男子生徒達がすれ違いざまにチラリと俺に視線を向けてくるのが分かる。
その視線は間違いなく俺の胸へと注がれている。
俺の視線に気がつくと、慌てて視線をそらし、小走りで去っていく。
…なぜこんなことに。 俺はため息をつく。
ため息に連動して、俺の胸にある大きな双丘が、揺れ動いた。
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
時間は朝までさかのぼる。
「やっぱあのコでしょ、陸上部の鍛えたあの体つきがたまらん」
「いや、水泳部のエース、水樹さんを忘れちゃいないか」
「まてまて…!」
朝練が終わった俺は、同じ部活仲間同士で、女子で誰が一番良いか、という話で盛り上がっていた。
スタイルがいい、髪型がよい、胸が大きい…性格が良い。
さまざまな角度から皆、思い思いに女子の名前を挙げていく。
「巨乳もやっぱり…外せないなー」
「C組の美奈ちゃんとか?」
「そうそう」
盛り上がる中、俺はふと窓から校門を覗く。
「…峯岸」
「ん?どうしたタツヤ…ああ、あいつか。峯岸は確かに巨乳だけどなー」
部活仲間も校門から校舎に歩いてくる峯岸亜依香に気がつく。
「身長が低すぎて幼い感じだよなー。なに、お前あーゆうのが好みなの?」
俺は慌てて否定する。
「いや、そんなんじゃねーよ。たまたま目に入っただけで」
峯岸亜依香は同じ学年どころか1,2学年…いや2つぐらい下の学校に通っていてもおかしくないぐらいの低身長である。
長い髪の毛と、運動が苦手だからか、透き通った白い肌から幼さが強調される。
だがその身長でも、世間から子供扱いされてない理由が1つある。
オーダーメイドで作ったと言われる小さいサイズの制服からははっきりと目立つ大きな胸である。
サイズは噂によるとカップサイズはサッカーリーグのそれより大きいとかなんとか。
「はいはい、タツヤはロリ巨乳がお好きと…」
俺は慌てて反論する。
「ちげーよ…まあ、興味がなくはないけど…」
「もっと正直に」
「興味あるけど…」
「もっと!」
「揉みたい!!」
「よろしい」
ギャハハと笑い出す仲間たち。
「あんな胸を強調してるとなー。どうせ寄せてあげてたりするんだろうけど」
「でもあんな身長が低いとなあ。犯罪っぽくね?」
「あーそう言われると確かに」
「見せつけすぎ、とか同じB組の女子からも言われてるらしいぜ」
「それやっかみじゃん」
窓際で大騒ぎする俺たち。
ふと、再び見下ろすと、校舎に入る直前の峯岸のじろりとした目と一瞬、合ったような気がした。
(…聞こえてた?)
いや、笑い声が聞こえただけだろう、とその時は思っていた。
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(-あれ、俺寝てた?)
午後の授業中、古典教師の言葉が子守唄となってしまっていたのか、
俺はいつのまにか机に突っ伏したように寝ていたことに気がつく。
頭が若干重たい気がする。
ぼんやりとした意識をあわてて覚醒させ、手元の教科書に目を落とす。
(あれ、数学…?)
目の前には数学の教科書。
視界を黒板に向けると教師が数式を羅列している。
授業をまたいで寝続けていたのだろうか…いや、そもそも今日、数学の授業はなかったはず。
ともかく、ノートを出さないと…と
机の中からノートを取り出そうとした俺は異変に気がつく。
手…が小さい…?いやそもそもこの俺の視界の下に入る盛り上がりはなんだ…?
