2023/06/16

Google Domainsのサービス終了に伴う当ドメインの失効予定のお知らせ

https://novel.dnstory.net/
https://artifact.dnstory.net/

本ブログおよび付随サービスが運用されているドメイン「dnstory.net」はGoogle社のGoogle Domainsで運用されております。
Google Domainsのサービス終了・運営移管後、ドメインの契約延長の予定はありません。
そのため、ドメイン失効後は本ドメインでのアクセスができなくなります。

novel-danna-story.blogspot.com

ドメイン失効後も上記のアドレスで本ブログにアクセス可能かもしれませんが、
設定ができるかわかりませんので予めご了承いただけますと幸いです。
追記(2023/06/16 15:00) 本ドメインの失効予定は2024年3月30日です。

2021/01/03

入れ替わりシチュ2本


1 「こんにちわ、朝陽先輩。遅かったですね」 「……お疲れ様です…"先輩"」 「こらこら、外では君が先輩で僕が後輩だよ」 放課後の文芸部の部室で2人きり。 ニコリ、とほほえむ"自分"の笑顔を見てこめかみを抑える。 「…いいじゃないですか。誰も来ていないんですし…。っていうかなんでそんなに慣れちゃってるんですか」 「いやいや、最初は悲観していたがよくよく考えたら何も問題ないな、と思ってね」 僕、霧雨太一は文化部所属の男子高校生だった。 昨日の部室の大掃除中に脚立から足を滑らせた部長の日向朝陽先輩の下敷きとなり…気が付けば身体が入れ替わっていたのだ。 今日1日はなんとか日向朝陽としてやり過ごせたのだが…。 (いや、やり過ごせてないか。授業全然わからなかったし) というか、いま先輩は何て言った?問題ない? 「え?も、問題ない?」 「そうだ。私にとって女性というのは枷でしかなかったからね。私の夢は世界を旅することなんだが…」 女性であることで危険にさらされることはあり、国によっては宗教による制限、さらに身体は1月に1回不調になる…とつらつらと述べられた。 「え、つまり先輩は戻る気がない、ってことですか?今日は戻る方法を探そう、という流れだったと思うんですけど」 「そのつもりだが…君は嫌なのかな?」 「そ、そりゃそうに決まってるでしょう?」 「そうなのか、君は私に好意を寄せてくれていると思っていたのだが」 「…そうですけど。……だ、だからといって身体だけ寄こされてもこまります」 目の前の自分は首をかしげる。 なにか行き違いがある、みたいな表情だ。 「何を言っているんだ。私も君のことは少なからず好意を持っているんだよ。こうなった以上、君のことは一生面倒を見る気でいるよ」 「なっー」 「不便な身体を押し付けてしまったことには変わりがないからね」 両腕をつかまれ、まじめな顔でプロポーズされた。 顔がカッと熱くなる。 「な、なー」 「こちらとしては結婚しても構わないと思っているが、君がやりたいことがあるならそれを最大限サポートしよう。……女性に厳しい職業が夢だったのであればすまない、としかいいようがないのだが。それにー」 「そ、そ、それに?」 ムニッと慣れない感触が胸から伝わってくる。 視線を下げてみれば、制服の上から握るように置かれた手。 「もうすでにいろいろ楽しんでいるようだし…?」 おそらく僕の顔は真っ赤になっているのは間違いないだろう。 「な、なにを…言っているのか…」 「おや、私の自慢の1つがこの胸なのだが。昨日触っていないのかい?」 「………………………触ってないです」 「君は嘘を付くのが下手だね。私の身体を穢してしまった責任は取ってほしいかなぁ?」 自分の顔が近づいてくる。 僕は何も考えられなくなり、目をキュっと瞑った。 ーーー 2 「キヨヒコ。寒そうだね?」 「…おう、フタバ。ものすごく寒い。足が寒い」 「タイツ履いてんじゃん。あったかいでしょ?」 「こんなの薄いので満足できるわけねえだろ。そもそもスカートだってほとんど外気入ってくるし…女子はみんな文句言った方がいいぞこれ」 俺と入れ替わったフタバはニヤニヤしている。 女の子って大変でしょ、と言わんばかりの笑顔だ。 「ジャージはいていいか?」 「ダメ。私にズボラなイメージを付けないで」 フタバにぐいっと引っ張られ、背後から抱きしめられる恰好になる。 ペタペタとお腹周りを触ってくるフタバ。 傍から見たらカップルがイチャイチャしているだけに見えるだろう。 「おい、やめろよ」 「うんうん、ちゃんとウォーマーつけてお腹は暖かくしてるね。髪の毛も…ちゃんと手入れしてるし」 クンクンとにおいをかいでくるフタバ。 むず痒すぎる。思い切って離れようとするが、片手で抱え込まれてしまってされるがままの状態だ。 視界の端、車道をはさんで反対側にフタバと俺のクラスメイトがこちらを見ているのが確認できた。 「どう?女の子が大変だって身に染みた?」 「ま、まあ。身だしなみは男の数倍時間をかけているんだなってわかったよ。女子同士での品評会みたいな会話もこりごりだ」 事の発端は女はいいよな、男に比べて…というよくある会話だった。 ヒートアップしたフタバが変な骨董品レベルの本を使ってお互いの身体を入れ替えてしまったのだ。 「…で、いつ戻してくれるんだよ」 「んー、あと数日後かな。女子の一番大変なこと、教えてあげる」

