2018/04/18

夜はもうひとりの魔法少女と

自分の背丈よりも高い杖を両手で掲げ、呪文を唱える。
一瞬の光とともに衣服が魔法少女のそれに変化する。ピンクのゴシックロリータ...春香が言うには甘ロリ系に属するドレスを身にまとった俺はビルの上までひとっ飛びする。



先程まで制限されていた思考はクリアになり、大学の授業内容も今ならはっきりと理解できる。
「口調はもとに戻ってるのかな...あーあー。私の名前は夏美...戻ってないみたい」
先程までの低学年のような幼い感じは抜けている。春香からかけられた制限は解除されているようだ。とはいえ見た目相応の口調になっただけだが。

「ま、落ち込んでばかりもいられないかな」
今日は街の中央にあるビルの屋上から瘴気を探すことにする。
瘴気は人間にとりつき凶暴化させる。その人間を助けて、活性化した瘴気を杖に貯めることが元の姿に戻るために必要な、魔法少女の仕事だ。

「!!」
ちょっと距離が遠いが瘴気の活性化を感じる。
俺は瘴気の元へ向かうためにビルからジャンプする。魔法少女になれば、身体能力が向上する。これぐらいの距離なら魔法を使うまでもなくすぐに到着するだろう。
暗い街の中をピンクの光が駆け抜ける。

「あ、あれ!?」
あと少しで現場につくところで、瘴気が霧散していく。
勘違いだったのか...?
最後に感じていた場所を見回る。
「うーんと、こっちかな...あっ」

床に倒れているのはくたびれたサラリーマン。それを見下ろすように立っている少女。
その少女は赤一色の服を身にまとっている。
自分のようなフリフリ衣装ではなく、上は赤いウェットスーツのように体にラインがぴっちり、下半身も赤いスパッツである。とはいえ、太ももがほとんど露出している短いスパッツだ。
そんな珍妙な服であったので、俺は直感で察する。同業だな、と。

「あら、あなた...魔法少女?」
こちらに気がついた少女は俺に向かって問いかける。
クソ獣が最後に言っていた次の適正者を探す、というセリフを思い出す。よくよく考えれば俺以外に魔法少女がいてもおかしくはない。

「そう...だけど」
隠す必要もないだろうと俺は肯定する。
「そ。まあ今回は私のほうが早かったみたいね」
少女は自身の杖をこちらに見せる。
そこにはすでに半分ほどの魔力が溜まっている。
「すごい...もうそんなに」
自分の杖をちらっと見る。1割溜まっているかいないかぐらいだ。
このベテランの魔法少女と組めれば、色々手助けをしてもらえるのではないか、と考える。
「あの、私最近魔法少女になったばかりで...もし良ければ色々教えてほしんですが...」
おずおずと聞いてみる。
「へえ、そうなんだ。じゃあ1つ大事なことを教えてあげるよ」
赤い少女は自身の赤い杖を構える。
構えた瞬間、その杖から少女と同じ、赤い光がこちらへ飛びかかる。
「へっ...」
急な展開に俺は回避することができずに光をまともに浴びてしまう。その衝撃で杖が手から離れ、俺は吹き飛ばされる。
「気をつけなよ、魔法少女はお互い敵同士だ」
赤い少女は俺が手放した杖に自身の杖を当てる。俺の杖に溜まっていた瘴気が吸い上げられていく。
「そ、そんな」
「瘴気ってのそんなに潤沢に集まるもんじゃないんだ。仲間ごっこなんてしてたら溜まるもんも溜まらない」
数に限りがある、集めきればイチ抜けできる。
「だから魔法少女はお互い見かけたら逃げるか、奪うか。どっちかなのさ」
吹き飛ばされた衝撃のダメージも収まり、俺はなんとか立ち上がる。瘴気をすべて取られる前に杖を取り戻さないと。
俺は飛びかかろうと全身に力を入れる。

「ああ、力まないほうがいいよ」
「へっ...何を言って....ってえええええ!?」
お腹が少し張ったような...と思った瞬間、自信の股間から温かい液体が溢れ出るように噴出する。
「え、え?わたし...まさか」
俺、漏らした?
力んだ身体は突然の放尿により弛緩してしまう。俺は慌てて太ももを閉じるが、おしっこはそれでも止まってくれない。
男と違い、少女の体は尿道が短く、一度出たモノを止めるすべがない。

「ふふ、ただの衝撃波なわけないでしょ」
空になった私の杖を踏みつけたまま、こちらをみる。
「力を尿に変換する魔法よ」
な、なにその気持ち悪い魔法。
「もちろん括約筋も例外じゃないのよ。なので我慢しようとするとそれも尿に変わるわけ」
「結果、あなたは我慢することができず、たまったそばから垂れ流しちゃうの」

おしっこを我慢止めようとすると、その力から尿が作られてしまうということか。
俺は察すると、閉じていた太ももを開き、自然体をとる。太ももからは温かい液体が伝ってくる。垂れ流し状態だ。

「あら、順応が早いわね。ま、私の"力を尿に"魔法は長続きしないから安心なさい」
最低な魔法のネーミングだ。
「また瘴気が溜まったら会いに来てくれてもいいわよ」
赤い少女はそういうと空高く飛び上がり一瞬にして見えなくなってしまった。

「...完全に敗北かな...」
俺はため息をつく。
不意をつかれたとはいえ、瘴気を全部奪われてしまったのは正直辛い。
とはいえ万全だったとしても果たしてこの魔法に対抗する術はあるのだろうか。
転がっている杖のところまで歩いただけでお腹に溜まっていくのを感じる。ーその瞬間に股間からおしっことして出てくる。
「うう、意識したら出ちゃう...」

力を入れずに、意識せずに家まで歩いて帰るのはやはり不可能で、自分の歩いたあとにはいくつもの水たまりが作られるのであった。
結局魔法が解けたのは戦闘から24時間たったあと。家に帰ってからも漏らし続ける俺を見て、春香にあれこれとからかわれたのは言うまでもない。



「夏美ちゃん、おむつつける?」
「つけない!!!!……んあっ」

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