来ている制服も袖がいつもの詰め襟ではない、
若干紫が入ったこの衣服は女子のセーラー服ではないのか。
「な、な…な!?」
思わず漏れ出た声が思った以上に高く、慌てて口を抑える。
「ん?どうしたー?なんかわからないところあったか?」
数学教師がこちらを見てくる。
俺はフルフルと首を振る。
首の後ろあたりで連動して何かが揺れる。(後から判明したがこれは自分の長い髪の毛だった)
「そうか、わからないところがあったらいつでも聞くんだぞ。わかったか-」
数学教師がこちらを見ながら、聞いたことがある、自分のものではない名前を出した。
「わかったか、峯岸」
その言葉と同時に授業終了のチャイムが鳴り響いた。
俺は自身に何が起きたか理解できないまま、教師は教室からでいった。
何から確認したら良いかわからず、まずは胸部の違和感を真っ先に確認する。
見下ろすと、学校で毎日見かけるセーラー服を自身が着ていることが分かる。
黒ラインが入った白いセーラーの襟。
胸元は大きな2つの膨らみがあり、セーラー服をぐっと持ち上げている。
(…こ、これってもしかして…お、おっぱい…)
そして巻きついているのはブラジャー…?
2つの固まりを大きく覆うようぴったりと張り付いている布地が感じられる。背中と肩からぐっと引っ張るように持ち上げられている。
存在しないはずの胸の部分に当たっている布の感触まで感じられ、悪戯にしては手が込みすぎている。
恐る恐る、直接胸を確かめようと手を伸ばそうとして、
はっと我に返り、周りを見回す。
幸い、誰もこちらを見ていることはなかった…がここで違和感に気がつく。
(…これ、隣のクラスじゃ)
見慣れたクラスメイトがいない。
よくよく見ればここが自身のいたA組ではなく、B組であることを理解する。
冷や汗がでる。
古典のはずの授業が数学に…
A組にいたはずなのにB組に。
いつの間にか着ているセーラー服に、小さな手。そして大きすぎる胸。
教師がこちらを見て言った、"峯岸"という名前。
ガタッと椅子から立ち上がる。
自身にくっついている大きな胸がそれに続くように大きく揺れ、俺は大きくバランスを崩しそうになるが、両手で机によりかかり、耐える。
(まさか、まさか…!)
周りの目を避けるように早足で廊下にでる。
(鏡、鏡…たしか水飲み場に)
いつもより廊下が広く、長く感じる。視点が低い。
歩幅も小さく、1歩1歩がもどかしい。
早足で歩くたびに揺れる髪。そして同じく揺れる胸に身体が振られそうになる。
足元が見えないので余計に危なかっしい。
(俺、スカート履いてる…!)
真下を見た時はその胸が邪魔で確認できなかったが、横から見えるプリーツのヒラヒラ揺れる布地は間違いなく女子のはいているソレだ。
女子の履くような白いソックスとローファーも確認できる。
ようやくたどり着いた鏡に、映っていたのは背の低い、胸が特徴的な女子…
「み…ねぎし?」
どうやら俺は"峯岸亜依香"に…なっているようだ。
「お、いたいた」
呆然としたまま鏡の前で立ち尽くしていた俺の背後から男の声が聞こえた。
聞いたことがあるような声だが、誰か思い出せない。
ゆっくり振り返ると、そこには"俺"が立っていた。
「お、お…俺…!?」
「おい、女の子が"俺"なんて言うなよ、みっともないだろ」
「お前・・・峯岸か!?」
"俺"はやれやれと言った感じでため息をつく。
「そうだよ、峯岸だよ」
「お前、一体何をしたんだ、俺に…!?」
さっさと戻せ、と"俺"に詰め寄る…が
(し、身長高っ)
頭2つから3つ分は違うのではないかという身長差で、
俺は自分の顔を見上げるような形になってしまう。
その様子を察した"俺"はフフンとあざ笑うような顔をする。
「今日の放課後、3Fの奥にある使ってない教室で待ってるから」
一方的に言いつけてくる。
「とりあえずそれまで、あなたは峯岸亜依香を演じてちょうだい」
上から見下され、身体がブルッっと震える。
(こ、この身体が…怖がってる?)