長い間放置されて「命」を持ったマネキン2体とカップル

 「美冬のやつ、なんでこんなところに…」


スマホに届いていたのは俺の彼女、美冬からのメッセージだった。

部室棟の端にある演劇部の倉庫、そこで待っている、という内容だった。

そんな突拍子もないことをする彼女ではなかったはず…どちらかというと優等生で、恋人としての付き合いも節度がある…悪く言えば遅々として関係が進まないようなもどかしさもあるそんな感じだ。


期末テスト前ということもあり、部活動は一切行われておらず、人の気配はまったくせず静まり返った廊下を進む。

ちょっとだけ深呼吸をして倉庫となっている教室の扉に手をかける。

鍵はかかっていなかった。少しだけ音を立てながら扉が開いた。


「美冬」

「あ、やっと来てくれた。来なかったらどうしようかなーって思ってたよ」


窓際にある丸椅子に座っていた美冬はニコリ、と笑う。

真面目で通っている、学校では決してしない無邪気な笑顔。

お互いの家で勉強しているときとか、デートしているときとか。

そのときにしか見せない笑顔だった。


そんな笑顔を学校で見れることに俺は内心新鮮さと嬉しさを感じつつも、言いようのない、小さな不安は拭えなかった。


「急にどうしたんだ?鍵はどうやって?…なぜここに?」

「んー?演劇部のお友達に借りたんだよ。…たまには学校でもお話したいなって」

「………」


2人が付き合っていることはクラスメイトには言っていない。

登下校を一緒にすることはないし、クラスも違うので今のところはバレていない。公にするとからかわれるし、浮ついてしまうからと言って秘密にしようと言ってきたのは美冬なのだが。


「ね、そこ座って」


美冬が立ち上がり、大道具のソファへ向かう。

俺は頭をかきつつ、扉をしっかりと閉めてからソファへ。


多少…ホコリ臭い部屋を見回せば演劇で使うのであろう大道具や小道具が転がっている何種類ものカーテン、机、椅子、背景。

中には壊れてしまって処分待ちなのか放置されているのかわからない家具も転がっている。


ソファに腰を下ろす。

美冬も俺に密着するように座ると、俺の肩に頭を載せて体重をこちらへ預けてきた。彼女の小さな身体の感触と、心地よい重みを感じる。


俺の膝に彼女の手が載せられた。

学生ズボンの上から軽く触れつながら、きゅっと掴んでくる。

家でも、どちらかと言えば奥手で美冬から積極的にこうしたスキンシップをとってくることはあまりなかった気がする。


俺も健全な少年であり、もちろんそういった事をしたくないというわけではなく、どちらかと言えば興味があるほうだ。…だがコレはお互いの同意があってこそであり、俺は彼女の望むように付き合ってきたのだが。


「…なあ。本当にどうしたんだ?」

「別に…たまにはいいかなって」

「何か悩みでもあるのか?その…ご両親と喧嘩したとか」

「もう!じれったいなあ」


ぐいっと顔を近づけてくる美冬。

ふわり、とシャンプーの香りが漂ってきて俺の心臓の高鳴りは激しくなっていく。

これは、キス…できるのか?

美冬がこちらを向いたまますっと目を閉じていく。

艷やかな唇はほんの少しだけ開いており、俺がすることを待っている、そんな様子だ…が…。


ふと、なにかが気になった。

なんだろう、誰かに見られているようなそんな感覚。

どこかから、人の視線を感じるような。


「………?」


ふと、ソファの真正面、どこかしら壊れている小道具が積み重なった山の前にマネキンが目に入った。

マネキンを立たせる土台は割れてしまっており、立たせることができないようで粗大ゴミのように横たわっている。

何も衣服を身につけていないマネキンは日光によってその表面は紫外線焼けしており、いつから教室に存在しているのか、わからないほど古く感じられた。


なぜ気になったのか、といえばそのマネキンの顔…といっても無機質で滑らかな、目も鼻も口の位置だけがかろうじてわかるその凹凸が、はっきりとこっちを見据えていたからだった。


