しばらくキョロキョロ周りを見渡し、自分の体を眺め、最後に私の方へ顔を向け、ニコッと笑う。
「今日子と入れ替われたんだ!!やあ、今日子、俺はセーラー服だよ」
『私』が勝手に自己紹介を私に向かって始める。
(セーラー服…?入れ替わり...?)
非現実的な状況に私は考えが追いつかない。
そんな私を見てなのか『私』は説明し始める。
自分が魂を宿したいわゆる付喪神であること。
宿ったはいいが、動けないので魂同士、入れ替わってみたら成功した、ということだ。
(制服が魂を持ったってこと...?っていうかセーラー服に宿った魂なのに男っぽい...)
それにたった3年しか使っていないのに魂が生まれるのは、正直なところ早すぎないだろうか。
「それで、今日から俺が今日子として生きていくんだ」
(え?ちょっとまって、じゃあ私は今セーラー服ってこと?!っていうか生きていくって何!?)
冗談じゃない、私はもとに戻せと叫ぶ。実際に叫ぶことはできなかったが、『私』には伝わるようだ。
「そんなに叫ぶなよ、うるさいなあ」
『私』はハンガーをつかむとぶんぶん振り回す。
私の身体はハンガーにつられて同じくブンブンと空を舞う。
(や、やめて、お願い)
振り回すのを止めた『私』、慣性でブラブラと為す術なく揺れ続ける私。
そんな私を『私』が冷たい目で見下ろす。
「大丈夫、君にもチャンスはある。このまま入れ替わりが固定されるには条件があるんだ」
と、その条件を説明し始める。
それはこの説明が終わってから、3時間以内に私が指定した人物が"私が変だ" とか "いつもの私ではない"と指摘した時点で入れ替わりは失敗、すなわち元に戻るということだ。
それに加えて勝負の間は元の自分、つまりは制服を身につけ続けなければいけないらしい。
(私のフリなんてできるわけがないわ)
「かもしれない。でも僕にも自信はあるぜ」
(指定した人に会わない行動をすることは?)
「それは俺の負けになる。常に一緒にいるようにするし、会話を避けたりはできない」
(なるほど、指摘っていうのは具体的に声を出さないとダメなの?)
「ああ、そんなことはない。心で強く疑心を抱けば認められる」
(ふーん、ほかには?)
「それに1回だけ、君の命令を実行しなければならない。もちろん自分の正体をバラす、とかそういうものは無効だけどな」
(なによ、それが一番大事じゃないの。早く言いなさいよ)
一方的な交換とはならない勝負事になるようだ。
戻るチャンスはあると判断し、私は学校の友人を思い浮かべる。
しかしもう既に卒業式を終えた今、学校で会うことはない。
会うのに時間だってかかるし、外で会う友人は普段の学校の私と違っても気が付かない可能性がある。
(と、なると、もうこれは飛香しかいないわ)
今年中学を卒業した私の妹を指定する。
水泳部のエースで、4月からはスポーツ推薦で入った高校へ進学する、妹だ。
「わかった、飛香だな。今日はトレーニング休みだから一緒にいられるし、いい案だと思うぜ」
予想はしていた、とばかりに落ち着いた雰囲気の『私』。
(昨日の私の部屋での会話を、コイツは聞いてるのね)。
飛香との共通の話題や認識は把握されてしまっているようだ。
でも妹とはもう10年以上一緒にいるのだ。にわかな『私』に気がつく可能性は十分ある。
さらに元が人間ではないのだ、なにか突飛な行動をしてしまうはずだ。
(それに、そんな口調じゃ、到底無理なはずよ)
そんな私の気持ちを読み取ったのか、『私』はニヤリと笑うと
「…ふふ、飛香は私の妹だけどね、セーラー服の貴方に姉妹なんていないでしょ」
(…!?)
私の声色、口調を真似をされると、目の前の『私』が鏡ではないかと錯覚する。
「私は3年間、毎日ずっと一緒だったのよ、あなたのことはママより把握してるわ」
自慢げな時に腰に手を充てる仕草も、完璧に私だ。
(ふ、ふん、すぐにボロがでるわ)
「よし、勝負成立だな、じゃあ着替えさせてもらうぜ」
『私』はそう言うと、着ていたパジャマを脱ぎ捨て、タンスから下着を取り出し始める。
(ちょ、ちょっと勝手に何してるの!)
「何って…私が自分の着替えをしてもおかしくないでしょ、下着つけないで歩き回ってもいいならそうするけど?」
ブラジャーを手に取り、身につけようとする。
「流石に着替えるのは初めてだから見よう見まねでやるのは難しいな…、ま、こんなもんだろ」
若干胸がちゃんと収まっていない状態だが、これ以上整える気はないらしい。そのままシャツを着込んでしまった。
「じゃ、セーラー服を着るとしますか!」
ハンガーから外された私は脇のファスナーをあげられる。
じじっーと、身体の上を何かが走り、その部分が分割された感触。
そのままバンザイをする形で私は着こまれ、ファスナーは降ろされた。
体の中の空洞に異物が入り、それがそのまま私を立体的に形作っている。
胸の部分は自分の乳房で盛り上げられ、うっすらと山を作りあげた。
(悔しいけど、いまはコイツが着てくれないと私は動くことも出来ない…)
「よいしょっと、スカートもこれでOKかな」
卒業をして、今日から着ることがなくなったはずの制服を着込んだ『私』が鏡の前に立つ。
私の視点はいつもより低い。そもそも目がドコにあるのか、はっきりとしないのだが。