「バレたら…戻してあげないかなあ」
「そ、そんな」
トン、と肩を押される。
そんなに力を入れてないように見えたが、この身体にはそうでもなく、俺は2,3歩後ろへよろめく。
「じゃあね、"峯岸"さん♥」
「お、おい…!」
学校にチャイムが鳴り響く。
ソレに反応し、"俺"はさっと踵を返し、早い歩調でA組に向かっていく。
「ちなみに次、合同体育だから…急がないと知らないよ」
そのまま、A組の扉は閉められてしまった。
体育は散々だった。
体操服は男女の違いはないものの、大きな胸に着替えは戸惑ってしまった。
(幸い遅かったのでもう女子更衣室には誰もいなかった)
そして準備体操だけで軽く息が上がるこの身体で、バレーボールなどできるわけもなかった。
身体に筋肉というものが存在しないのではないかと言うぐらい力が入らず、さらに運動音痴なのか、思考と動作がワンテンポ遅れてしまうのだ。
サーブは相手側まで届かない、ボールが落ちた後にレシーブの腕が空振りする、トスをしようとするとボールが頭に当たる、頭上を超えていく。アタックはそもそもジャンプしてもネットの上に手が届かない。
そして全ての動作に対して、この大きな胸が何かと暴れてしまい、まともなプレイが不可能だった。最後には完全にチームの女子からはお荷物として扱われてしまい、
「峯岸さん、ちょっと休憩してなよ」
と体育で休んでいる女子のところへ追いやられてしまった。
元の"俺"は部活をやってレギュラーとして活躍しているというのに…。
(はぁ…はぁ…。なんなんだよ、この身体…くそっ)
ちょっと動いただけで完全に息があがってしまっている。
ちらりととなりのコートでは"俺"が大活躍をしていた。
自由自在に身体が動くのが楽しくて仕方がない、といった感じだ。
(俺の身体…戻りたい…なんで俺がこんな目に)
よほど普段運動していないのだろうか、少し動いただけで汗が滲んでくる。
…運動したくてもできない、というのが本当のところかもしれない。
「ちょっと、亜依香ちゃん」
「えっ、な、なに…?」
となりで体育を見学している女子から声をかけられる。
「はしたないよ…男子がちらちらみてる」
「えっ…あっ」
蒸し暑かったので体操服をばさばさと揺らしていたのだが、そのせいでお腹部分がちらちらと見えていたようだ。
胸をそれにあわせて大きく揺れていたに違いない。
こちらの視線に気がついた男子達が慌てて顔をそらすと自分のチームに応援を再開する。
「ほら…タオル使って?」
「あ、うん、ごめん」
胸の下にもじんわりと汗が溜まり、かゆみを感じる。
自分のタオルを受けとり、男子の視線から逃れるように後ろを向き、タオルで身体の汗を拭く。
(はやく体育終わらねえかな…)
この後、俺は着替えを周りの女子と一緒にすることになることを避け、
トイレに引きこもって、しばらくたってから更衣室へ戻った。
…もういやだ。
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そして冒頭に戻る。
放課後、部活動の喧騒から離れるように人気のない教室へ向かう。
歩くたびに揺れる胸が大分煩わしい。
肩にかかった紐が食い込んでいる感じもする。
峯岸の身体になったせいなのか、他者の視線に敏感になっているようだ。
胸部をチラ見されるたびにビクッっと身体が震える。
ガラガラ…
指定された教室の扉をあけ、中を覗き込む。
「……いない…?」
もしかして騙された?