先ほど感じた視線はコレではないか、と思わせるほどにー


「ねえ、もう!待ってるんだけど…?」


苛立った感じで美冬がこちらを見ていた。


「あ、ああ…ごめん」


チュッと水分を含んだ音。

美冬は我慢できなかったのか、ほうけていた俺の頬に軽く口づけをする。


「これ、気になる?」


ソファから立ち上がり、俺が見ていたマネキンの前へ歩いてく美冬。


「いや、気になるというか…いろんな小道具があるなって見ていただけで」

「そうなの。確かに色々あるよね…この学校の演劇部は創立当初からあるみたいだし」


美冬が足元に転がっているマネキンを、スカートから伸びる綺麗な足でコツン、と蹴った。

バランスを失い、横向けでこちらを見ていたマネキンがバタン、と仰向けに転がった。


「おいおい、他人の部室の道具を荒く扱ったら駄目だろ」

「ーいいのよ。ここに積まれているのはそんな、十何年も使われることなく、捨てられることなく。誰も気にすることのないゴミの山なんだから」

「…詳しいな?」

「って演劇部の子が言ってたから」

「それでも蹴ったりしたらかわいそうだろ?」

「かわいそう、かな。そう思う?」

「…まあ」

「そっか。例えばこのもう1つのマネキンがあるんだけど」


美冬は部屋の隅に置かれているマネキンを指差す。

まだ使われているのだろうか、魔女の衣装を着せられて佇んでいるが。


「…いつか使うかもってずっと置かれているの。こんな埃っぽい衣装…もう誰も着ないのにね」


よくよく見れば表面はうっすらとホコリにまみれており、ところどころ虫食いのような穴があいていた。


「誰にも見向きをされず…ね?見てあげて」

「見てあげ…る?」

「ええ。ほら、マネキンにも表情があるのよ」


俺は美冬に引っ張られてマネキンの前に立たされる。

表情…といっても眼球や口があるわけでもないただのマネキンにそんなー。




その後、僕は美冬を強く抱き寄せ、彼女の唇を強く奪い、久しぶりの感覚を楽しんだあと、その部室を後にした。

2020/08/11

寝るたびに何かが書き換えられていく呪い(1-3)

 なんだよこれ。

ある朝、洗面台の前に立った俺の目に写ったのは
昨夜と全く違う髪型をした俺だった。

肩まで伸びた髪の毛。
耳は当然のように覆い隠され、頬の輪郭を隠すほどに伸びた髪の毛は揺れると軽く触れてくすぐったい。
前髪はまっすぐ切りそろえられてぱっつんになっている。
髪の毛の質もツンツンの硬目だったはずの髪の毛は、細くサラサラの流れるような髪質に変わっていた。

まるでこれじゃあ女の子みたいな…。
とにかくこんな髪型では学校にいくわけにはいかない。
まわりから笑われてしまう。

俺はキッチンばさみを持ってきてバッサリと落とそうとするが…。

「な…なんだ?これ?」

まるでハサミが駄目になってしまったのかと思うぐらいに髪の毛が切れない。
バリカンを持ち出してみるが結果は同じだった。
見た目や触り心地は髪の毛そのものなのに、それを取り除こうとすることは一切できなかったのだ。

「おにい?さっきから何バタバタしてんの?」
「わ、うわ、見るなよ!」

慌てて髪の毛を手で隠そうとするが、そんな俺を見ても妹の亜紀は驚くことなく、訝しげな顔をするだけだった。

「…?なにしてんの、おにい?髪型決まらないん?」
「え…あ…?」

呆然として手をおろし、その髪型をあらわにしたが、亜紀の表情が変わることはない。まるでこの髪型が当然、いつもの日常と言わんばかりの態度だ。
そして気がつく。

(この髪型、亜紀とそっくりじゃないか)

髪型だけ瓜二つになっていることに気がついた。

「亜紀…。俺の髪…変だよな?」
「はぁ…?いつもどおりじゃん、なにいってんのさ」
「…そ、そうか…」
「早く場所交代してよね。おにいとちがって私は時間かかるんだからー」

そういいながら亜紀はリビングの方へ戻っていった。
俺は再度、恐る恐る鏡を覗くがそこにはやはりおかしな髪型をした自分が立っているのだった。

俺の髪型を見ても父親も母親も、何も言わない。
もしかして、家族全員、俺の髪型を普通だと思っているのか?