(さあ、さっさと飛香のところへ行きなさいよ)
「言われなくてもそうするよ、行かないと僕の負けだからな」
制服に合わせて紺色の靴下まで履き終わった『私』は立ち上がる。
(ちょっと、なんで家にいるだけなのに学校指定の靴下まで履いてるのよ)
「えー私の勝手でしょ。一度履いてみたかったんだよねー。それにそれを言ったら卒業したくせに、家で制服着てることがそもそもおかしいでしょ。制服さんは黙っててもらえます?」
(くっ…こっちが何も出来ないと思って)
「実際何も出来ないでしょ、さぁ、3時間の勝負開始よ」

『私』は自室から出て、隣の飛香の部屋のドアに手をかけた。

・時間内に妹の飛香から"いつもの私ではない"ことが指摘されれば元に戻れる。
・1回だけ、私から付喪神へ命令し、行動させることができる。

『私』-付喪神-は自室から出て、隣の飛香の部屋のドアに手をかけた。
そのとき、ドアノブが勝手に回る。
飛香も外に出てきたのだ。ジャージ姿の飛香が私を見つめる。
「あれ?お姉ちゃんどうしたの、何か用?」
(飛香、気がついてお願い…!)
「なーに、お姉ちゃん、制服なんて着ちゃって。変なの」
私(というか制服)を眺めて、クスクスと飛香が笑う。
(いま!いま変って指摘したよ!)
(何を言ってんだ、本人じゃないって指摘じゃないから無効だよ。ちゃんとルール通りに指摘されたら僕の承諾なんて関係なしに即座に元に戻る、そういう契約なんだから)
どうやら、判断は付喪神がするのではないようだ。
「いや、ちょっと笑いをとってみようかなーなんて」
付喪神がフォローをしてしまう。
(しかしいきなり変って言われるのは、ちょっと焦ったぜ)
(ぬぬ…)
「お姉ちゃん、だからって制服着るぅ?もう卒業したのに」
笑い続ける飛香。
「ま、ちょっと記念にね。可愛い妹と2人で自撮りでもしようかななんて」
「あー、私も勉強できたらその制服だったんだけどなー」
「何言ってるの、飛香のいく高校だって制服は可愛いじゃない。それにスポーツ推薦でしょ、私からしたらそっちのほうがすごいよ」
私は飛香の部屋にかかっている、4月から通うスポーツ名門高校の制服を指差す。
「ま、そーなんだけどねー。お姉ちゃんの通ったの高校ってのもいいよなーって、ちょっと思っただけ」
「ね、飛香の制服もっとちゃんと見ていい?」
「どしたの、私が買ったときにも散々見てたんでしょ」
「いいじゃんいいじゃん、部屋はいるよー」
付喪神は飛香の背中を押して飛香の部屋に入る。
付喪神も飛香と一緒にいることが条件なので必死である。