このまま家に帰られていたらどうしよう、と不安が募る。
「やーごめんごめん、部活仲間に捕まっちゃってさー」
底抜けの明るい声。
それと同時にお尻がむんず、と掴まれるのを感じる。
「きゃっ、ちょっとやめっ…」
"俺"が俺のお尻を揉むように触っている、と気が付き、慌てて振りほどき離れる。
「やーやっぱり俺の身体、反応遅いよねえ。この身体使ってみて余計にそう感じるわ」
「お、俺の身体…返せよ」
「掴まれたときの反応可愛かったよー。何、女の子の気持ちになっちゃった?」
「話を…聞け!」
振りかぶって伸ばした右パンチは簡単に手首を掴まれて止められてしまう。
「あれれーいいのかなー。約束忘れちゃった?」
「何がだよ!」
「"私"を演じないと戻さないよ?って」
「うっ…」
ゆっくりと手首を離される。
「…で、"峯岸"さん、呼び出して何の用?」
「お、お前っが」
「ん?」
「ぐっ…あ、あなたが…呼んだんでしょ」
「んーまあ及第点かなー。"俺"のことはタツヤ君、って呼んでくれていいよ」
「…」
「はい、どうぞ」
俺は羞恥を覚えながらも、自分の顔に向かって、自分の名前を言う。
「タ、タツヤ君が呼んだんでしょ」
「あーそうだったそうだった」
わざとらしくそう答えると、教室の中へ入るよう誘導される。
「朝、さ。噂してたでしょ、私の事」
「…聞こえてたのか?」
乱雑に積まれていた椅子を2つ、床におろして"俺"がそこへ座る。
俺はすこし躊躇したが、もう片方の椅子に同じように腰掛ける。
「あなた達の声は思った以上にでかいってこと、認識したほうがいいね…でロリ巨乳がなんだって?」
「うっ…」
「揉みたかったんでしょ?いまはあなたの物だから好きなだけ揉んでいいのに」
「…ごめん」
"俺"がキョトンとすると、あははと笑い出す。
「いや、謝ってほしいわけじゃないよ。私も自分の身体、好きじゃなかったからね。満足に運動できないし、周りの視線はきついし、着られる服は限られるし」
それは今日の数時間だけで嫌というほど体感している。
「昨日見つけた本に買いてあった"夢を叶える魔術"みたいなのを半信半疑でやったんだけど、成功しちゃうとは思ってなくて。私は普通の身体になりたい、あなたは私の胸が揉みたい。お互いの願いが一致したわね」
こんな叶え方があってたまるか…!
「でも、今日、体育をやって初めて楽しい、って思えたわ。走っても全然痛くならないし、ボールはちゃんと飛んでくれるし、身体は思い通りに動くし。でね、ずっとこのままでもいいかなあって」
さらっと爆弾発言をする"俺"。
俺は椅子から立ち上がる。
「は…?何言ってんだよ、演じたら戻してくれるって約束だっただろ」
「そんなことは言ってない。演じなかったら戻さないよ、とは言ったけど、演じたら戻す、とは言ってない」
「そんな詐欺みたいな言い訳が…」
「あの段階では戻ろうとは思ってたし、あなたに騒がれるとちょっと面倒だなって思ったの。でも体育をやってみて、気が変わっちゃった」
「親や先生に言うぞ…!」
「何ていうの?信じてもらえると思う?"俺"はすっとぼけるけど」
絶句する俺。
だからさ、と続ける"俺"
「しばらくの間、"峯岸"として、代わりに生活してよ。飽きたら戻すからさ。あ、わかんないことあったらメッセージ送るから。じゃーね」
そういうと"俺"は椅子から立ち上がり、教室から出ていこうとする。
まて、冗談じゃない。
俺は回り込み、扉の前で大の字に立ちふさがる。
「今すぐ戻せ!それまでここからは出さないぞ!」
「その身体でなにができるの?」
「うっ…」
はるか頭上からジロリと見下される。
腕力で勝てるとは思えないが…。
「お、大声をだすぞ…」
「…ふーん。なるほど、考えるじゃない」
俺がいま"峯岸"として叫べば、立場が危うくなるのは"俺"の方だ。
客観的に見たら人のいない教室に無理矢理連れ込んでいるようにしか見えないはず。
「その後に身体が戻ったら、君の立場がないよ?」
「うっ…それでもだ!さあ、返せ」
「しょうがないなあ…えいっ」
一瞬何が起きたかわからなかったが、すぐに自分の胸部が"俺"の手に寄って鷲掴みにされていることに気がつく。
ぐにぐにと揉みしだかられる乳房は面白いぐらいに手に吸い付くように形を変える。
「……えっ、なにをっ…んっ…」
身体に一瞬電気が走ったかのような、ピクッと軽い痙攣が起きる。
つい出てしまった漏れるような色っぽい声に自分でも驚いてしまった。
慌てて広げた両手で、"俺"から身体の前を隠すようにして、身をよじって相手の手を振りほどく。
「すきありっ」
「え?あっ…」
少し見せた自分の背中に”俺"の手が伸び、ぐいっとブラジャーを引っ張られる。
"俺"が手を離すと、制服の下で、胸と密着していた布の間に空気が入る。
それと同時に感じられる胸部の開放感と、ぷるんと揺れる衝撃。
(…外れた!?)