学校へ行っても問題ないのかもしれない、と思ったがさすがにその勇気は出せない…というかそもそも切ることもできない髪の毛に恐怖を覚えた俺は、体調不良を母親に伝え、休むことにした。

特に疲れていなくても、眠くなくても横になっていれば自然に睡魔がやってくる。
俺の意識はゆっくりと沈んでいった。

ーーー

…どこだここ?
あたり一面真っ暗闇。
光が一切っ見えないなか、自分の体だけははっきりと見ることができる。
夢の中だと言うのに髪の毛は…長くなったままだった。

「なんだよここ」

歩こうにも1歩先に道があるのかもわからない。
動くことを躊躇っていると…。

『おや、早いですね…』

聞いたことのない声が響いてきた。

『ま、契約は契約です。ここに来てしまった以上は遂行させていただきますが…』
「な、なんだよ。誰だよお前」
『おや、覚えていらっしゃらないのですか…。昨日も散々説明したでしょうに』
「…き、昨日…?」
『ああ、そうでした。人というものは夢を忘れやすく出来ているのでしたね。仕方ありません、今から説明することは忘れないようにしてあげましょう』
「は……?」
『依頼主様のご依頼により、あなたはここに来るたびに1枚カードを引く必要があります。そのカードに書かれている物が、あなたに降りかかります』
「い、依頼主?カード…?」
『では、どうぞ』

眼の前にカードが10枚ぐらいババ抜きのときのように扇状になってスッと現れた。

『引かない限りあなたは目が覚めることはありません。…この世界が気に入ったのならそれでも構いませんが』
「…まて、この髪の毛になったのは…このカードのせいだというのか?」
『ええ、あなたは昨日ここでその髪型になるカードをお引きになられました』
「こんな、女みたいな…」
『いえいえ、世間からみたら童顔気味のあなたにはお似合いの髪型だと思いますよ』
「…冗談じゃないぞ、依頼主ってやつのせいか…。誰だよ」
『昨日も申し上げましたが、それは教えられません。相当恨まれているようでしたがね』

そんなもの、心当たりがない。

『さて、カードをお引きください。前回みたいに数時間粘られても結果は同じですよ』

それきり、声は一切聞こえなくなってしまった。
残されたのは俺と、カードのみ。

………
……


どれくらい立っただろか。
暗闇の、音のない世界では時間の経過がわからない。
夢の中だというのに、どれだけ自分に痛みを与えてみても目が覚める様子はない。

ゲームの選択肢のように、選択するまで世界が止まっている、そんな感じだ。

「くそっ…」

俺は仕方なくカードに手を伸ばし、震える手で1枚引き抜く。

『衣服、を引かれましたか。ではそのとおりに』
「お、おい、待てー」

世界が黒から白に塗りつぶされていく。
俺もカードも、その光に覆い隠されてー。

「はっ…?」

目を覚ます。
いつもの天井、いつもの部屋だ。
風邪のときのように身体が汗だくになっていた。

いやにはっきりと覚えている夢だった。
俺はむくり、と起き上がる。

「衣服…ってこういうことかよ」

見下ろした視界に、見慣れない柄の布地が目に入った。
今日は制服に着替えなかったので、寝間着のまま寝ていたはず。
なのにいやにすべすべとした素材の服、全身を1枚の布地ですっぽり覆うような長い丈…。
スウェットの上下は見る影もなく、ワンピースのネグリジェに変化していたのだった。

「おいおい…」

慌てて立ち上がりクローゼットを開け放つ。
どちらかというと白や黒のモノトーンで揃えていた俺のシャツやズボンは跡形もなく消え去っており、そこにあったのは色とりどりのひらひらとした布地の服や、スカートそして短すぎるショートパンツばかり。

一番端にかかっていたはずの黒の学生服は…紺色のセーラー服に置き換えられていた。

慌てて引き出しを引っ張る。
靴下は無難なものばかりだったはずなのに、どれもワンポイントやフリル、折返しがついた可愛らしいものばかりに。
そして下着は…すべて女物のショーツに変化していた。

「…ん…?」

そこでようやく、胸の周りを締め付ける違和感に気がつく。
なにかピッタリとしたものが張り付いているような感覚。
脇の下あたりに触れている布地がくすぐったい。

「まじかよ…」

男がつけるはずのない下着、ブラジャーがそこにはあった。
ぴったりと俺の身体にフィットしているサイズのものが。
当然だがカップ部分には空間ができていて、スカスカである。

履いていたトランクスも、当然とばかりにピッタリとフィットした女性者のデザインに変わっていた。女性では想定していない股間の膨らみのせいで、布地が変に伸びてしまっている。

『依頼主様のご依頼により、あなたはここに来るたびに1枚カードを引く必要があります。そのカードに書かれている物が、あなたに降りかかります』

謎の声の言っていたことを思い出す。
ここに来るたび…?
…これで、終わりじゃないのか。まさか、そんな。
 

2020/08/05

短編

「きゃっ、ごめんなさいっ…すいません、急いでるのでっ…!」
混雑した駅。飛び出してきた誰かが俺にぶつかった。
痛みも特になかったが、文句の一つでも言ってやろうと視線を向けると、そこには慌てて去っていく背広姿の男。その光景に違和感を覚え、俺は罵声を飲み込んだ。

…なんだ?なにか…おかしい。
駅ってこんなに広かったか?
っていうか俺は会社に行く途中でスーツじゃなかったか…?
なんで普通の服を…_?
ってなんだこの服装……!?