(しばらくは様子見かしら…チャンスがあったら命令を使わないと)

目の前には妹がいて、『私』が話している。
が、もちろんその妹と喋っているのは私のふりをしている偽物である。何度も気がついてほしいと念じては見るが妹には伝わらないようだ。
仲睦まじく妹と話す『私』は、当の本人が見ても違和感がない。ほぼ3年間、昼間は学校、夜は部屋にいたのだ。その演じっぷりは誰よりも私であった。

(命令できるのは一度だけ。直接バラすことはできない…か)
私は考える。効果的な命令はなにか。効果的なタイミングはいつなのか。
そうしている間にも時間はどんどん過ぎていく。
このままでは私は自分が使っていた制服に閉じ込められたままになってしまう。

「そういえば飛香は高校でも水泳を続けるの?」
「そのつもりだよ」
「飛香は速いからー。インターハイも狙えるかもね」
水泳のことも、インターハイを目指すことも知っているのか。私と妹が知っていて、こいつが知らないこと、それは3年以上前の出来事だが…
(そこからほころびが出るような命令なんてあるかしら、忘れちゃった、とかで済まされちゃいそう)
「…あ、そうだ」
飛香がすくっと立ち上がる。
「ママが高校入額祝いに新しい水着買ってくれるって」
「ああ、先週ぐらいに言ってたね」
「どんなデザインがいいかなあ」
「うーん」
「ちなみにいまこんなデザインなんだけどね」
そういうと飛香はジャージを脱ぎ始める。
(おいおい)
付喪神が珍しく焦った感じが伝わってくる。
飛香がジャージの下に身につけていた青の競泳水着を見せる。
「今日トレーニング休みなんじゃないの、なんで来てるのよ」
付喪神がちょっと焦ったように苦笑する。
飛香の突飛な行動に驚いたようだ。
「ちょっとジム行こうかなとか思ってたから」
(ジャージ姿で部屋から出てきたのはそういうことか)
「ふーん、そ、そうなんだ」
「どうしたのお姉ちゃん、顔赤くしちゃって」
「な、なんでもないよ。そうだね、やっぱ次も青系統が似合うと思うよ」
(そういえば男みたいな言葉遣いだったし、やっぱり恥ずかしいのかしら…そうか、言葉遣い…)
私はある作戦を思いつく。

「へくちっ」
飛香がくしゃみをする。
「ほら、まだ春とはいえ、寒いんだし、さっさと服きなよ」
「えへへ、ごめんなさい。ちょっと冷えたから厚着するね」
ジャージを着直し、その上からアウターを羽織る。
「まったく、子供ねえ」
付喪神が自由に話せる状態では絶対ボロを出さない。
私は部屋の時計に目をやる。もう時間がない。
私は一か八か、命令を出すことを決める。

(命令よ!あなたの本来の言葉遣いで話しなさい!)
「まったく、飛香はまだまだ子供だな、これからの高校生活が不安だぜ」
飛香が怪訝な顔をする。
「ど、どしたのお姉ちゃん」
「い、いや…なんでもない、僕はいつもこんな話し方なんだよ…」
「え、え…?」
「気にするんじゃね…いや、気にしないでく…れ…」
急に変わった口調に飛香は言葉を失っているようだ。
しばらく苦悶の表情を浮かべていた『私』だったが、数秒して元の表情に戻る。
「…なんちゃって、驚いちゃった?」
(え、命令ってもう終わりなの?!)
時間制限があるとは聞いてないが、どうやら効果は永続しなかったようだ。
そして付喪神は元の私の口調で取り繕おうとする。
でも、既に目の前の飛香は急に豹変した姉の口調に疑惑を感じている。
「お姉ちゃん、どうしたの、何か変だよ…まるで」
(そうよ!飛香!私じゃないの!)

