手数料を考え、なしにした。
キモい男と入れ替わったら入れ替わったで諦めるしかない。
「…出品」
私は震える手でスマホのボタンを押す。
完了、というメッセージと共に、出品中の画面に切り替わった。
「…あれ?」
出品したばかりなのに「購入済み」と出ている。
もう買われたのだろうか。
しかし体が変わった形跡はない…と思った瞬間私の脚がガクンと揺れる。
「うっ」
慌てて姿見を見ると、スカートから伸びる足が太く、短いものに変わっている。
160cm後半はあったであろう身長も、今は150cmぐらいにまで低くなっている。
胴はそのままなので短足胴長になってしまい、ひどく醜い。
その胴もしばらくするとブルブルとした震えがくる。
「うう苦しい…」
一瞬の息苦しさと共に、上半身から肉が溢れ出す。
来ていた制服もぱつんぱつんになってしまい、慌てて脱ぎ捨てる。
鏡に映った上半身はおなかから肉があふれる、その割に胸は小さいという見事な三角形の体型であった。
身長はさらに低くなり140cmぐらいになってしまう。
その姿に驚愕していると腕も太く、短いものに変わる。
あっというまに首から下が他人のものと入れ替えられてしまった。
「ふぅ、ふぅ」
私は息も切れ切れ姿見から離れ、椅子に座る。
身長も胸も小学生低学年のようになったのに、体重は全く変わってないどころか増えたような感じがする。
筋肉も交換されてしまったのか、動くのすら億劫だ。
「この体型…もしかして伊集院さん?」
お金持ちなのにチビで太ってていじめられていた伊集院さんを思い浮かべる。
着替えの時にちらっと見えた体型はこんな感じだったような気もする。
そのとき玄関のインターホンがなる。
「佐々木さーん」
この声は…
「伊集院さん?」
私はドアを開ける。目の前には背の高い、すらっとした女子高生が立っていた。
「最近学校にいらっしゃらないので、どうしたのかしらと思いまして」
心配しているような口ぶりだがその顔はうっすらと笑みを浮かべている。
「あら、ご病気かしら?そんなお太りになられて…」
「…あんたがやったんでしょ」
私は伊集院さんを睨む。
「レンタルしたのはあなたなので、やった、と言われるのは心外ですわね。私は借りただけですわ」
「ぐっ…」
私が登録したのを知っていた…?
「はい、このパーツレンタルサービス、私の父の会社ですのよ」
「佐々木さんがうちへ登録したことは、すぐわかりましたので、全身を登録する日を待っていたのです」
そんな…
「そのお身体はどうです?」
「…最悪よ」
「まあひどい」
わざとらしく飽きれた仕草をする。
「この身体は最高ですわ、ありがとうございます」
どこまでも走れそう、と自身の身体を眺めまわす。
「ただ一つだけ不満がありまして」
「…なによ、顔はレンタルしないわよ」
「ふふ、顔を交換してしまうと、私ではなくなってしまいますから、そこはいらないですわ」
伊集院さんは私の手からスマホを奪い取ると操作を始める。
「ちょ、返して…!」
私は思い切り手を伸ばすが、彼女のスマホを持つ手には届かない。
「これでいいですわ、はい、ぽちっと」
ぶるん、という音がしたかと思うと私の視界に自分の頬肉が目に入る。
「えっ、顔が重たく…」
両手で顔を触ると全体的に肉が乗っていて、顔幅が広がって見える。
「お顔のお肉だけレンタルさせていただきましたわ、あーすっきり」
伊集院さんは今の体にふさわしいすらっとした顔つきに、
私は…
「ふふ、ずんぐりむっくりって言葉がぴったりですわね」
「うう…」
口の中も狭い感じがして喋りにくくなってしまった気がする。
「ついでにレンタル日数も3年にさせていただきましたわ」
「え、うそでしょ…!」
「ご卒業まで、お身体交換してすごせば、借金が返せるんですよ、いいじゃないですか」
「こ、こんな姿いやよ、学校へ行けない…」
「ああ、そうだ私の来ていた制服とお洋服、差し上げますわ。遠慮しなくていいんですよピッタリな服、お持ちじゃないでしょうから」
では、というと伊集院さんは私の身体を持って、出て行ってしまった。
残された私はそれを眺めるしかなかった。
0 件のコメント:
コメントを投稿