俺は慌ててトイレへ駆け込み、その姿を鏡に写す。
「……え、誰だよ、これ…」
そこにいるのは、ポカンと口を開けたまま、こちらを呆然と見つめる少女だった。




「まいったな…これからどうすればいいんだ?」

恐らくぶつかった後に走り去っていった背広姿の男…背中からしか見ていないが、あれが「俺」だったのだ。
おそらくこの身体の「少女」は入れ替わってしまったことに気が付かず、俺の身体で何処かへ行ってしまったのだ。

「入れ替わり、だなんてそんなことが」

映画や小説じゃあるまいし、と思いたくもなるがこの小さな手のひらが現実を突きつけてくる。

「…くそ、頼りねえなこの身体」

何もかもが小さい。筋肉も最小限しかついておらず、腰に手を当ててみればびっくりするほど細い身体であることを自覚させられる。
それに生まれてこの方、こんなに髪を長くしたことはない。動くたびに左右で揺れる束ねた毛がうざったい。



駅前で待っていれば自分の身体の異変に気がついた「少女」が戻ってくるかもしれない。
だが、それには困ったことが1つ。
今日は平日、普通であれば学校があるはずの時間…俺の昔の記憶が正しければ授業が始まっていてもおかしくない。
…つまり、俺がここにいるというのは…

「あー、あなた?ちょっといいかな」

補導員の手帳を見せてくるおばさんが近寄ってきた。
…やばい。
俺はこの身体のことを何も知らない。家の住所も、通っている学校も…そもそも名前も。
俺はジリジリと後ずさりをし、タイミングを見て補導員に背を向けて走り出した。

(続かない)

2020/07/27

挿絵を頂きました!



当小説を翻訳していただいている上弦( @crensentmoon )さんより挿絵をいただきましたので、追加で記載しました。
翻訳先のリンクと合わせて紹介させていただきます。
挿絵がついた彼女たちのお話を再び読んだら面白さ倍増ですね。



彼氏が親友と入れ替わった話

「楓、一緒に帰りましょ」
「え、あ、うん。ちょっとまってて…み、美琴ちゃん」

放課後、HRが終わった途端にすぐ飛び込んできた美琴。
どうやら隣のクラスは早めに終わっていたらしい。

「おー、美琴さん。最近は前にもまして仲がいいね」
「えへへ、そうでしょ!」
「まるで恋人みたい」
「え?そうみえる?あはは」

クラスメイトの女子が美琴に話しかけてくる。
美琴の明るい性格ゆえに顔は広く、隣のクラスでも快く受け入れられている。

「ほら、早く早く」

美琴に手を引っ張られ、私はバランスを崩しながらも彼女の後についてゆく。
校門を出て二人きりになった途端、美琴は右手を絡めるように握ってくる。

「ちょ、ちょっと…」
「いいじゃない。昔はちゃんと手をつないで帰ってたのに」
「いや、あれは…」

美琴は意地悪そうな顔をする。
耳元にそっと口を近づけ、囁く。

「ー大丈夫、周りから見たら仲の良い女友達同士にしか見えないよ。キヨヒコ」
「お、おい…その名前は外では言わない約束ー」

右手にぎゅっと力を込められ、口ごもる。
しかたなく"俺"はその手を軽く握り返し、並んで帰り道を歩くことにした。

事件は数ヶ月前に起きた。
俺、キヨヒコと恋人の美琴、そして美琴の親友の楓。
3人で帰宅途中に俺と楓が事故に巻き込まれたのだ。
目を覚ました時、俺はと楓は病院で包帯を巻かれてベッドに横になっていた。
お互いの身体が、入れ替わった状態で。

ーーー

「調子はどう?楓」

俺…というか楓の身体には外傷はほとんどなく、すぐ退院となったのだが、一方の俺の身体は骨折がひどく一部は内臓にもダメージがあったため、まだ入院したままである。
月、水、金曜日にお見舞いに行くのが俺たちの今の日課だ。