制服の上からブラジャーを慌てて抑える。
「じゃーねー」
「あっ…ちょっとまって…!」
ブラジャーに気を取られている間に、"俺"はもう廊下へ出て行ってしまい、姿が見えなくなる。
「どどど、どうすんだこれ」
体育の時は触らないようにしていたので勝手がわからない。
記憶と知識を頼りに背中部分にフックみたいなものがあるはずだ、と手の感触を頼りに探るが、どうにも思ったようにはいかない。
(くっ…)
止めるのをあきらめ、廊下に飛び出す。"俺"が廊下の先を歩いているのが見えた。
追いかけなければいけない。俺はとにかく走り出す。
ぶるんっ
(痛っ!?)
体育の時以上に暴れる胸に痛みを感じてしまい、立ち止まる。
凶悪な重量を持つそれが思いっきり揺れすぎて痛みを感じる。
(あっ…)
"俺"の姿を見失ってしまった。
おそらくどこかで曲がったか、教室に入ったのだろうが…
ピロン♪
スカートのポケットに入った携帯が音とともに振動する。
通知をみると"俺"からだ。
ロックの解除方法がわからなかったが、"峯岸"の人差し指をセンサーにあてると、
問題なく認証が通り、メッセージアプリが立ち上がる。
学校のメッセージグループから1:1通知を行ったようだ。
タツヤ:うち、住所、ここだから。あなたの家の住所教えなさい。
メッセージと共にマップアプリへのリンクが張られる。
(ってもしかして、俺が峯岸の家に帰らないといけないのか…?)
ここで住所を教えないとどうなるか。
"俺"の身体では峯岸の家には戻れないだろう。
教えなければ、野宿する羽目になって根を上げて戻してくれるのではないか。
ピロン♪
タツヤ:もし教えてくれないなら、クラスの女子に手当たり次第泊めてくれないかってメッセージ送りまくるけど。
(ひぃっ…!ここですぅ…!)
慌てて自分の住所を送る。
これはまずい。自分の身体どころか社会的立場を人質に取られてしまっている。
校舎にチャイムが鳴り響く。
部活動をしていない生徒はもう外に出ないといけない時間だ。
(…と、とりあえずブラジャーを何とか直して…)
教室にそそくさと戻り、悪戦苦闘してなんとかブラジャーを再装着する。
どうにも収まりが悪い感じがするが、先ほどよりは全然マシだ。
「俺を追いかけて、家に行くしかないよな」
ピロン♪
タツヤ:ちなみに、家に来たら、絶対戻さないからね。
タツヤ:まずは私の妹が帰ってくる前に、家に帰って。もし妹に正体がバレたら戻してあげないからね。
…どうやら従うしか道はないようだ。
俺ははぁ、とため息をつく。
ずいぶんかわいい声になっちまったな、と思いつつ。