「-別人になったみたい」

(やった…!)
私は時計を見直す。勝負終了残り数分。
(どうよ付喪神、さっさとー)
いつまでたっても私の視点は戻らない。身体は動かない。
(やってくれたな、これには僕も一本取られたよ、でもな)
時計は勝負の終了時間をあっさりと通過する。
「タイムオーバーだ」
『私』の身体でそう発音した。
(え、ちょっとインチキでしょう!飛香は中身を疑ったじゃない!)
「インチキじゃない、お前の妹は、僕が別人であることに気がつかなかったんだ」
(いや、ちゃんと指摘したじゃない、目の前の!飛香が-)
私は目線を目の前にいる飛香へと向ける。
飛香は薄っすらと微笑んでいる。
(…飛香じゃない?)
目の前の飛香が微笑みから一転、大きな笑い声を出す。
「あははははは、俺達の勝利だな」
妹の口からあり得ない言葉が飛び出す。
(…嘘でしょ)
『飛香』がにやりと笑う。
(…どういうことなの、説明しなさいよ)
「お姉ちゃん、今回は2つの勝負が同時進行だったんだよ」
飛香はウィンドブレーカーを脱ぐ。
「今日子ちゃんが、制服の僕が入れ替わってたのと同時に、飛香ちゃんは…」
そしてそのままジャージも脱ぎ捨て、先程見せた青の競泳水着姿になる。
「この競泳水着と入れ替わっているのさ!ぎゃはははは」
飛香が下品な笑い声を響かせる。
(そ…そんな。飛香が…)
「なので、いくら飛香ちゃんの身体が指摘しても無駄なんだよね。だって本人じゃないんだから」
「お姉ちゃんもひどいなあ、私が偽物だって気がつかないなんて」
…お互い指摘されることばっかり考えて、妹のこと、飛香のことを全く考えていなかった。
会話の途中で水着姿になったのも今思えば唐突感がある。
あれは…飛香が行った『命令』だったのか…。
私が、妹をちゃんと観察して、妹が偽物であると思えば、妹は元の身体に戻れたのだ。
(で、でもあの言葉遣いの、私の命令は…)
「あー。命令が終了した俺は、ジャージの上にさらにアウターを着ただろ?水着の飛香ちゃんには、声がほとんど聞こなくなったはずだぜ。聞かれてたらやばかったかもな」
「ああ、今日子ちゃん、いい命令だったぜ、結果は残念だったけどな」
「ぐっへっへ…、元に戻れなくて慌てる様子が楽しかっただろ?」
「まあなー」

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

「あー、終わった終わった、じゃー脱ぎますか」
「俺も。部屋で水着着てると、汗かいて、暑くてしょうがなかったんだよね」
もう用はないとばかりに妹のベッドの上に置かれる私。
「ほら、姉妹で仲良くしなよ」
『飛香』も着ていた水着を投げ捨てる。
身体に密着して引き伸ばす必要がなくなった競泳水着は、
着用者の汗を吸い込んだ状態で、しわくちゃになって私の上に投げ捨てられる。
(飛香…!飛香…!)
どれだけ強く念じても、妹の声が聴こえない。
逆に妹がどれだけ私に語りかけようとしていても、私には聴こえないのだろう。

「おい、いつまでも素っ裸でいるなよ」
「いいじゃない、お姉ちゃん、私達、姉妹なんだし」
「まったく…」
『私』はそういいながら小さな箱を持ってくる。
「着なくなった制服も、水着も、記念だからちゃんと倉庫に取っておこうね」
「そうそう、物は大切にしなきゃね」
(私達…ほんとうにこのままなの…?)
動けない私たちは一切抵抗することが叶わず、箱の中に収められてしまう。

「「じゃあね、私」」
そう言いながら『私』達が箱を閉じていく。
失われていく光の中、私が最後に見たのは『私』と『飛香』の笑顔。
私の身体、妹、家族、将来を全て奪われ、私たちは闇に閉じ込められた。永遠に。

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