「んー、大丈夫かな。元気だよ」

ニコリ、と俺の身体で笑う楓。
入れ替わった直後は憔悴しきっていた彼女も、今の状況をどうにか受け入れ、治療に専念している。

「"私"はちゃんと"私"をしてるのかな?キヨヒコ?」
「お…おう。大丈夫…だと思う、な。美琴」
「どうかなー。今日も足閉じて座るの忘れてたしなあ」
「…それは言わないって約束じゃなかったか」

入れ替わりのことは3人の秘密にしている。
これを公にすれば両親にさらなる心配をさせてしまうからだ。
俺の身体が回復次第、もとに戻る方法をなんとか探そうという算段。

…つまりそれまで"楓"として登校しなくてはいけなくなった俺は、十何年間の"男"としての生活を一時的に諦め、今時の女子高生というよくわからない生き方を強制させられているのだった。

「あはは…美琴ちゃんがいてくれて助かった、ほんと」
「それな…。フォローされまくりだよ」

男のガサツな生活では成り立たない女の子としての生活は、美琴がいなければ早々に破綻していただろう。
朝起きてからのやることや、お風呂での作業は男だった頃と比べると地獄のようにやることが多いし、1つ1つに丁寧さを求められる。

「まさか化粧する日が来るとは思わなかったよ…さすがに美琴にやってもらってるけど」
「あ、ほんとだ。上手いじゃない?」

じっと顔を見つめてくる楓。
鏡でもないのに"俺"の顔が目の前にあるというのは不思議な気分になるのと同時に、ちょっとドキドキする。

「うんうん、楓がすっぴんで学校行く、なんてちょっと嫌だからね」
「美琴ちゃんには感謝感謝、だよ」
「もとに戻ったときの為にちゃんと楓のイメージはできるだけ維持しとかないとな…って」

3人は幼馴染ではあるが、地味で目立たない俺や、活発ではあるが運動系の部活所属で着飾らない美琴と違って、楓はお洒落に人一倍の気を使っていた。
スカートの裾が変に折り目がつかないように座ったり…、あ、当たり前だが今の俺は女子の制服…楓が今まで着ていた制服をその身につけている。

「もうすぐリハビリが始まるし、それが終わったら退院だよ」
「…そうなんだ。おめでとう…っていうのもなんか変だよね」

楓と美琴が笑い合う。
俺は苦笑いをするしかない。本来であれば楓はもう学校へ通っているはずなのだから。

「じゃあ、今日は帰るね」
「うん、ありがとう」

楓に別れを告げて俺たちは病院をあとにする。

「…」

この状況になってから俺たち3人が揃っている時に敢えてしない会話があった。それは美琴と俺の仲のこと。
少し前ならどこどこへ行っただの、こんなことをしたとかしてたんだけど。

「楓のやつ、気がついてるのかな」
「…気にし過ぎだって」

ぎゅっと美琴の手が強く握られる。
身体は女になってしまったけど、美琴が好きだという気持ちは変わらないし、美琴も「外見が誰だろうと、キヨヒコが好き」と言ってくれた。
俺と美琴はその後、会話を交わすことなく当たり前のように美琴の家ヘ向い、彼女の部屋へ行く。
これからすることは楓にはとても言うことができない。

「ちゃんと私の言う通り、着てきた?」
「う…うん」

おずおずと制服を脱ぎ、その下に着ているシャツも脱ぐ。
楓がここにいたらなんて思うだろうか…とても見せられない。
楓の手入れが行き届いた肌が露となる。
美琴が買ってきてくれた黒をベースとした少し大人っぽいデザインの上下おそろいの下着。
さすがに恥ずかしくなってすこし隠そうとする姿勢になる。

「うんうん、よろしい」

美琴がニッコリ笑うと、同じように制服を脱ぐ。

「え…」
「えへへ、どうかな」
「どうって」

美琴が着ていたのは黒の下着。
というか今、俺が身につけているものとサイズは違いの全く同じものだった。

「ペアルックー」
「………」

俺は恥ずかしくなってしまって顔を背ける。
そんな俺の肩を美琴はぐっと押して、二人倒れ込むようにベッドへ。
女同士になってしまった今、運動部の彼女の力には抗うことができない。
美琴に両手を抑え込まれて、その肢体をじっと眺められている。

「…なんだよ」
「なにって。期待してるくせに」
「…楓の身体なんだぞ」
「もうそのセリフも何回も聞いた。楓もわかってくれてるって」
「………」

すっと美琴の顔が近寄ってくる。
普段であれば俺が主導権を握っているはずなのに、今は美琴が積極的にしてくる状況だ。
抵抗するすべがない俺は、瞳を閉じてその口づけを受け入れる。
唇と唇が触れ合ったかと思うと、ニュっと舌が口内へ侵入してくる。
そしてツンツン、と歯に軽いノック。
仕方なく隙間を開けるとそこから待ってましたとばかりに俺の舌に絡み合い始める。
少し前までは小さな可愛い舌だったのに、この身体になってからというもの、その舌は、自分のものと同じかそれ以上の大きさに感じる。

(んっ…)

そしてキスをされるだけで体中が火照っていくのは俺の身体では、なかった症状だった。血流がめぐり、ピリピリとすごい弱い電流が全身を覆っていく。
長い長いキスが終わると美琴は馬乗りのなったままこちらを見下ろす。

「はぁ…はぁ…」
「んふ、すっかり出来上がってるねー。"カエデ”」
「俺は…キヨヒコだよ」
「私の知ってるキヨヒコはこんなものぶら下げてたかなあ」

ムニュっとそのふくよかな双丘に手が伸びる。

「あんっ…」
「ほーら、その喘ぎ声のどこがキヨヒコなのよ」

この身体でこうしているとき、美琴はとても意地悪になる。
背中に手を回され、ホックを外されるとそこには美琴より大きな胸が現れる。

「まったく。彼女の胸より大きい彼氏なんて…ってもう出来上がってるじゃない」

あは、と笑う美琴。
ピンと大きく突き出た乳首が、美琴の前戯にどれだけ反応しているかを素直に伝えてしまっていた。

「うう…」

恥ずかしさと、楓への申し訳無さが心にのしかかるがそれ以上に、美琴と愛し合いたい、受け入れたいという気持ちが勝ってしまい、脳が何も考えられなくなる。

美琴がショーツの方へ手をのばす。
俺は引っかからないように、軽く腰を浮かせた。

………
……


ーーー

「ーって感じかなー」
「ふーん。本当にオンナを感じちゃってるね、キヨヒコ」

アハハ、という笑い声が病室を満たす。

今日は火曜日。
私が部活を遅くまでするから病室へ行かない日…となっている。キヨヒコにとっては。

私、美琴は部活を終えた後、軽くシャワーを浴び面会時間ギリギリの病室へ駆け込む。
挨拶もそっちのけでキヨヒコの姿をした楓の唇へキスをする。

「もう、美琴ちゃん。性急すぎ」
「ごめんごめん、我慢できなくて」
「うーん、まあいいけど。私の身体もちょっとそろそろ我慢できないし」

楓の悩みは、身体が治っていくに連れて高まっていく性欲だった。
普段感じたことのない、理性を奪いかねない男の凶悪な性欲に押し負けそうだったのだ。私の顔を見るとその欲求は更に大きくなっていったそうだ。

それを以前、それをキヨヒコが席を外しているときにこっそりと私へ告白してくれた。その悩む顔が愛しすぎて、キスをしてしまった。
そして立ち込める、ツンとした臭い。
慌ててキヨヒコが戻ってくる前に、早漏な身体の後始末をして…。
楓には明日また来るね、と伝えたのだった。

治りかけといえど激しい運動はできないので、基本的にはキスと、私が手で処理してあげるだけ…。
ようするに私は節操なく、二人を恋人にしてしまっているのだった。

キヨヒコの身体でそういうことをしてしまうことに対して、楓はキヨヒコに顔向けができないと考えていたようで、
「じゃあ楓の身体としてきていい?」という私の提案に対して、少し悩みながらOKをくれたのだった。…それはキヨヒコには伝えてないけど、そっちのほうが悩むキヨヒコが見れるから。

(まあ、中身は楓だけど…外見はキヨヒコだし)
キヨヒコには「外見が誰だろうと、キヨヒコが好き」と伝えてはいるが、別にキヨヒコの顔や身体が嫌いなわけではなく、むしろ好きである。
心がキヨヒコな楓の身体と、心が楓のキヨヒコの身体。
毎日楽しめて私はとても幸せ。

退院したら…この状況をキヨヒコに伝えて…そうね、3人でするってのも楽しいかもしれない。
「っていうわけで楓ともしちゃってたの」
って伝えた時、キヨヒコはどんな顔をするだろうか。
私はこれからの生活に思いを馳せ…幸せだと感じた。

2020/06/01

フトマロの首輪

「…あんたなの、このふざけた手紙よこしたの」

私は目の前の男に向かって白い封筒を投げる。
理科室の机をすぅと滑って男の前に止まった。

「全く…お前みたいなやつが差出人だってわかってたら来なかったのに…。一応聞いてやるけど、なんの用なの?告白とかなら間に合ってんだけど」
「………」

2020/05/06

彼女の悩みを解決できるなら

「今日も、いい?」

ベッドに座る僕の隣に並び、すっと身体を寄せてくる真夏。
その手が僕の肩と膝に触れ、小さな柔らかい指の感触が伝わってくる。
腕に、彼女のその豊かな胸がむにゅっと押し付けられる感触。

「いや…それは、でも」

入れ替わって1ヶ月ぐらいたった二人

「ね、ねぇ…」

おどおどした男子生徒が、クラスの中でもひときわかわいい女子生徒に話しかけている。
女子生徒は一瞬どうしようかなと、悩んだ仕草をしたあと、誰にも聞こえないような小声で休み時間に屋上で、と返した。

2020/03/18

異世界転生モノ。

二人の男女が、朝の市場で賑わう町中を、かき分けるように進んでいく。
先頭を歩いているのは身長140cmほどの少女。
無表情に人混みを突き進んでいくのその少女のすぐ後ろには、周りに謝りながらも逸れないように必死になっている少年。
顔がどことなく似ている二人は兄妹だろうか。

2020/03/14

コウくん 2日目

翌日。

目が覚めたコウはいの一番に鏡の前に立つ。

「も、戻ってる…?」

不自然なほどに大きくなっていたヒップはその痕跡すらのこさずきれいに戻っているようだった。
パジャマの上から見えるとシルエットにおかしなところはない。
手で腰からお尻のあたりを手で擦るが、ゴツゴツとした筋肉質な感触で、昨日のような脂肪に包まれたようなものではなかった。

「よ、よかった…」

原因はわからずとも元通りになったことにして安堵するコウ。
しかし再度鏡を見たときにまたわずかに違和感を感じとったのだった。

それが何かわからず、コウは周囲を見回す。
部屋に違和感。
いや、部屋はいつも通りだし、鏡もいつもの鏡だ。

「背が…伸びてる?」

違和感の正体に一歩近づくコウ。
慌ててパジャマを脱ぎ捨てる。
部屋の冷えた空気が素肌を撫でる。

「あっ…」

違和感の原因はこれだ。
コウの足から太腿までが、すっかりと変わってしまっていたのである。

部活で鍛えた足についていたはずの筋肉は削ぎ落とされるように消失しており、かわりに柔らかな感触を持つ脂肪へと置き換わっていた。

ごつごつと角ばっていて、ところどころ傷があり、日にあたって浅黒く焼けていたはずの足が。
まるで純粋培養で育った白いスラリとした足に変わっていたのだ。

太腿を眺めてみればそこには無造作に生えていた毛一本すらなく、足先の爪もきれいなピンク色で、汚れなど一切ないように見える。

「いやいや、これは…」

ゴクリ、とコウは唾を飲む。
それはどこからどう見ても艶めかしい女性の脚だったのだ。
スラリと伸びた脚は、サッカーをしていたコウの短足気味な足と比較するまでもなく長い。

つまりはこれが原因で周囲に違和感があったのだ。
身長が十数センチ伸びたがための、視界の変化である。

パン、と太腿を叩いてみる。
ぷるん、と脚に乗っている脂肪が波打つ。
その感覚はやはり昨日までのものと全く違う。

「くそ、こんどは脚かよ。なんだっていうんだ」

どうして良いかわからず、部屋の中をぐるぐると歩くコウ。
そして先程は気が付かなかったが、足の長さや筋肉の付き方が変わったせいかものすごく歩きづらい。昨日のおしりといい勝負の変化である。

だが悩んでいても何も解決はしない。
コウは仕方がなく学生服を着る…が。

「んげぇ…」

足の長さが極端に変わったせいで、ズボンの短いのだ。足首どころかその上まで見えてしまっている。
まるでサイズがあっていない。

そして太ももの肉付きも筋肉質で締まっていた昨日と違って一回りほど太くなっている。
そのために股下まわりの生地がパツンパツンだ。

…昨日はお尻だったので上着の裾でぎりぎり隠せていたのだが、これは流石に目立つのではなかろうか。

「…でも学校、行くしかないよなあ」

生真面目な正確なのか、それとも非日常的現象に対して混乱しているのか、コウ自身もわからないまま
登校をするのであった。

ーーー

コウはたくさんの視線を感じている。
今日は体育はないものの課外授業で全員がジャージに着替えるひつようがあった。
学生ズボン同様、ジャージの丈も足らなずに足首は広く見えており、さらにそのジャージから浮き出るおいしそうな太もものラインは、男子生徒からの視線を集めるには十分だった。

「おい、コウ…お前…」
「な、なに?」
「い、いや…なんでもない…」

男子も女子もみんな、コウを見ては微妙な顔をしつつも、その視線はジロジロとコウの太ももへ注がれるのだった。





2020/03/12

コウくん1日目

1日目

身体が重い。
コウがそんな異常に気がついたのはとある朝だった。